禁裏付雅帳(4)
策 謀
著者:上田秀人
出版:徳間書店 徳間時代小説文庫
老中松平定信の密命を帯び、禁裏付として京に赴任した東城鷹矢。その役屋敷で、鷹矢は二人の女と同居することになった。下級公家の娘、温子と若年寄留守居役の娘、弓江だ。片や世話役として、片や許嫁として屋敷に居座るが、真の目的は禁裏付を籠絡することにあった。一方鷹矢は、公家の不正な金遣いを告発すべく錦市場で物価調査を開始するが、思わぬ騒動に巻き込まれることになる……。---データベース---
今年もあまり出かけられないゴールデンウィークということで読書に勤しんでいます。このシリーズ、体裁としてはシリーズですが、各巻読み切りという展開になっていて、毎回時代歴史の説明や朝廷の仕切りや公家の思惑、町人の立場の説明など説明事が長々と入ります。間を開けて読んでいるとそれでもいいのでしょうが、まとめて読むとなるとかなりうざったく感じます。全体の1割がこういうシーンで使われています。
一橋治斉の大御所称号問題解決のため朝廷の弱みを握るため禁裏付きとして京都に派遣された主人公です。当初は若いということもあってか、些細な正義感を振りかざしての問題ばかりおこしてなかなか本質的な働きかけをしないと思っていしたが、ここにきてようやくその端緒が垣間見えた気がします。
京都の街の様子を、そして役目の禁裏の仕事の一環として物の値段を調べに錦市場へ出かけます。まあ、ここで問題を起こすことによっていよいよ伊藤若冲が登場します。この展開は予想しませんでしたが、非常にキャッチーな話題です。小生も何度か京都には足を運んで、若冲の足跡を訪ねて「相国寺」やお墓のある伏見深草の石峯寺も訪れました。
立場上町人とは正面切って争うことができず、受け身で腕を負傷する事態になりますが、こ問題を契機にこの時はすでに青物問屋の主を引退した若冲が登場します。弟に主人の座を譲っても市場の世話役としては現役で、ここでは伊藤若冲としてより、隠居の枡屋茂右衛門として登場します。で、市場関係者が起こした事件の始末をつけ、その代わり、禁裏付役宅の襖絵を書くということで近しい関係になります。
廻りの言う事を受け入れるだけだった東城鷹矢も少し成長したようで、この巻では振り回されることが少なくなっています。たた、二人の女性に対してはどっちつかずの態度で、ヒロインは温子と思っていたのにこの巻では弓江が対等の立場まで存在感を増しています。この弓枝、許嫁ということになって江戸に確認を取っているのですが、その返事は全くないという状況で話が進んでいきます。つまりは、どっちつかずで放ったらかしです。
話の展開的にはこれでいいのでしょうが、男としては煮え切らないですなぁ。まあ、閑職の割には次から次へと事件が起こり、そんな暇がないとも言えますけどね。