レコード芸術 1968年7月号 その3 | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

レコード芸術 1968年7月号 その3

 

 

 この年の各社の販促は特典盤のプレゼントセールです。CD時代になってもこういう手法はありましたが、こうも各社が揃ってプレゼントセールをやっていたのはこの年ぐらいではないでしょうか。先に取り上げたビクター、コロムビアしかり、ここでも東芝とキングレコードが6:1、7:1セールを仕掛けています。参戦していないのはグラモフォンぐらいでした。

 

 さて、キングはSLAシリーズで2,300円に打って出ています。最初のSLA1001はケルテスの新世界、このアンセルメの幻想は1002で2枚目です。しかし、その牙城をミュンシュの幻想が脅かしていました。

 

 

 ミュンシュはこの幻想を引っさげてパリ管とともにEMIの専属になっています。

 

 この年来日しているアーティストは他にピアニストのグレゴリー・ソコロフ、ヴァィオリンではレオニード・コーガンがいました。

 

 

 

 コーガンは来日中のスヴェトラーノフ/ソビエト国立交響楽団とも共演していました。

 

 

 このコーガン、個人的には5年後ウィーンで演奏会を聴くことになりました。

 

 

 さて、この号の特集は「音楽史の新しい群像」と題されたものです。要するに、それまでの日本でレコードで紹介されている作曲家の他にこんな人の素晴らしい作品がありますよ、的なプロパガンダ的な内容です。ただ、この時代の手法は座談会でのトークを記事にするという形をとっているため、文字の羅列でページを潰しています。文字起こしをしている人も固有名詞に精通していない人がやっているのか、同じ名前でも場所によって表記が違うなど混乱しています。バロック時代ではオルガン奏者でもあったスヴェーリンクはスベーリンクという表記と混在しています。

 

 座談会ですから話がいろんな方向に飛んでいって、グローバルでない時代は地域性と音楽は密接に関連していて、従来のドイツ本流の考え方から脱却しないとこの群像の焦点がぼけてしまうという展開になっています。この当時はベルリオーズさえも、幻想交響曲以外はほとんど知られていないし、特に、日本ではレコード会社が自国の音楽にあまりにも冷たいという論調にもなっています。

 

 この1970年ごろまではアルビノーニもパッヒェルベルもほとんど知られていなく、北欧の作曲家、南米の作曲家に至っては名前も登場していません。このころまではかなりいびつなクラシックマーケットだったことがわかります。

 

 

 ポピュラーでは、シャルル・アズナブールがグラビアに登場しています。今の若い人にはピンとこない名前でしょうが、リアルタイムの小生には、シャルル・アズナブールやジルベール・べコーなんかはドンピシャです。女性ならシルヴィ・バルタンでしょうかねぇ。この年、シャルル・アズナブールも来日しています。

 

 スクリーン・ジャーナルでは、岡俊雄氏がフランソワ・トリュフォーの「黒衣の花嫁」を取り上げています。ジャンヌ・モローのクールな演技にしびれました。また、アメリカ映画ではスティーヴ・マックィーンの「華麗なる賭け」について論評しています。どちらも劇場でリアルタイムで観ていて、前者はバーナード・ハーマン、後者はミシェル・ルグランの音楽にしびれたものです。前者は劇伴音楽、後者はミュージカル仕立ての主題歌が印象的です。