新・古着屋総兵衛  虎の尾を踏む | geezenstacの森

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新・古着屋総兵衛 虎の尾を踏む

 

著者/佐伯泰英

出版/新潮社 新潮文庫

 

 

 拉致された九条文女の行方は杳として知れず、焦る総兵衛は意を決し、江戸城への潜入を試みる。また、北郷陰吉らの探索によって、異国の仮面兵と老中牧野忠精の関係が見えてきた。文女救出劇は老中牧野との闘争へと変わり、仮面兵との全面対決に発展。ついにイマサカ号とマードレ・デ・デウス号が駿河湾で激突する。敵船甲板上、女首領が構えた銃口は総兵衛一人に狙いを定めていた。---データベース---

 

 新・古着屋総兵衛13巻は12巻の続きになっています。読んでいると分かりますが、「死の舞」はタイトルだけで全く意味のない舞でしたが、海戦が絡むマードレ・デ・デウス号との戦いもおっとりした展開で、一隻では足りないと見て、急にもう一隻ガリオン船が登場します。こちらはただイマサカ号にやられるためだけに登場しているので全く意味不明です。前巻の最後に影様こと九条文女が攫われます。老中・牧野忠精は影様・九条文女の元愛人だということは分かっているのに大黒屋の影警護がつかないというのも片手落ちの設定ですわな。

 

 幕府の中枢にはろくな老中がいないなかで、大黒屋の敵はだんだん小者になってきています。牧野忠精はガリオン船の一味を自陣に誘い込み、大黒屋総兵衛又の名をグエン・バン・キに敵対させます。マードレ・デ・デウス号と今坂号の戦いは、佐々木正介が考案した爆裂団で決定的に優位に立ちますが、なぜか最後の戦いは惣兵衛と敵の女頭領との戦いはなぜか一騎打ちで、惣兵衛が負傷するという展開になります。前回は弩の絵に鉄砲の玉が当たり、かすり傷ひとつ負わなかったのに、ベトナムの弩同士の戦いでは負傷という、ちゃらんぽらんな展開です。それよりも、肥大化した鳶沢一族の重要人物の素性が次々と明らかになっていきます。どう見ても、登場人物が肥大化していますが、本当にこんなんで大丈夫なのでしょうか、と心配してしまいます。

 

 先の八州探訪でも惣兵衛に随行した天松は老中・牧野の妾腹の子というのが明らかになりますし、おりんの実父は分家・鳶沢安左衛門の実弟の海次郎(永平寺で生存しているらしい)であることが明らかになります。

 

 話が幕末に向かって一直線に進んでいきますが、この先敵対するにふさわしい大物といったら明治期まで生き延びた、天保の改革の推進者だった鳥居耀蔵になるのでしょうかねぇ。