鼠、江戸を疾る
著者名 | 赤川次郎/[著] |
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出版者 | 角川書店 角川文庫 |
「表」の顔は、「甘酒屋次郎吉」と呼ばれる遊び人。しかし、その「裏」は、江戸で噂の盗賊・鼠小僧。一介の盗賊に過ぎないが、正義とやらにこだわって、一文にもならない事件に首を突っ込んでしまう。それもみな、江戸が故郷だから。この町で暮らす人々の幸せを見るのが何よりも好きだから―。今日も妹で小太刀の達人・小袖とともに、ひたむきに生きる庶民を助け、力を振りかざす強きをくじく。痛快エンタテインメント時代小説。
この小説はシリーズ化されていて、その原作を元に2014-16年にNHKでドラマ化されています。赤川次郎氏にとっては珍しい時代小説になっています。それも、主人公がよく知られている鼠小僧次郎吉という設定です。ただこの小説では甘酒屋の次郎吉として登場しています。作品は『野性時代』に掲載された連作の読み切りになっています。
- 鼠、起つ(2003年12月号)
- 鼠、泳ぐ(2004年1月号・2月号)
- 鼠、化ける(2004年3月号・4月号)
- 鼠、討つ(2004年5月号・6月号)
- 鼠、騒ぐ(2004年7月号・8月号)
- 鼠、落ちる(2004年9月号・10月号)
さて、鼠小僧は実在の人物で通説では江戸の生まれということになっているようですが、地元愛知では蒲郡の生まれという伝承があり、地元の委空寺にも母親の手によるとされる墓があります。実際の次郎吉は2度捕まっており、一時は上方へ姿を消していた時期もあります。小生も両国にある回向院の墓は訪れたことがあります。
武家屋敷ばかり専門に狙った一匹狼の賊で、五尺に満たぬ小男で動作敏捷といい、2度目の捕縛時にはろくな家財道具もなく金もなかったということで義賊という風聞が後世立ったと言われています。そういう設定で、この小説で描かれる次郎吉も実際にはいなかった妹がいる設定とともに義賊として描かれています。登場人物の設定はwikiには以下のように描かれています。
- 次郎吉(じろきち)
- 〈甘酒屋次郎吉〉と呼ばれる遊び人。甘酒を商っているわけではなく、その正体は、巷で〈鼠〉と呼ばれる盗っ人。
- 盗みに入る際には、反撃する以外には無闇に人を傷つけない。盗みを働く相手も金満な大名や大店で、盗んだ金は私利私欲のためには使わない。
- 小袖に、「(次郎吉兄さんは)迷惑をかけられるのが趣味」と言われるほど、困っている人を放っておけないいなせな江戸っ子気質。事情を抱えて困窮する人々や、罪をなすりつけられた人々を助けるために、自分の得にはならない仕事をつい引き受けてしまう。盗みで得た金を、博打で稼いだ悪銭だとうそぶいて困っている人々に渡すこともある。
- 小袖(こそで)
- 次郎吉の妹。小太刀の道場へ稽古に通っており、その腕前は巷間の侍とは比べものにならないほどで、襲われている市井の人々を助けたり、時には兄の裏の仕事を手伝っている。試合をした者の中には、「女武蔵」と呼ぶ者もいる。
- 年頃の娘だが色恋には縁遠く、理想の相手は「自分を小太刀で負かす人」。
- 仙田 千草(せんだ ちぐさ)
- 医師・仙田良安の娘。長崎で蘭学を学んだ女医。界隈でも優秀な医師として有名。次郎吉の正体に薄々感づいているが、あえて追及せずに付き合いを続けている。
- 米原 広之進(よねはら ひろのしん)
- 旗本の三男で、小袖と同じ道場に通っている。剣の腕はいまいちで、小袖に助けられることも多い。小袖に好意を寄せるが、彼女からは武家社会の情報源として利用されている。しかし、そんな侍らしくない彼の姿は小袖にとって大きな安らぎとなっている。鼠、化けるで登場する一人殺されずに済んだとみを引き取り屋敷の下女として引き取る。
- 大まかなキャラクターは、この第一巻で登場しています。テレビドラマとはキャラクターの設定が少々違いますが、この赤川版ねず小僧次郎吉は、岡っ引き以上の情報網で事件を次々と解決していきます。シリーズで読み進めようと思っています。