ところで、今日指揮したのは? 秋山和慶回想録 | geezenstacの森

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ところで、今日指揮したのは?

秋山和慶回想録

 

著者:秋山和慶、富沢佐一

出版:アルテスパブリッシング

 

 

 師・斎藤秀雄、盟友・小澤征爾、弟子たちとの交流、ストコフスキー、グールドら巨匠の思い出、内外のオーケストラとの演奏活動、趣味の鉄道・・・・・・世界のアキヤマが初めて語った指揮者人生のすべて!文化功労者顕彰&指揮者生活50年記念出版。---データベース---
 

 秋山氏はこの本ではちらっとしか登場しませんが、中部フィルハーモニー交響楽団の芸術監督・首席指揮者を務めるほか、現在は東京交響楽団桂冠指揮者、広島交響楽団終身名誉音楽監督、九州交響楽団桂冠指揮者、洗足学園音楽大学教授として後進の指導に当たっています。サイトウキネン・オーケストラに代表される齋藤秀雄氏は小澤征爾やこの秋山和慶、飯森範親、下野竜也氏らを育てています。この本を読んでいると分かりますが、小澤征爾の弟弟子にあたる人物ですが師匠の斎藤秀雄氏から斎藤メソッドを受け継いだ正当な跡継ぎは秋山氏です。なぜかと言えば斎藤秀雄氏は「音楽を利用して自分の名声を高めようとしてはならない」という教えを守り、なおかつ海外のみならず国内のプロオケを振り、音大などで指揮や後進の育成に力を入れるなど日本のクラシック音楽界に多大な貢献をされました。理想とするのは、指揮者が目立たずオーケストラが素晴らしい演奏をすることだと言う秋山氏のその姿勢はこの本のタイトルにも現れています。秋山氏は桐朋学園大学を卒業後も教官として大学に籍を置き、18年間と弟子の中では最も長く再投資に仕えていました。

 

 指揮者デビューした東京交響楽団がTBSから専属契約を打ち切られて楽団長が自殺するという事件が起きてからも手弁当(いわゆる無給)で楽団を指揮して支えたという姿勢から見ても秋山氏の誠実な人柄が見てとれます。おまけに奏者から見て指揮が分かりやすく、リハーサル時間内に曲をまとめる能力に長けるのでオーケストラからの信頼が厚いのも納得です。これが斉藤メソッドで、この教え方の教則本を改定したのも秋山氏です。

 

 リアルタイムで、氏の活躍は、バンクーバー交響楽団音楽監督(1972-1985、現在桂冠指揮者)、そしてストコフスキーの後任としてアメリカ交響楽団音楽監督(1973−1978)、さらにはシラキューズ交響楽団音楽監督(1985-1993、現在名誉指揮者)を歴任していたことを承知していました。そんなこともあり、氏の住居は今でもバンクーバーの高台にあります。

 

 レパートリーは広く、800曲以上あるそうで、新作も初見で指揮することにも長け、楽譜が出来上がる端からレコーディングして発売したこともあるそうです。しかも、そのほとんどを暗譜しているということですから大したものです。

 

 氏のリハーサルは無駄がないということでも知られていて、クリーブランド管弦楽団に客演した際に学んだ細部にこだわった練習の大切さを学んだと言います。そして、「アキヤマの指揮なら100%OKだ」と言われる数多くの世界的なソリストとの信頼関係を築いているようです。最近引退したようですが、ウラディミール・アシュケナージと共演した後には指揮についてアドバイスを求められたことなど、いろいろな話が出てきます。東京交響楽団が経営危機を迎えたときの苦労。トロントをはじめとした海外のオーケストラへの客演。そもそもの生い立ち。斎藤秀雄氏への感謝。いろいろなエピソード。そのようなことが書かれている。日本のオーケストラを率いての海外公演の思い出、大の鉄道マニアでジオラマ室があることや、そのヴァンクーヴァーの豪邸の様子、家族への感謝も綴られています。

 この本は秋山氏にインタビューを重ねてこの本をまとめた富沢氏が、あちこち取材して集めた関係者の発言や当時の記事などの情報をまとめたコラムがはさんあります。こちらは、本人の発言ではなく周囲のものなので、また違った視点になっていて面白く読めます。

 後進の指導にも熱心で、主要な指揮者で秋山氏を師の一人として名前を上げた人は30人にのぼります。 日本演奏家連盟が発行している「演奏年間」の2014年版に収録されている指揮者は183人ですが、その中で秋山氏を「師」とあげている人は28名だそうです。前掲の3氏の他に、大友直人、梅田俊明、北原幸男、高関健、十束尚弘、新田ユリ、沼尻竜典、延原武春、堀俊輔、矢崎彦太郎、山下一史、渡邊一正氏らの名前が記されています。すごいメンバーですなぁ。

 

 また小澤征爾氏は「秋山さんは、斎藤先生のいちばん理想的な弟子だと私は今でも思っておりますし、斎藤先生の指揮法をいちばん正しく受け継いでいるのが秋山さんです」と述べているとこの本には書かれています。

 

 この本を読むにあたって、興味深いところに付箋を貼ったのですが、付箋だらけになってしまって困ってしまいました。

 凄い指揮者なのに、それほど派手さがなく、あまりにレパートリーが広いことがかえって災いしている観すらある指揮者であるが、むしろそれこそが秋山流の真骨頂なのだ、とも思えます。YouTubeを覗いてもそれほど音源はアップされていません。

 

 氏の新しいオーケストラとの共演にはいつもブラームスの交響曲第2番が選ばれています。そのことについてインタビューで次のように答えています。

 

 

 そのブラームスの交響曲第2番です。