レコード芸術 1970年4月号 2 | geezenstacの森

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レコード芸 1970年4月号

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 このころのレコード芸術は毎号500ページ以上の大部なページ

を誇っていました。そのかなりのスペースをオーディオメーカーが広告を打っていました。大手メーカーはもちろんですし、カートリッジメーカーとかアンプやスピーカーの専用メーカーまでがこぞってオーディオ専門誌でもないのに広告ページを持っていました。それだけ、レコード産業が業界を支えていたんでしょうなぁ。

 

 

 万博のこの年は、パイオニアはステレオセットを購入するとオープンタイプのテープデッが当たるというこんな企画もぶち上げていました。

 

 

 そして、時代はオープンリールテープからカセットテープの時代に突入しようとしていました。小生もこういう上から挿入するタイプのカセットデッキを購入しました。まだ、日本製のテープは信用ができなくて、写真に写っているドイツ製の「BASF」のテープで録音したものです。

 

 

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 さて、この号の特集は「世界のオーケストラ'70年の課題」というものです。冒頭でアメリカの88のオーケストラの代表が集まり、政府に初めて財政支援を要請した記事が出ています。この当時経営が安定していたのはニューヨークフィル、ボストン響、フィラデルフィア管だけで、クリーヴランドとシカゴ響は数年後には基金を使い果たすという状態でした。エリート11と言われたオーケストラでも、安泰はピッツバーグとミネソタ管だけで、あとは青色吐息の状態だというのです。イギリスではBBCを除いてロンドンのオケは全て自主運営団体にこの時までになっていましたし、フランスでは堕落したオーケストラの立て直しのためにパリ管が新設され、地方でもリヨンやマルセーユなどに国立のオケを新設したほどです。のだめで描かれたフランスのオーケストラはこの当時の堕落したオーケストラの状態を描いていたようです。

 

 この当時は、カラヤンがパリに乗り込んだり、バーンスタインはウィーに活動の拠点を移していましたし、ブーレーズは反対にフランスからアメリカに乗り込んでいます。指揮者の大移動が始まった時期でもあります。

 

 日本ではこの当時東京には6つのオケがありましたが、地方でプロとして活動していたのは、京都響、大阪フィル、札幌響、そして群馬響しかありませんでした。名フィルがプロオーケストラになったのは1973年ですから、当時はまだアマチュアオーケストラだったんですなぁ。

 

 

 こちらはパリ管と録音するカラヤンです。

 

家族に囲まれるカラヤン

 

 この号には万博で来日するカラヤンにスポットを当て珍しいポートレートが多数掲載されています。

ダンディなカラヤン

 

サンモリッツの自宅を散歩するカラヤン

 

プライベートジェットから降りるカラヤン

 

エリエッテ夫人と

 

カラヤンとバルビローリ

 

 

 カラヤンを取り上げるならバーンスタインをぬかすわけにはいくまいとこちらもグラビアが掲載されています。

 

 

 ソニーの広告のトップはバーンスタインの「レニングラード」です。このバーンスタインの「レニングラード」は高校の音楽室のライブラリーにあって、当時部活で利用できたこともあり、借りて聴き込んだものです。これでショスタコにハマったと言っても過言ではないです。

 

 

 ソニーはこの時バーンスタインとオーマンディを失っていますから、セルの売り出しに躍起でした。セルは万博で来日しています。

 

 

 この号から名演奏家シリーズがスタートしていて、第1回はヨーゼフ・シゲティが取り上げられています。

 

 

 シゲティの自宅には住み込みで日本人の弟子がいました。このシゲティの門下生には潮田益子や海野義雄など世界に通用するアーティストが育っています。

 

 

 オランダ管楽合奏団です。指揮をしているのはエド・デ・ワールトですが、もともと彼はこの合奏団でオーボエを吹いていました。まあ、指揮も勉強していて23歳の時にはオランダ放送管弦楽団を振ってデビューしています。その後ミトロプーロス指揮者コンクールに優勝し、バーンスタインやセルに付いて学んでいます。

 

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 この号での日本のホールは改装なった「日比谷公会堂」が取り上げられています。この建物昭和4年オープンということですからすごい歴史のあるホールなんですなぁ。公会堂というくらいですから本来は演壇であったところがステージになり、大幅に手を加えています。客席の間隔も広くなり、現役でもあるわけですから歴史的建築物といってもいいのでしょうなぁ。

 

 

 当時のレコ芸はクラシック一辺倒ではなく、ポピュラーやジャズ、そして映画までも扱っていました。もちろん映画のコーナーを担当しているのは「岡俊雄」氏で、ヒッチコックの「トパーズ」、ルネ・クレマンの「雨の訪問者」、ヴェルヌイユの「シシリアン」を紹介しています。そして、最後にはカラヤンの製作した自身のベートーヴェンの交響曲第5番と6番の映画についても取り上げられています。クルーゾォ監督の5番は褒めていますが、6番のニーベリング監督はカメラのコマ割りが煩雑すぎて音楽映画としては失敗だと結論づけています。