ラトル/マーラー/交響曲第1番、花の章付 | geezenstacの森

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ラトル/マーラー/交響曲第1番

花の章付

 

マーラー 

1.花の章 (1888)    7:30

交響曲 No.1 ニ長調 「巨人」(1888,rev.1896)  

2.第1楽章: Langsam. Schleppend - Im Anfang sehr gemachlich (緩やかに引きずるように,一貫してのどかに)    16:23

3. 第2楽章:Kraftig bewegt,doch nicht zu schnell (力強く活き活きと,しかし速くならず)    8:13

4. 第3楽章:Feierlich und gemessen, ohne zu schleppen (荘重に,威厳をもって引きずらぬように)    11:28

5. 第4楽章:Sturmisch bewegt (嵐のように激情的に)    21:14

 

指揮/サイモン・ラトル

演奏/バーミンガム市交響楽団

録音/1991年12月16-19日、シンフォニー・ホール、バーミンガム


Producer:David R. Murray
Balance Engineer:Mike Clements
Editor:Stephen Frost
Assistant Engineer:Mike Hatch & Andy Beer

warner  WCL563131.2

 

 

 サイモン・ラトルがバーミンガム市響の首席指揮者になったのが1980年。ラトルは55年生まれだから首席指揮者になった時は若干25歳でした。それが10年もしないうちに録音を通じて無名の地方オーケストラを世界的に有名にしたのだから、大したものです。それも、メインストリームのアーティストでないから、録音は主流からは程遠い作品ばかり録音してリリースされていました。しかし、テンシュテットがなくなり重石が取れるとようやくマーラーの録音が解禁になったのでしょう。しかし、時はもうクラシックは売れない時代に突入していました。そんなことで猫の録音はその後の主流となるライブ録音という形でリリースされています。

 

 このCDは最近、ラトルとバーミンガム市響の録音を中心にまとめたボックスセットととして発売されたもので入手したもの中の一枚です。バーミンガム市響は5番と9番がベルリンフィルの演奏となっています。EMIは1996年6月にベルリンフィルの後任の音楽監督に指名されたのをきっかけにマーラーの残りの交響曲をベルリンフィルにシフトしましたからこのバーミンガムとの録音は頓挫しています。ちなみに、ラトルは交響曲第10番をボーンマス響と録音しています。この録音は、ラトルのEMIデビュー盤でしたが、今ではすっかり忘れ去られています。余談ですが、以前発売されたラトルのマーラー/交響曲全集には9番がウィーン・フィルと録音したものが収録されていましたが、これも2007年録音のベルリンフィルのものと差し替えられていますからこの全集の方がCPは高いでしょう。

 

 前置きが長くなりましたが、どうもラトルのマーラー交響曲全集は形の上では全集ですが、メインがバーミンガム市交響楽団ということで一般の評価は低いですなぁ。しかし、ラトルのマーラーは最初の1番からして一癖も二癖もあります。何となればこの録音は一般的ではない「花の章」が収録されています。この「花の章」はマーラー自身によって最終的にはカットされた楽章です。一般的には4楽章の形で演奏されることがほとんどで、この「花の章」付は滅多に演奏されませんし、録音されません。今までに録音されたものとしては、オーマンディ、小澤征爾、メータ、ノーリントン、ハンヌ・リントゥ、ジンマン、ロトぐらいしか知りません。ラトルがこの「花の章」を録音していたのはこのCDで初めて知ったぐらいです。しかも、その扱いはこういうのもありますよ、という感じで第1楽章より先に収録されています。つまりは交響曲第1番「巨人」としての演奏に先立ち演奏されているのです。また、ハンヌ・リントゥは最後に演奏しています。これに対して、一般的にメータや小澤、ノーリントンは本来の第2楽章として演奏していて、扱いは様々なんですなぁ。

 

 ラトルは曲に先立つ演奏として、まるで序曲のような扱いです。少なくとも、最後に演奏されるよりは違和感がありません。トランペットのソロで始まりますが、曲調は違和感はありません。この録音はライブですが、少なくともこの「花の章」が演奏されて拍手が起こることはありませんから、形としては交響曲第1番の一部として演奏されているのだろうということは想像されます。その花の章です。

 

 

 このコンビの最初のマーラーである「復活」が86年、「巨人」は音楽監督就任間もない91年に録音されています。その意気込みがこの演奏から感じ取ることができます。ラトルはバーミンガム市響時代が一番良かったという人がいますが、若さゆえのチャレンジ精神をこの演奏からは感じます。少々早めのテンポで畳み掛けるような第1楽章は、ワルターや、クレンペラー世代から親しんでいる世代からするとややうるさく感じますが、今の若い人にはこれぐらいのテンポのがいいのかもしれません。冒頭で演奏されるトランペットは多分盤だとしての舞台裏からの響きでしょう。

 

 

 この「巨人」、36歳の青年指揮者とともに成長するオーケストラの勢いを存分に感じるしなやかでいて熱い演奏です。もちろん若さに任せていたずらに暴走することはなく、きっちり計算された音作りがなされています。マーラー最初の交響曲作品としての若々しさわ前面に出し、静かなところはとても美しいし、それでいてここ一番では瞬発力、爆発力を見せている演奏になっています。

 

 

 第3楽章は、個人的にはこの「巨人」で一番好きな楽章です。多感な青春時代に恋に破れて、悲壮感漂う楽章だと個人的には解釈しています。ただ、ラトルの表情付はここではちょっとあっさりしていて唯一残念な楽章でもあります。

 

 

 特に終楽章は多彩な表現で聴き応えがあります。良い演奏だ。録音レベルが低いので音量をいつもより上げて聞いた方がいいのかも。

 

 

 

 

 

 

下は旧全集です。