レコード芸術 1969年12月号
その2
12月号の裏表紙はフェイズ4録音のストコフスキーの「幻想」で飾られています。この録音、第5楽章では鐘の音とともにピアノの音が重ねられています。ベルリオーズの指示ではピアノを使ってもいいと楽譜には書かれていますが、それを実践した最初の録音でもありました。
レコード芸術は当時レコード表の前に「巻頭言」が掲載されていました。毎号、主幹の村田武雄氏がかいていたのですが、この号で1000円盤の必然性について述べています。ここでは村田氏が全般について、そして管弦楽曲のページでは志鳥英八郎氏が1ページを割いて批評しています。
このページは300dpでスキャンしていますから画像をクリックすれば全文が確認できると思います。
こちらは当時の巻末に掲載されていたレコード各社の新譜リストです。コロムビアはこの年末にベートーヴェンの代表的作品を1000円盤で一気に投入しています。この記事を参考にストコフスキーのショスタコの交響曲第5番、グローフェの自作自演の「グランド・キャニオン」、ラウテンバッハーのベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲などを購入したものです。
これも珍しい写真です。なんとチェリビダッケ指揮スゥエーデン交響楽団がこの年の9月に開催された「ベルリン音楽祭」に登場しています。曲目はブラームスの交響曲第1番とストラヴィンスキーの「火の鳥」が演奏されて、指揮台の手前で立ち往生するほどの歓迎ぶりを受けたということです。なを、この別の演奏会ではブルックナーの交響曲第4番が録音が残されていて、DGからCD化されています。
邦人演奏家のレコーディングが活発人ってきており、日本ビクターは先に取り上げたディーター・ツィヒリンでモーツァルトとベートーヴェンのピアノソナタを、東芝は岩崎洸と淑の兄弟でベートーヴェンのチェロソナタ全曲を録音しています。これは東芝のベートーヴェン全集に組み入れられた録音です。
右はソニーがデモ用のテープ録音として、シュトックハウゼンの「チクルス」やヴァレーズの「イオニゼイション」などを秋山和慶の指揮で録音しています。この録音、70年3月新譜で発売されています。左はポニーの録音で、山岡重信/読売日響の演奏でモーツァルトのフィガロの結婚やロッシーニのウィリアムてるなどの管弦楽作品を録音しています。こんな録音があったんですねぇ。
さて、この号の特集は「ブルックナー」でした。本格的にブルックナーを取り上げた最初の記事でしょう。多分、この記事がきっかけとなって1970年代は重厚長大な作品が脚光を浴びていきます。それも、まだマーラーよりもブルックナーがか先でした。特に火付け役になったのはベームがウィーンフィルと録音した交響曲第4番の「ロマンティック」が発売されてからでしょうか。
この特集が組まれた段階では、まだブルックナーのレコードはそれほど流通していませんでした。第4番の「ロマンティック」もポピュラーではなく、この特集でも扱われているのは第5番のクナッパーツブッシュや第7番や第9番で、シューリヒトやカラヤンの録音が取り上げられてるだけです。この時点で全集を録音していたのはヨッフムだけでしたが、この特集ではそのレコーディングには触れられていません。ただ、西村氏の記事の最後にコンセルトヘボウとブルックナーのことが書かれていて、メンゲルブルク、ベヌムいかヨッフム、ハイティンクとブルックナーに強い常任指揮者を置いているという記述があります。しかし、この時点ではハイティンクはまだ第7番の録音しか発売されていませんでした。この特集では下記の記事が書かれています。
・座談会/ブルックナーの神秘性を語る
・敬虐で清純な世界の住人---渡辺護
・ブルックナーの人間性と芸術---宇野功芳
・作品の改作と種々の改訂版について---海老沢敏
・ブルックナーの作品とその特質---久納慶一
・ブルックナーの指揮者---西村弘治
随想
・ブルックナーの休止符---和田旦
・ブルックナーと私---相沢昭八郎
・ブルックナー音楽のふるさと
この号で取り上げられたホールは「東京文化会館」でした。ステージ上の反響番ががっしりとした作りであるとの記述があありました。
ポピュラーでは油井正一氏が70年に来日するデューク・エリントンのアルバムを取り上げています。この年、ニクソン大統領がホワイトハウスにエリントンを招待して大祝賀会を開催しています。文化勲章にも勝る栄誉がこの偉大な黒人リーダーに与えられたのです。