クラシック・マニア道入門
著者:平林直哉
出版:青弓社
取り憑かれたかたのようにホンモノの音を追求する盤鬼が、愛用の機器や思い出のLPなどをも明かしながらSP、LP、テープなどアナログ製品が織りなす「別世界の音」をガイド、「7つ道具」「オークション攻略法」などを伝授する。
タイトルにもある通り、これは非常にマニアックな本です。半分以上レコードについての記述ですから、レコードという商品を知らない人にとっては無意味な本でしょう。ただ、小生のようにレコードで育った世代の人間にとっては共通の趣味を通して語れる唯一無二の本といえます。
ただ、小生もSPとかモノラル以前のレコードは生まれていないこともあり、それほど興味はありません。ただ、歴史的名盤あたりは少々興味があり、CD化された音源はかなり所有しています。
この本にも触れられていますが、LP初期は録音特性というものが一律ではありませんでした。例のRIAAというカーブです。
その性質上アナログレコードは音を物理的な溝(グルーヴ)として記録するのですが、溝の振幅が過剰に大きくならないようにあらかじめ低域をカットし高域をブーストした状態で記録されています。再生時にはこれと逆の特性のイコライザーをかける事で本来の音となります。この時に使用される周波数特性カーブが「 RIAA カーブ 」というものです。ただ、この規格が統一されたのは1954年に制定されたものであるため、それ以前のレコードは各社まちまちであったということです。古いレコードに手を出すと火傷して、まともな音では素人は聴けないわけです。
そういうマニアックなこともこの本には書かれていて、DGGのレコードが1960年台前半にはまだ、デッカの周波数特性カーブを採用していたものがあったということはこの本で初めて知りました。そんなような事柄がとりとめもなく書き綴られています。
目次
第1章 マニア道入門
1 SPを聴きたい
2 LPを聴きたい
3 オープンリール・テープを聴きたい
第2章 ネットオークション
1 国内のオークション
2 海外のオークション
第3章 盤鬼御用達の中古店・ネットショップ
1 SP、LP、蓄音機関係
2 書籍関係
第4章 マニアの7つ道具
1 海外篇
2 国内篇
第5章 私が使用している機器
第6章 思い出のLP
第7章 盤鬼の余話
第8章 クラシック音楽との出会いとその後
あとがき
こんな章立てになっていますが、まあ、マニア以外にはほとんど理解不明な内容でしょう。小生も第5章あたりまではほとんど読み流しです。ただ、第4章のマニアの7つ道具だけはレコードのデータの書籍を紹介していますので興味はあります。この中に、フィラデルフィア管弦楽団の歴史を扱った「Those fAbulous philadelphians,The life and Times of agreat Orchestra」が紹介されていますが、60年代に日本コロムビアからこの本の抄訳みたいな形で「オーマンディ/フィラデルフィアのすべて」という冊子が作られています。また、映画評論家でありながらオーディオやレコード市にも詳しかった岡俊雄氏の「マイクログルーヴからデジタルへ」も取り上げられています。興味のある人はリンクをクリックしてみてください。
思い出のLPでは先日このブログでも取り上げたブーレーズの「運命」が取り上げられていますし、コロムビアのヒストリカル1000シリーズも取り上げられています。
それらの端の中には偽レコードの記事もあり、1981年に発覚したディヌ・リパッティのショパンのピアノ協奏曲事件や、フルトヴェングラーのベト8の件も紹介されています。
この本第6章以下は気楽に読むことができます。まあ、これからクラシックの深い闇に足を踏み込もうとしている人は、必読の書でしょう。(^_^;)