名門オーケストラ ロイヤル・コンセルトヘボウ | geezenstacの森

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名門オーケストラ

ロイヤル・コンセルトヘボウ

 

著者:青木 卓

出版:アルファベータ

 

 

 名門オーケストラの全貌を把握し、名盤・名演を語る。約1500曲の指揮者別ディスコグラフィ付。

 

 著者の「はじめに」と題された前書きを読んで、この本が、ネットの「An die Musik」というホームページ内にある「コンセルトヘボウ管弦楽団のページ」であることに納得しました。なぜかそこでの投稿名は「青木三十郎」となっていますが、この本では多分本名の「青木 卓」で書かれています。

 

 このホームページ、以前からコンセルトヘボウ関係のディスクの参考に覗かせてもらっていましたが、ほぼ丸っとそこでの記事がこの本の骨格になっています。目次としては下記の構成です。

 

目次 : 

■第1部:コンセルトヘボウ  オーケストラとホール / オーケストラ/ホール/作曲家/指揮者 / 

■第2部:コンセルトヘボウ管弦楽団のレコーディング / 概説/フィリップス/デッカ / その他のレーベル、放送録音、映像作品 / 

■第3部:視聴記 / ディスク/演奏会 /

■第4部:来日公演 / 

■ディスコグラフィ 

 

 一般の音楽評論家の著した書籍ではなく、一人のマニアとしての記述ということで、同じ話があちこちで登場します。また、コンセルトヘボウとは本来切っても切れない関係にあるウィレム・メンゲルベルクに関する記述はすっぱり抜けています。まあ、これは上記のホームページでも指揮者として取り上げられているのはベイヌム以降の指揮者ということを見ても当然でしょうし、年代的にも1965年生まれとありますから、リアルタイムでメンゲルベルクを聞いたであろう世代ではないことから仕方のないことでしょう。小生でもメンゲルベルクについては数枚のレコードしか持っていません。それも、ただアンチフルトヴェングラーとしての興味から購入したものでした。その中のベートーヴェンの交響曲第9番「合唱」は確かに素晴らしい演奏で、第4楽章の最後のコーダで思いっきりリタルダンドをかけて終わるというパフォーマンスにはぶったまげたものです。現代の指揮者でこういうことができる指揮者は多分一人もいないでしょう。

 

 小生はレコード収集の初期からフィリップスのサウンドが好きでした。何しろ最初に購入したレコードの5枚のうち2枚がフィリップスだったほどです。中でも、ハイティンク時代を支えたコンマスのヘルマン・クレバースがお気に入りで彼の独奏の協奏曲は全てし余裕しています。珍しいヴィヴァルディの「四季」の独奏盤も所有しています。(^◇^;)

 

 
 この本の中でも度々登場するのが1994年に発行されたポリグラムグループのCDカタログです。ここには当時のグループのグラモフォン、アルヒーフとロンドン(当時はまだデッカの表示は使えませんでした)、アーゴ、オワゾリール、そして、フィリップス、マーキュリー、アマデオ、さらにベーラートまで含めた総カタログが発行されていました。ここにはグループのIMSという輸入盤を扱うセクションのレーベルまで含んでいて、総ページ数が922ページという大部なカタログです。
 
 
 これは音楽之友社が発行した1987年下期までのクラシックCのそうカタログです。カバーにあるように、写真付きで演奏評、録音評、録音データなどが記載されています。こちらも662ページとボリュームがありますが、定価は2,300円でした。
 
 
 こちらは音楽出版社が発行したポピュラーまで含んだCDの総カタログで、ボリューム的には最高の2107ページという特大サイズでした。すごいのはCDシングル、ミニアルバムも網羅していルことです。まあ、今となってはお宝的なカタログですね。買った記憶はないのですが、定価は2,200円となっています。この3冊が小生のCD初期の楽曲調べのバイブルになっています。
 
 話が横にそれましたが、この本で一番興味深いのはコンセルトヘボウとフィリップスの録音ポリシーでしょう。フィリップスはプロデューサーをなかなか表面に出さないメーカーでしたが、イ・ムジチなんかを担当したのはヴィットリオ・ネグリでスイスのラメショードフォンを用いた録音は自然なホールトーンで数々の名盤を残していますし、タイトルのコンセルトヘボウを用いた録音はフォルカー・シュトラウスがその筆頭に挙げられるでしょう。音のいい世界の三大ホールはコンセルトヘボウとウィーンのムジークフェラインザール、そしてボストンのシンフォニーホールということで、70年代にはデイヴィスやハイティンクがボストン響と頻繁に録音していたことが納得できます。
 
 ただ、このプロデューサーについても触れられているのは他にマイク・ブレナーぐらいで、デッカから移ったエリック・スミスには一言も触れられていません。こういうところが一ファンが著する限界なんでしょうなぁ。ただ、個人的にも1990年代のフィリップスとデッカ、そしてグラモフォンの関係がいまいち分からなかった部分があったのですが、そのあたりの統合変遷についてはかなり詳しく書かれていて、なるほどと納得した次第です。
 
 つまみ食いならぬ、つまみ読み程度なら上記のホームページの記事の方が詳しいでしょう。何しろこの本は2013年に発売されていますからそれ以降のデータやコンセルトヘボウの情報はネットの方が最新情報まで網羅されています。また、本では写真は全てモノクロですが、ホームページでは小さいながらもカラーで表示されています。ホームページは、下記をクリックしてください。
 フィリップスの録音、コンセルトヘボウの録音を好んで聴く人には手元にあってもいいかもしれません。個人的にはさらなる充実を望みます。