パレーの幻想交響曲 | geezenstacの森

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パレーの幻想交響曲

 

ベルリオーズ/幻想交響曲 Op.14 

1. "Rêveries – Passions"    11:32

2. "Un bal" (A Ball)    5:34

3. "Scène aux champs" (Scene in the Fields)    14:40

4. "Marche au supplice" (March to the Scaffold)    4:30

5. "Songe d'une nuit du sabbat" (Dream of the Night of the Sabbath)    9:02

フランク/交響曲ニ短調*

1. Lento; Allegro, Ma Ton Troppo    16:06

2. Allegretto    8:52

3. Allegro Non Troppo    9:10

 

指揮/ポール・パレー

演奏/デトロイト交響楽団

 

録音/1959/11 

   1959/09/27*  デトロイト、キャス・テクニカル・ハイスクール・オーディトリアム

P:Wilma Cozart

E:Robert Fine

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 言わずもがなのマーキュリーへの一連の録音の一枚で、35mmマグネチックテープを用いたワンポイント録音で収録されたシリーズです。MEMBRANがパブリックドメイン音源ということで10枚組のボックスで発売したシリーズの1枚目です。ただ、市販ではこの2キヲクを組み合わせたCDは発売されていません。何しろCDの録音時間ギリギリの79:29も収録しているからです。

 

 それにしても、このジャケットのポール・パレーは人をおちょくっているようなふざけた表情で収まっています。

 

 このポール・パレーとデトロイト交響楽団、ドラティとロンドン交響楽団がマーキュリーの2枚看板というイメージがレコード時代にはありました。この パレー(1886-1979)はフランス人の指揮者で、フレンチということから普通に想像されるのとは違ってスピーディで引き締まった演奏をする人です。一方でデトロイトというと、この当時は自動車産業で大変活気があった時代で、そのオーケストラを鍛え上げて第1の黄金時代を形成していました。この「幻想」はまるで一筆書きのようなあっさりとしていて、楽しいほどスピード感溢れる運びです。当時はこういう演奏は主流ではありませんでしたから、好き嫌いが分かれる演奏でした。まあ、クリュイタンスの名盤がありましたから、ちょいと影に隠れてしまっていた感はあります。しかし、今聴いてみるとこのスピード感は現代的センスに溢れているとも言えるのではないでしょうか。

 

 第一楽章は速めのテンポで過剰な抑揚は付けず、淡々と音楽が流れていきます。しかし店舗は結構伸び縮みしていて、パレーの音楽作りが単調ではないことをうかがわせます。短いフレーズの中でもぐっと強めるような劇的でダイナミックなアクセントも聴かれます。まず、ワンポイント録音ということで、オーケストラのバランスは変にマルチ録音のような突出した音はありません。よく言えば、コンサートホールの最上のシートで聴いているようなバランスです。

 

 第二楽章は出だしの弦楽のトレモロが独特のアクセントで開始され面白いです。切れの良いすっきりしたワルツであり、活気があって軽やかです。冒頭、弦楽の刻みは拍を強調したアクセント付けが個性的です。テンポが速いのでワルツ的な要素はあまりありません。主人公の若々しさを表現しているのかもしれません。おお性急さが前面に出ていますが、よく聴くとパレーが旋律線を歌っているのを聞き取ることができます。この店舗は若者が麻薬でラリっている時の高揚感を演出しているようである意味納得です。

 

 第三楽章は緩徐楽章ですが、ここも店舗は速めです。このCDでは間髪を入れず第三楽章が始まりますが、意図的であったらこういう演出もありかなと思ってしまいます。オーボエのソロは変な抑揚はつけずすっきりとしていて、淡々と進んでいきます。フレーズのところどころアクセントを付けるのは速い楽章と共通しており、それによって幻覚に陥りながらもギリギリで理性を保っている主人公の心情を察することができます。中間部の盛り上がり部分もスピーディで、全奏の雷の部分も期待はずれなほどすっきりしています。終盤のティンパニの打音も実際のコンサートで聴く距離感のような響きです。

 

 第四楽章は断頭台への行進ですが、ここのテンポは他の楽章と比べるとぐっと遅いテンポで演奏しています。ブーレーズ/BBC響のテンポに近い演奏でじっくり聴かせています。確か本来のベルリオーズの店舗指定でも遅い演奏を指示していたはずなので、これは納得です。変におどろおどろしさがなく淡々と物語が流れていく印象です。

 

 そういう意味では、第五楽章も重くおどろおどろしい感じがしません。低弦の重低音はずっしりと響きますが、地獄絵図のいう雰囲気にはなりません。音程がしっかりしているので鐘の音はチューブラー・ベルを使っていると思われますが、地の底から響いてくるといったイメージではありません。そういう意味では機体をはぐらかされているような印象を持ってしまいますが、小生の幻想のイメージはディフェクト・スタンダードが先にあげたブーレーズ/BBCの演奏なので、むしろこのパレーの演奏はしっくりきます。まあ、最後のコーダはいささかあっさりしすぎていて拍子を外されます。強い個性的な演奏。ユニークです

 

 全曲45分台の速い演奏で若い指揮者のような感じですが、パレーが73歳の時の録音です。まあ、一番脂の乗っていた時代の録音といえます。
 

 

 フランクの交響曲は早くから聴いていました。どういう訳か、先日もちょっと触れたフィリップスから発売されていたクレモナシリーズの1,000円盤にサン・サーンスの「オルガン」とこのフランクの交響曲がカップリングされたレコード(FCM29)が1枚だけ組み込まれていて所有しているからです。やはり、このフランクの交響曲はパレーの中でも代表する名演なんでしょうなぁ。録音も、こちらの方がより鮮明に聴こえます。

 

 ベルギー生まれのフランス人セザール・フランクは多分にドイツ文化圏の影響のもとにあり、循環形式といわれる手法などはその作品は明らかにブルックナーに近いものがあります。

 

 第一楽章はレントから始まる有用とした女装から、主部の躍動的な天空から宿命の風が吹き荒れるような主旋律の歌わせ方とテンポ感が絶妙にマッチしています。第二楽章以降の推進力のある上昇感溢れた展開にも満足しました。第三楽章もアレグロ・魔・ノントロッポの軽快なインポで主題が帰ってきます。アメリカのオーケストラの馬力とパレーのフランス人としてのセンスが絶妙にマッチしています。パレーの演奏はメリハリのあるテンポで音楽を前進させ、レガートなどを使わない硬質でいて明るい音色は、引き締まった表情を生み出し、初めてこの曲を聴いたオーマンディ/フィラデルフィアの演奏より好ましく思います。

 

 

 ポール・パレーの生年は1886年で、没年は1979年ですから、その生涯はストコフスキー(1882年~1977年)、クレンペラー(1885年~1973年)、ボールト(1889年~1983年)達とほぼ重なります。しかし、彼らと較べてみるとパレーという名前は随分古い時代の人のような気がします。


 その最大の理由は、パレーの録音のキャリアが1952年から1963年までのデトロイト時代に集中していて、そこを退いてからは悠々自適の客演活動が中心で、録音活動をほとんど行っていなかったからでしょうなぁ。

 

こういう組み合わせを聴くならHMVしか扱っていないようです。