1968年のレコード芸術 4 | geezenstacの森

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1968年のレコード芸術 4

 

 

 

 1968年のレコード芸術の第2弾が友人から送られてきました。3月号から6月号までです。で、今回取り上げるのはその3が月号です。表紙のジャケットはテノールの「ジェームス・キング」です。ジェームズ・キングJames King, 1925年5月22日 – 2005年11月20日)は、第二次世界大戦後を代表するテノール歌手のひとりで、米国屈指のヘルデンテノールでした。カール・ベームに認められ、いわゆるベーム・ファミリーとしてウィーン国立歌劇場をはじめとして欧米のすべての主要な歌劇場に出演するかたわら、録音活動にも積極的でした。なかでも最も有名な録音の一つは、レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ならびにディートリヒ・フィッシャー=ディースカウとの共演による、マーラーの《大地の歌》でしょう。気になる記事は特集の「新局面に立つレコード業界」というものがあり、CBSソニーの設立がこの年のエポックメーキングな話題であったことがうかがえます。

 

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 特集記事は3本で構成されているのがわかります。ここでは3つ目の「CBS・ソニーの発言」が最も注目されます。何しろ当時の設立準備室長の大賀典雄(後の社長)が自らインタビューに応じているからです。この記事の中で、ソニーに打診があったのは1967年10月だったということです。そこで1968年の6月1日で切れる日本コロムビアとの契約の延長は考えていないという意思を聞き、それではと急遽契約書の素案を作って渡米したのが11月、そこではマネージメントはソニーに任せる、売り上げはクォーターをつけないなどの条件をCBSが100%飲んだということで、詳細を詰めて調印したのが12月13日の夜だったと言います。すると、翌日の新聞にはトップ記事で報道されたということです。ただし、コロムビアサイドとしては、5年ほど前からCBSとの合弁会社を作るという話はあったのを1レーベルとしての位置付けでしか捉えなかったという側面があってCBS側が業を煮やしたというのが真相のようです。

 

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 グラビアページではそれまでのCBSからRCAに移籍した調印式の写真も掲載されています。これでオーマンディ/フィラデルフィアは1968年5月からCBSを離れRCAに移籍したことになります。

 

 

 

 

 

 グラビアの中にはこんな珍しい写真もありました。ウィルフリート・ベッチャーという指揮者です。この頃にはハンブルク交響楽団の常任指揮者になっていたのですが、目地レーベルとの契約がなかったのでほとんど知られていないでしょう。

 

 

 さて、上の目次で、講談社と河出書房の世界音楽全集の記事が取り上げられています。この当時、出版社系の全集がガチでぶつかって販売合戦が繰り広げられていたんでしょうなぁ。我が家にはこの全集の一部を所蔵しています。右が講談社版で、左が河出書房版です。音源は講談社はキングによるロンドン・デッカ原盤が、河出書房はビクターが供給する新世界を中心に一部RCA音源も使ったものになります。どちらも30cmLP2枚組で2800円で発売されました。

 

 小生はこの河出版でボロディンの交響曲第2番を初めて聴きましたし、講談社版はロンドンのファイファイ録音で音がいいのが特徴でした。ただ、うたい文句の本格的完全録音は講談社版です、という言葉はちょっと偽りがあり、シベリウスの巻では疑似ステレオ録音が混ざっていました。デッカといえども一社だけでは全てのステレオ音源でまかないきれなかった時代だったんでしょうなぁ。もともとキングは講談社のレコード部門として昭和5年に発足しています。ちょっと、なあなあなところがあったようですなぁ。

 

 

 この3月号の目次でもう一つのグラビアで目立ったのはメータとアシュケナージのページです。このころ、メータはデッカデビューしてで、この月の裏表紙にはムソルグスキーの「展覧会の絵」のピアノ版とオーケストラ版の初めてのカップリングのレコードが告知されています。ありそうでなかった組み合わせだったんですなぁ。

 

 

 広告はメータがメインですが、このころのメータはかっこいいです。

 

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 この当時連載で各レコード会社のレコード製造現場もグラビアで紹介されています。この号はキングレコードの紹介です。

 

 

 

 記事を読んでいくと、デッカ・ロンドンの原盤は木枠に入ってデッカ本社から直送されていたようです。また、カッティングはクラシックはノイマン、ポピュラーはウェストレックスで行われていたということです。