N響ゴールデンポップスコンサート
絢爛たるスクリーンミュージック
「南太平洋」
曲目/
1.「ベンハー」組曲 7:46
2.駅馬車 1:55
3.シンフォニック・シナリオ「南太平洋」 10:08
4.風と共に去りぬ「たらタラのテーマ」 3:42
5.セントメリーの鐘 5:01
6.白い恋人達たち 4:31
7.星への階段 3:28
指揮/岩城宏之
演奏NHK交響楽団
録音 1977/03/16ライブ 世田谷区民会館
ポリドール MQY 2004
先日浜松で捕獲したレコードの一枚です。このレコードは、第8回N響ゴールデンポップスというコンサートで演奏された映画音楽の部分だけを収録したものです。当日のプログラムは、このほかにパッヒェルベルのカノンやヘンデルの組曲「王宮の花火の音楽」:序曲、ヴィヴァルディのピッコロ協奏曲第2楽章、さらにはリストのハンガリー狂詩曲第2番、同じく交響詩「レ・プレリュード」前奏曲なども演奏されています。まあ、いずれも映画の挿入清くとして使われたものですな。その中で純粋に映画音楽として作曲されたものだけを取り出してアルバムとして構成したものです。
ところでこのアルバムジャケットを見てもどこにも指揮者の名前は書かれていません。思わずスルーするところでした。幸いにもレコードの中身を確認できるようになっていたので、レーベルを確認して指揮をしているのが岩城宏之氏と確認でき捕獲したものです。ジャケットはややシミがありタスキもないのでバーゲンに回されたのでしょう。小生にとっては幸いの掘り出し物でした。
岩城氏は1950年代からこの手のポップスも盛んに指揮していたのですが、適当な名前で録音していたので本名でクレジットされているのはほとんどありません。そんなことで、岩城氏がポップスを演奏しているアルバムは非常にレアだということです。しかもこういう演奏がNHK交響楽団のプログラムに載っていたというところがすごいじゃないですか。でも、どうしてNHKはこのアルバムで指揮者を前面に出さなかったんでしょうかねぇ。発売はポリドールですが、制作はNHK自身がしています。でもって、このアルバムはCD化されていないようです。余計貴重な音源と言えます。
余談ですが、このシリーズ数枚発売されていて、他のレコードでもジャケットに指揮者の名前は記載されていませんが、ライナーには外山雄三、尾高忠明、森正氏などの大御所が登場しています。シリーズは全部で6米ほど発売されたようで、岩城氏はこのほかに、「スター・ウォーズ/人間の証明」というアルバムも発売されていたようです。
さて、このレコードです。冒頭の「ベンハー」は組曲として「ベン・ハーの愛のテーマ」、「ローマ行進曲」、「海戦」、「奇跡とフィ ナーレ」から構成されています。こういう曲の演奏は編曲者が重要で、このベンハーは小野崎孝輔氏が担当しています。こういうポップス物の編曲はこの編曲者が肝で、演奏者の編成によって如何様にもアレンジする能力は侮れません。小生はこの小野崎氏の名前は初期の小椋佳のアルバムでよく見かけましたから、その編曲のうまさには感心していました。「しおさいの詩」「さらば青春」「六月の雨」「白い一日」などはこの編曲がなければここまで有名にはなってなかったでしょう。残念ながら、小野崎氏は2017年になくなっています。
「ベンハー」は原曲もフルオーケストラの演奏ですから、小野崎氏の編曲は組曲風に一つの曲をまとめる部分に費やされたようです。ローザ自体の組曲は20分ほどですが、ここでは8分弱にまとめられています。岩城氏もこの手の曲は若い頃から散々振っていますから、フルオーケストラでの演奏はさぞ気持ちよかったことでしょう。スタジオ・オーケストラでは編成が限られますからねぇ。
2曲目は「駅馬車」ですが、これはテーマだけの演奏で編曲は宮川泰氏によるものです。ただ、オリジナルはハーモニカバージョンです。ここではスタンリー・ブラックばりのアレンジで豪華なテーマが演奏されています。
3曲目はメインの「南太平洋」です。これは作曲家のロバート・ラッセル・ベネットが編曲したスコアがそのまま使われています。この形式ではそのベネットの編曲したものがコステラネッツ指揮/フィラデルフィアポップスの演奏で残っています。
この録音は50年台後半とちよっと古いのが玉に瑕ですが、なかなか楽しいアレンジで、「魅惑の宵」、「バリ・ハイ」や「ワンダフル・ガイ」、「ハッピー・トーク」などの名曲がちりばめられています。
B面の「風と共に去りぬ」は名アレンジャー服部克久氏が担当しています。この曲の編曲ではマックス・スタイナー・オーケストラのものがよく知られていますが、服部氏の編曲もそれに近しいシンフォニックなものになっています。手持ちの音源の中では、シティ・オブ・プラハのものが最も近いようです。
2曲目の「セント・メリーの鐘」はビング・クロスビー主演の1945年の映画の主題曲ですが、元々は1917年に作曲されたクリスマスソングです。オーケストラだけで演奏されたものはなかなか無いのですが、さすが101ストリングスはこのアルバムでの演奏に近いアレンジでフルオーケストラで演奏しています。
「白い恋人達」はよく知られたフランシス・レイの曲ですが、最後の「星への階段」はほとんど知られてないのではないでしようか。それもそのはず、映画では1959年のマリリン・モンローの「お熱いのが好き」の中で使用された曲ということだけで取り上げられています。元々は1935年の作品で、「パークアヴェニュー・ファンタジー」のテーマとして作曲されたものです。原曲のタイトルは「stairway to the stars」です。
こちらはボストン・ポップスの演奏が見つかりました。いい曲ですが、ほとんど忘れ去られた曲でしょうなぁ。よくN響が取り上げたものです。貴重なお宝レコードになりそうです。