名フィル 第78回市民会館名曲シリーズ演奏会 | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

名古屋フィルハーモニー交響楽団

<第78回市民会館名曲シリーズ>

曲目

▊ ヴェルディ:歌劇『運命の力』序曲

▊ パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調 作品6* 

▊ レスピーギ:交響詩『ローマの噴水』 

▊ レスピーギ:交響詩『ローマの松」

【ソリスト・アンコール】

▊ バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番ホ長調 BWV1006より第3楽章「ロンド風ガヴォット」

ヴァイオリン:髙木凜々子

 

【オーケストラ・アンコール】

▊ レスピーギ:リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲より第1曲「イタリアーナ」

 

下野竜也(指揮) 

髙木凜々子(ヴァイオリン)

名古屋フィルハーモニー交響楽団

 

名古屋市民会館

 

 

 以前にも書きましたが、このコンサートは指揮者もソリストも変更になったものです。変更前も魅力的だったのですが、変更後もそれに劣らず魅力的だったので、これはこれで充分満足できたコンサートでした。なにしろ、「ローマの松」以外は初視聴の曲目ですし、その「ローマの松」も、以前はオルガン無しの演奏でしたから完全な形での視聴は今回が初めてとなります。指揮者、ソリストは変更になりましたが曲目はそのままです。

 

 指揮者の下野竜也氏はこの月2回めの鑑賞です。しかし、前はオンラインでの視聴でしたから実質は初お目見えと言えるでしょう。

 

 

 今回のステージの配置です。レスピーギの作品だけあって登場する楽器はハンパないものです。打楽器にはドラや鉄筋はもちろんピアノにチェレスタハープは2台、それにステージ右手には電子オルガンまで並んでいます。この編成でのコンサートですから期待してしまいます。この日のコンサートのかけジュールは以下のように発表されていました。

 

18:47 ヴェルディ:『運命の力』序曲 (7') 

18:57 パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番 (35') 

19:38 休憩 (20') 

19:58 レスピーギ:ローマの噴水 (16') 

20:17 レスピーギ:ローマの松 (22') 

20:46 終演

 

 実際にはアンコールが入りますからこれよりは押しました。

 

 最初はヴェルディの「運命の力」序曲です。下野氏はステージに登場し、一礼をすると間髪を入れず振り出します。いいテンポですなぁ。この編成ですから減額も充実しています。本来のオペラのピットて゜の編成とは違う重厚な「運命の力」が響きます。こういうシンフォニックな響きもいいですなぁ。普通は慣らし運転みたいな形での演奏が多いのですが、直前の24-26のコンサートが中止になっていましたのでこの日は最初から全力投球です。やはり、音楽家は演奏しないと死に体ですからねぇ。

 

 

 今回の注目は名フィル初登場の髙木凜々子さんのパガニーニです。なかなかパガニーニのヴァイオリン協奏曲を生で聴ける機会はないですからねぇ。協奏曲だけは12型の12-10-8-6-4の編成でした。ソロの音が埋もれてしまってはどうしようもないですからね。パガニーニのヴァイオリン協奏曲は最初の作品で、改訂を施していますが、超絶技巧を披露するためにヴァイオリンパートは最高音を披露するためのテクニックがいろいろ工夫されています。二重フラジオレットやスピカート奏法、急速な3度のダブル・ストッピングなどをいとも簡単に演奏していきます。それでいて音色はすごく綺麗なんでびっくりしました。調べてみたら使用した楽器は黒澤楽器店より貸与のストラディバリウス「Lord Borwick」(1702年)でそうです。使いこなしているんでしょうなぁ。ここでのカデンツァは、エミール・ソーレ作のものを使用していました。第3楽章は、2楽章からアタッカで演奏されました。

 

 

ただ、ヴァイオリンは聴き惚れますが、オーケストラの伴奏はつまらないもので、薄っぺらいオーケストレーションは安っぽいです。まあ、曲を知られないためにオーケストラパートは演奏会の直前に私、初見で演奏できるようにするために簡素にしたという話を聞いたことがありますからもさもありなんでしょうなぁ。

 

 技巧もバッチリで終演後は盛大な拍手が起こりました。そんなことで、アンコールがありました。バッハの有名なガヴォットです。ヴァイオリン曲の基本中の基本ですな。

 

オフショット

 
 後半のプログラムはレスピーギの「ローマの噴水」と「ローマの松」です。大編成のオーケストラの醍醐味が満喫できるプログラムです。最初の「ローマの噴水」はレコードやCDで聴くぶんには派手さがないのでどちらかというと物足りなさを感じてしまうのですが、実演で聴くと印象はガラッと変わります。弦楽器のアンサンブルが水のきらめきを時間の変化、場所の変化によって様々な表情を見せますし、そこに木管楽器が泉の状況を細かくアシストします。この曲もハープやオルガンまで加わり、大音声こそありませんが、緻密で繊細な音楽を奏でます。指揮の下野竜也氏も的確で細やかな指示でバランスの良い響きを作り上げていました。次はどんな音が紡ぎ出されるのかと、興味津々で聞き入っていたらいつの間にか静かに終わってしまうという体験をしました。いつもなら眠ってしまうのにねぇ。
 
 
 トリの「ローマの松」はどんなバンダの演奏なのかと興味がありましたが、一旦袖に引っ込んだ金管部隊が、舞台下手の雛壇に集結しました。上の写真の左隅がそうです。この位置からなら指揮者のサインがきっちりと確認出来ますから出のミスはありませんわな。
 
 この曲の冒頭「ボルゲーゼ荘の松」ではティンパニストの窪田氏がラチエットも担当していました。まあ、使われている打楽器が多いので演奏者も大変です。その冒頭からオーケストラはフルパワーで全力演奏です。市民会館のフォレストホールは2300席弱の収容を誇りますが、ホールいっぱいにレスピーギの響きが広がります。今回は収容率が50パーセントですから多分一番いい響きのバランスだったのではないでしょうか。
 
 さすがプロのオーケストラで、オーケストラの全員が音楽を楽しんでいる演奏で、聴く方もそういう雰囲気を感じながらの鑑賞で心ゆくまで音楽を楽しめました。
 
 定期演奏会ではないということで、ここでもアンコールが演奏されました。嬉しいですねぇ。曲は同じくレスピーギのリュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲より第1曲「イタリアーナ」でした。いい選曲で、興奮冷めやらぬ聴衆のために弦楽のみのしっとりとした響きで締めくくられました。