ジンマンのベートーヴェン交響曲第1、2番
ベートーヴェン/
交響曲 No.1 ハ長調 Op.21 (1800)
1. Adagio molto - Allegro con brio 8:05
2. Andante cantabile con moto 6:43
3. Menuetto. Allegro molto e vivace 4:07
4. Adagio - Allegro molto e vivace 5:16
ベートーヴェン 交響曲 No.2 ニ長調 Op.36 (1802)
1. Adagio molto - Allegro con brio 11:01
2. Larghetto 9:03
3. Scherzo. Allegro - Trio 3:37
4. Allegro molto 6:13
指揮/ダヴィッド・ジンマン
演奏/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
録音/1998/12/15,16 トーンハレ、チューリッヒ
P:クリス・ヘイズル
E:サイモン・イードン
ARTE NOVA 7432163645
小生の気持ちの中では、ベートーヴェン生誕250年はまだ終わっていません。ベートーヴェンの誕生日ははっきりしていなくて、1770年の12月16日ごろという事ですからまだ、誕生して1ヶ月にもなっていないという時期です。まだ、お祝い気分でもいいでしょう。という事で、今年最初に取り上げるのはベートーヴェンの交響曲第1番と2番がカップリングされたCDです。
で、こちらもすでに録音されてから20年以上の歳月が経っているダヴィッド・ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ響の演奏です。多分ほとんど忘れ去られているようで、wikiの記事も2000年代初期の記述で更新されていません。すでに2015年には同オーケストラを離れていますがそのままになっています。
手持ちのCDは整理して今はソニーから発売されたベートーヴェンの全集の中のものですが、以前は単品でも所有していました。
ジョナサン・デル・マーの校訂した新ベーレーライター版による初の交響曲全集という事で発売当初は話題になりました。一応フルオーケストラでの録音ということになっていますが、そのサウンドを聴くと従来の重厚な響きではなく、かなり編成を絞った、小編成での演奏になっています。ですから、カラヤンやバーンスタインのような重厚な演奏を期待する旨には失望するのでは無いでしょうかねぇ。
交響曲第1番の演奏では先に紹介している久石譲指揮長野チェンバー・オーケストラ(現フューチャー・オーケストラ・クラシックス)の演奏がいちばんのお気に入りなんですが、改めて聴いてみるとその原型のような演奏であることがわかります。編成はさすが室内オーケストラよりは一回り大きいようですが、ティンパニのバチは硬めのものを使用しています。第1楽章から歯切れのいいテンポで、表情が豊かです。先に書いたベーレンライター版の演奏ですが、強弱の変化が極端と言うか、アクセントがとくに突出するように表現されるので、奇異な感じもしますが聴いていて面白いです。
ジンマンは1995年にこのオーケストラに着任していますが、98年にもなるとオケもジンマンの指揮に機敏に反応するオーケストラに変身しています。表現はダイナミックと言うか思いきりが良いと言うか、新しいスタイルのベートーヴェン像を創出しています。当時としては解釈が固定していないのである意味ジンマンはやりたい放題!なところがあります。こういう表現が一部の古株の評論家からは酷評された記憶がありますが、いまではこの演奏を凌駕するような録音が次々登場していますからねぇ。
第2楽章も編成が小さい上に快速アンダンテで精緻で見通しの良い音楽が進んでいきます。第3楽章も畳み掛けるようなテンポでピリオドスタイルの歯切れのいい音楽が炸裂します。その流れで第4楽章に突入していきますから、ピリオド演奏に慣れている人はほとんど違和感がないでしょう。でも、まだ20年ほど前ですが、この演奏が話題になった時には評価が二分の演奏でした。
今回ブログを書くにあたって、改めてこの演奏をじっくり聴きましたが、小生も久石譲氏の演奏がなかったらCDを取り出すこともなかったと思います。この演奏久石氏はベートーヴェンはロックだ!と言った演奏です。ちなみに久石氏の演奏は8:26、7:12、4:01、5:45というタイムなのですが、それよりも早い演奏です。ぶっ飛んでいたんですなぁ。でもそのワンクッションがあってのこの演奏は今では納得できます。
このジンマンの1番と2番は全集としては最後に録音されたものです。売れるものからという営業サイドからの要請もあったかもしれませんが、ベーレンライター版のピリオド奏法を最初に取り入れた演奏としてはモーツァルト、ハイドンからの延長線上につながる曲で、まだまだ装飾音も自由に使っている時代でした。ジンマンはそういう時代考証をした上でこの2曲を最後に録音したのではないでしょうか。
この第2番でも、そのハイドンの影響とかモーツァルトの影を感じさせていて、木管のトリルで楽譜にはない装飾音を挿入したり、ホルンはナチュラルホルンのゲシュトップ奏法を模した響をつくったりと橋渡し的な作品と位置付けた演奏を繰り広げています。
今聴き直すととても斬新なベートーヴェンであったことが再発見できたディスクでした。