本山ゆかり美術展 コインは二つあるから鳴る | geezenstacの森

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本山ゆかり美術展

コインは二つあるから鳴る

 

文化フォーラム春日井・ギャラリー

2021/04/23-05/16

 

 

 文化フォーラム春日井の市民ギャラリーで本山ゆかり氏の現代芸術展「コインは二つあるから鳴る」が開催されているので出かけてみました。この展覧会は、春日井市出身・新進気鋭の若手美術作家 本山ゆかり の地元初個展という触れ込みでの開催です。

 

 本山氏は、既存の絵画制作方法から一歩離れ、絵画を構成する要素を一つひとつ分解、再構築することで作品を制作しており、これまでには、壁に1本のロープで一筆書きのように描く「Window」シリーズ、アクリル板に棒人間などを描く「画用紙」シリーズ、布とミシンを使って花などを描く「Ghost in the Cloth」シリーズなどを発表しています。本山氏の作品は一見すると、一般的に認識される「絵画」からはかけ離れたものに見えますが、さまざまな形態の作品群は、鑑賞者に「絵画とは何か?」と再考することを促しているようにも思えます。こういう作品は「日展」のカテゴリーの範疇にはないので、やはり出かけてみて実際に鑑賞するに限ります。

 

 今回の展覧会では、2015年から2021年の間に制作された上記3シリーズの作品を一挙に展示しています。3シリーズが一挙に干渉できるのは今回が初めてです。

 

windowシリーズ

 

画用紙シリーズ

 

Ghost in the Clothシリーズ

 

 

 本山氏の作品は、どのシリーズの作品も一見とてもシンプルですが、素材や表現方法が非常に考え込まれた上で選択されており、鑑賞者に「美術とは何か?」ということを問いかけてくるように感じます。軽やかなのに深みのある、非常に高度なことを実践されています。ちよっとしたカルチャーショックでした。

 

 展示作品は23点と厳選されていて、会場に入るとまず画用紙シリーズのモノトーンの世界から始まります。

 

 

 

 

 

 

 

 続いてGhost in the Clothシリーズになります。まるでパッチワークの世界ですが、じっくり鑑賞すると艶やかな刺繍が施されていることがわかります。

 

 

 

 

 

 また、大小様々な画用紙シリーズの作品になれます。

 

 

 そして、最大の作品、windowシリーズの新作が壁面いっぱいに広がります。写真は拡大できますが、このスケール感は多分伝わらないでしょう。

 

 

 

 左右二つの作品が一本のロープによって繋がっています。言ってみれは一筆書きの世界ですが、こんな長いロープはありませんから何本も継ぎ足しでアートが完成しています。作品は「window4、5」という作品名になっています。ちなみに冒頭の写真は3つの作品からなり、「window1,2,3」です。こちらは展示されていません。

 

 

 

 ロープは打ち込んである小さな釘を縫うようにして作品が完成されています。なを、この作品の制作風景がフォーラムのロビーにあるモニターで鑑賞することができます。実際に作品の間近で見ると、緻密に計算された釘の配置が確認できます。

 

 題材は、セザンヌのリンゴの静物と、森の中の小径を描いた風景画です。あえて額縁絵画を選び、額縁は、現在使われているであろうものをロープで再現しています。

 

 本山氏は、保存、持ち運びができる一般的な絵画に対して、そうした性質を剥奪したものとしてこの作品を制作しています。ということは、この会場でしか鑑賞できないということです。

 

 

 

 


 最後にまた、Ghost in the Clothの作品が並びます。

 

 この展覧会は5月16日までの開催です。そして、14日には本山氏本人が来館し、18:00から座談会が開催されます。参加は自由ということですから出かけてみてはいかがでしょう。