レコード芸術 1970年2月号 3 | geezenstacの森

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レコード芸術 1970年2月号

3

 

 ロンドン=キングは裏表紙でマゼール/ヘルリン・ドイツオペラの「椿姫」の発売の告知を行なっています。中ページでも見開き2ページでこのレコードをPRしていますから力の入れようがわかります。

 

 

 このころのレコ芸は定価が250円です。ページ数はこの号で510ページ以上はありますからページあたり0.5円でしょうかね。CPの高い月刊誌でした。

 

 

 キングはオペラ以外にもこんな魅力的な新譜が発売されています。このころ表記を見てみると「クナッパーツブッシュ」は「クナッペルツブッシュ」と表記されていたんですなぁ。こんな表記だったとは気が付きませんでした。まだ当時はクナッパーツブッシュは興味のない指揮者でもあったんでしょう。その隣のストコフスキーは記憶にあります。ストコフスキーがモーツァルトを録音したんだと当時チエックしていました。これヴァンガード録音なんですが、のちに輸入盤で購入しています。ただ、一番左の「P.D.Qバッハ」のアルバムの国内盤が出ていたとは知りませんでした。ここではハイライツ担っている通り、オリジナルは2枚組で発売されていました。このレコードも後に輸入盤で購入しています。

 

 

 こちらは、この月のソニーの新譜です。こんなものが出ていたんですなぁ。書体が全て違うという珍しいシリーズですが、レギュラー価格で発売したのは失敗だったのではないでしょうか。キャッチコピーの最上段に「ポピュラー党の仲間にも推薦してください」とありますが、レコ芸の読者はこんな内容のレコードはまず買わなかったのではないでしょうか。ここはサンプラー的なものとして発売した方が認知度が上がったような気がします。果たして売れたんでしょうかねぇ。個人的にはレコード店で見かけた記憶がありません。

 

 

 オペラ特集とともに「EXPO'70」特集としてカラヤン/ベルリンフィルも取り上げられています。まあ、こちらもオペラがらみのグラビアが使われていますが、カラヤンとフルトヴェングラーを比較してカラヤンの演奏は金太郎飴という世の批評をそこがカラヤンの求めたレコード芸術の極致だと結論づけています。レコードの録音が多いカラヤンだからこその批評ですが、カラヤンの実演を聴いた人はそうは思わないんでしょうなぁ。

 

 

 

 東芝はこの当時、「PTSクリアーサウンド」+SX-68を前面に打ち出してきました。1960年代始めにはRCAがレコードの内周での音質のひずみ是正のために「Dynagroove」方式のレコードを発売していましたが他社は追従しませんでした。これは円形のレコード針には有効な音場補正だったのですが、70年ごろになると4チャンネルステレオのためにレコード針は楕円になっていました。円形と楕円でて゜は特性が違うためにRCAはひっそりと「Dynagroove」を終了したのですが、東芝がここにきて楕円針対応の音場補正技術として登場させたのがこのPTS方式だったのです。記事の中にも書かれていますが、これは「Pinchless Tracing Simulation」の略で当時はPTSクリアーサウンドと称していました。その技術解説の記事も掲載されていましたが、一方ではこの技術の座談会の記事も掲載されていて、効果があるとする意見とないとする意見が拮抗していました。その中で、合唱のレコードとなるとそのひずみの是正にはかなりの効果があるという記事も見受けられます。ただ、こちらも他社が追従しなかったので自然と消滅していきました。

 

 

 上の座談会にも出席している岡俊雄氏のこちらは映画の記事です。ここで取り上げられている映画は筆頭が「冬のライオン」ついで「イージー・ライダー」、ミュージカルの「ハロー・ドーリー」と「チップス先生さようなら」それに「ベンチャー・ワゴン」です。ここでは「冬のライオン」と「チップス先生さようなら」の2本に主演しているピーター・オトゥールを絶賛しています。まあ、代表作は「アラビアのロレンス」ですがシリアスもコメディもこなしさらには歌も歌うということでイギリスを代表する俳優に成長したことがうかがえます。これに対して、「ハロー・ドーリー」はバーバラ・ストライザンドがミスキャストということで、またクリント・イーストウッドとリー・マーヴィンの「ベンチャー・ワゴン」もどっちつかずの演出で失敗作と烙印を押しています。まあ、的確な評価でしょうなぁ。

 

 なを、「冬のライオン」ではジョン・バリーが荘厳な中世音楽を書いていますが、「野生のエルザ」に匹敵する傑作とベタ誉めです。確かにこの作品は、その後の歴史劇の伴奏音楽によく使われていましたし、アカデミーの作曲賞を受賞しています。そんなことで最後にその音楽を聴いて見ましょうか。