メニューインのベートーヴェン
曲目/ベートーヴェン
ピアノ協奏曲第4番ト長調Op. 58
I Allegro Moderato 19:28
II Andante Con Moto 4:39
III Rondo - Vivace 10:11
ピアノ協奏曲ニ長調 Op. 61a*
I. Allegro, Ma Non Troppo 24:05
II. Larghetto 11:01
III. Rondo Allegro 10:32
ピアノ/アンドラーシュ・シフ
指揮/ベルナルト・ハイティンク
演奏/シュターツカペレ・ドレスデン
ピアノ/フランシス=レネ・デュシャーブル*
ティンパニ/ピオトゥル・コステルツェワ
指揮/ユーディ・メニューイン
演奏/シンフォニア・ヴァルソヴィア
録音/1996/03 聖ルカ協会、ドレスデン
1999/01 ルトスラフスキー・スタジオ、ワルシャワ*
P:クリストファー・レイバーン
エティーネ・コラード*
E:エバーハルト・セングピール
マイク・クレメント*
Werner 0190295398828
この一枚も、ワーナーの「ベートーヴェン全集2020」に収録されている一枚です。ピアノ協奏曲第4番は全集の中の一曲です。単独発売の全集は、3番と4番のカップリングでしたが、こちらのセットではヴァイオリン協奏曲の編曲版のピアノ協奏曲とのカップリングと全集ならではの一枚になっています。以前アンドラーシュ・シフがNHK教育テレビに出演し、ベートーヴェンのピアノ協奏曲のレッスンと解説をしている番組が放送されたことがありましたが、その集大成とも言える演奏です。
世にはベートーヴェンの日あの協奏曲全集は名盤がひしめいていますが、デジタルのセッション録音としての伝統的な演奏スタイルを踏襲した名盤という位置付けではこのシフ/ハイティンク盤は最右翼に位置するポジションにあるものの一つでしょう。まあ、個人的にはシフはデッカのアーティストだと思っていたのですが、いつのまにかテルデック・レーベルに移籍していたんですなぁ。
ピアニストに聞くと、「皇帝」よりこの第4番の方が好きという人が多いと言われるように、この第4番は通好みの曲なんでしょうなぁ。何しろいきなりピアノの響きで開始される曲なんですから、この出だしでほぼ曲のテンポが決まってしまいますからピアニストが主導権を握るという意味では画期的な作品なんですな。それも、交響曲第5番の出だしと同じ和音で開始されます。まあ、こちらは弱音で開始されますから対決よりも調和を狙ったということができます。そういう意味でもピアニストにとっては気持ちがいいのかもしれません。
ここでのシフはまさにそれを実践していような穏やかな響きで、ハイティンクもそれをしっかりとサポートしています。オーケストラの響きも古色の響きを有していてまさに古き良き時代の響きを漂わせています。
2曲目は、あまり演奏されませんが、ヴァイオリン協奏曲を作曲家自身が編曲したピアノ協奏曲です。多分この音源は1999年に発売されているようですが、わが国ではほとんど話題になりませんでした。ここで指揮をしているユーディ・メニューインは晩年はオーケストラを組織し、指揮に専念していました。EMIからはこちらは国内未発売ですが、ベートーヴェンの交響曲全集を録音しています。この録音もその一環で録音されたもののような気がします。オーケストラのシンフォニア・ヴァルソヴィアは「ラフォルネ・ジュネル」の常連オーケストラとして毎年来日していますから、よく知られているのではないでしょうか。ピアノのルネ・デュシャーブルも近年話題になっているピアニストの一人です。
このセットの中に、こんな録音が含まれているとは思いもしませんでした。それに、ティンパニストまでクレジットされているのですから、この録音がピアノとティンパニの競演のような様相を呈していることを予感させます。
まさにそれは言い得て妙な表現で、ここでのバトルはスリリングでもあります。もともとメニューインはヴァイオリニストですからこの曲を熟知しています。聴かせどころもソリストの心情も分かるでしょう。メリハリのくっきりした演奏で、ディシャーブルの明るい音質とマッチとています。カデンツァでのティンパニとのバトルもなかなか面白いものがあります。
今は単品は廃盤になっていますから、ベートーヴェンの全集で聴くしか方法はないようです。