名古屋ショスタコーヴィチ管弦楽団第2回演奏会 | geezenstacの森

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名古屋ショスタコーヴィチ管弦楽団

第2回 演奏会

 

曲目/ショスタコーヴィチ

1.交響曲第6番 ロ短調 作品54

2.交響曲第8番 ハ短調 作品65

 

指揮/和田一樹

演奏/名古屋ショスタコーヴィチ管弦楽団

 

 

 23日の天皇誕生日には、愛知県芸術劇場コンサートホールで開催された「第2回名古屋ショスタコーヴィチ管弦楽団」の演奏会に出かけました。このオーケストラ、通称NSO。このNSOが挑むのは「ショスタコーヴィチの交響曲の制覇」で、前代未聞の野望を胸に2019年「ショスタコーヴィチ・ツィクルス」を始動。
2020年3月8日に第1回演奏会として、交響曲第11番、第12番を演奏し、全曲制覇への火蓋を切っています。残念ながらほとんど告知活動をしていないので、このコンサートも、直前に愛知県芸術劇場コンサートホールの公演予定表で知ったほどです。

 

 でも、すごいですネェ。ショスタコを専門に演奏するオーケストラが誕生していたなんて。また、時期的にコロナの緊急事態宣言が出ている中での演奏会でしたから、お客が集まるかどうか心配していたのですが、主催者の発表では予想よりも多くの人が会場に足を運んだようです。それにしても、交響曲を2曲並べるコンサートは最近では珍しいのではないでしょうか。ショスタコ好きの小生には願っても無いコンサートでした。しかも、今まで実演未経験の2曲が並ぶコンサートでしたからテンションが上がらないわけありません。これで、5、7、9、12についでの鑑賞となりました。

 

 

 写真を見てもらえばわかりますが、第6番は5番とほぼ同等のハープあり、チェレスタありの大編成の楽器編成です。そして、パイプオルガンの前にも横一列譜面台が並んでいます。この訳は最後に解決します。そして、今回もビデオカメラがいたるところに設置されていて、舞台上に3箇所、バルコニー席には8台、さらに3階席にもありました。いずれ、YouTubeで配信があるのではないでしょうか?楽しみです。

 

 前作となる交響曲第5番は、1937年に作曲されています。それ以前に作曲された曲を、ソビエトの機関紙「プラウダ」で批判され、反体制と目される恐れがあったショスタコ―ビッチが、その批判を覆すべく、全力で取り組んだのが「革命」をテーマにした第5番です。したがって、第5番はスターリン体制に沿った内容になっていて、勇壮な楽曲が革命220周年を記念して演奏されます。こちらも「実用的」な音楽だったわけです。

 

 で第6番はというと、その2年後に作曲された作品で、珍しく楽章は3つしかありません。第5番もそうですが、構造としては叙情楽章から始まります。苦悩を突き抜けて換気に至るというベートーヴェンのような構造体ですが、6番は昔の作曲形式の「序破急」の形話とっていて、だんだん早くなります。アナリーゼ風にいうと、バーンスタインによる解釈としては、この第6番も戦争絡みだそうです。1939年当時は、独ソ不可侵条約によりソビエトは戦場にはなっていませんでしたが、ポーランド侵攻による分割など、すでに戦争は始まっていました。自国が戦場になっていない、偽りの平和を描いたというのが、その解釈です。ショスタコーヴィチは時代を敏感に読み取って、オーケストラ編成はそのままにして、緊張感は保ちつつ一服の安らぎを描いたのではないでしょうか。いわゆる戦争前夜ですな。

 

 和田一樹氏の指揮はダイナミックさとリズムのキレを重視した鋼のよう演奏で一気に聴かせていきます。ただ、第1楽章は問題提起の楽章なのでその中にも弦楽をたっぷり鳴らして丁寧に音を紡いでいきます。

 

 非常にわかりやすい指揮ぶりで、若い学生主体のオーケストラを見事な棒さばきでコントロールしていきます。コンサートホール全体に響き渡る音量でオーケストラを爆発させグイグイ引っ張っていきます。多分CDでは収まりきらないダイナミックレンジの広い音でホールを満たします。これぞショスタコーヴィチという音作りがなされています。やっぱり生の音楽は迫力が違いますなぁ。これぐらいのテンポの演奏でした。

 

 

 休憩後の交響曲第8番は、今度は7番の後の交響曲ということで続く9版と同じ5楽章構成の交響曲です。そして、第3楽章から第5楽章まではアタッカで繋がるという構成も9番と同じです。この交響曲も第1楽章が全体の半分を占める構成で書かれており、第2時世界大戦で亡くなった多くの人々を哀悼する作品になっています。そのため、第5楽章はチャイコフスキーの悲愴のように静かに終わる作品になっていて、ショスタコーヴィチの全作品のなかで最も悲劇的であるといわれます。

 

 曲が第6番と似たような構成ということでこういうプログラムが組まれたと想像されますが、聴く方にとってはちょっと違いがわからないという感じがしてしまいました。特に第1楽章の構成は大きく、普通の交響曲なら一曲分のボリュームがある楽章でそれだけで満腹になる規模です。

 

 演奏はコンマスが女性から男性に入れ替わりました。これは最終楽章でヴァイオリンとチェロ借り独奏パートがあるためだったのでしょうか。多分1年間をかけて練習してきたこともあるのでしょうがどのパートもしっかり弾き込まれていて、特に管楽器のパートはプロのオーケストラも顔負けなほどしっかりした響きを醸し出していました。YouTubeの配信が楽しみです。こちらはこんなテンポでした。

 

 

交響曲第8番の編成

 

 こんなハードなプログラムでもアンコールが用意されていました。それがオルガン下のバンダを使った演奏で、それも通常は金管だけのバンダですが、弦楽奏者も加わった要はフルメンバーによるアンコールだったのです。しかも曲はショスタコの交響曲第7番の第4楽章のコーダの部分が演奏されるという趣向で、これは、多分次回の演奏会の告知も兼ねていたのではと勘ぐってしまいました。(⌒-⌒; )

 

 

 何はともあれ、来年の第3回目のコンサートも今から楽しみになってきました。