実は科学的!? 江戸時代の生活百景 | geezenstacの森

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実は科学的!? 

江戸時代の生活百景

 

著者:西田知巳

出版:東京堂出版

 

 

 江戸時代の人たちの日常生活に入り込んでいた化学・物理・地学・生物・医学・天文学・建築・土木などの、いわゆる「理科的なもの」に焦点を当てて、現代と比べても意外と進んでいた彼らの生活風景を探っていく。---データベス---

 

  江戸時代が、エコ社会であったことを伝える書物は数々ありこのブログでも、石川英輔氏の著作を数々取り上げています。その中で、この1冊は切り口が斬新で、文章の全てにルビがふってあり、見開き2ページを使って右側に解説、左側に当時の書物からの頭版を使ってそれがどういう状況であったかを説明する構成になっています。


 つまるところ、この本は小学生や中学生にわかりやすい構成になっているのだと思います。多分、学校の服読書的な意味合いで作られた音なのでしょう。構成は以下のようになっています。

 

【主要目次】
第1章 動物の暮らし
第2章 植物の姿
第3章 大地の恵み
第4章 人間の営み
第5章 天地のつながり


 世界的に見ても、日本の江戸時代は究極のエコ社会で、二酸化炭素を発生させるものは多分薪を燃やした貸すだけであったような気がします。要するに、石炭や石油を使わないリサイクル社会で、究極のエコを成し遂げていました。そのため、今では見かけない鋳掛屋や肥の回収さらには欠けた茶碗や皿の修理などの焼接ぎも存在していました。


 こういう視点の本で、子供たちの疑問に答えています。江戸時代は封建制のもとに独裁政治が行われていたと言う考え方は今では否定されています。更には文明が遅れていたかのような記述も昔はありましたが、今では文盲率は世界でもトップの低さであり、江戸などは人口も世界一の大都会であったことが知られています。


 文明が遅れていたとは全く思えません。確かに普及率は低かったかも知れませんが、メガネや時計も存在していましたし、出版文化はカラー印刷まで普及していました。


 著者は文系の出身ですが理系にも強い方らしく、上の章分けでも解るように動物や植物、自然科学、や医学についての視点から江戸時代を捉えています。


 この本で取り上げられている図版はの多くはパブリック・ドメインで、国立国会図書館などの画像データを活用したのだそうです。今まであまり目にしないものがこういうところに眠っていたのかと言うあたらしい発見もありました。


 この本の最後には天文学や測量の技術についての解説もあります。これを思うに、伊能忠敬の偉業や、天文学者として名を成した渋川春海らの活躍を彷彿とさせます。もし、この本を子供に読ませるなら、並行して岡田准一が主演した江戸時代の天文学の在り方を描いた「天地明察」も一緒に観せるなら、もっと江戸に興味を持つでしょう。