新・古着屋総兵衛 死の舞い
著者/佐伯泰英
出版/新潮社 新潮文庫
長崎伊王島沖合に二百年も前のガリオン船が現れ、仮面をつけた戦士たちが怪しく舞う―。江戸では一番番頭信一郎とおりんの祝言に合わせ新居普請が順調に進む中、五回目の古着大市の準備が佳境を迎えていた。そんな折、大黒屋前に不審な短艇が三艘留まり、哀しげな調べに乗って「死の舞い」が始まった。十代目総兵衛就任以来、最大級の謎と危機。巻を措く能わざる衝撃の第十二巻。---データベース---
ここで登場するガリオン船はディスニーシーの「ルネサンス号」をイメージしてもらえばいいでしょう。3本マストの帆船ですな。しかし、ここで登場するガリオン船の「マードレ・デ・デウス号」で登場する乗組員は女ばかりです。彼女たちが踊るのが死の舞ですが、これが優雅すぎてちっとも怖さが伝わってこないんですなぁ。大黒屋の一党は「弩」を使いますがこの敵も同じ「弩」を使います。さすれば同郷の民ということがわかります。なんとも異国の地で阿南人同士が戦うことになります。
この巻の章立てです。
目次
第1章 長崎のガリオン船
第2章 帆船改装
第3章 影様の陰
第4章 五度目の賑わい
第5章 試走航海
あとがき
古着大市の5回目が開催されます。この巻のメインはこの催しなんですが、大黒屋はこのイベントを隠れ蓑にして舟隠しを兼ねる橋を普請したり、地下トンネルを作ったりやりたい放題です。そして、ようやく一番番頭の信一郎とおりんが祝言をあげ、古着大市が盛会に終了ますが、肝心のガリオン船との対決は次号に持ち越しという展開で進行がゆるすぎてだれてしまいます。データベースの謳い文句はちょっと誇大広告ですな。
相変わらず幕閣の中に大黒屋を良からずと考える輩が暗躍し、それがこの怪しげなガリオン船の一味と結託し、大黒屋に襲いかかります。しかし、この戦いは小規模な物で物語の展開的には盛り上がらず、つまらないままで終わってしまいます。大黒屋に火が放たれ一部が燃えますが、話の展開の中ではそれ以上の進展はありません。
町の真ん中で戦いが行われ、火事まで発生していますから本来なら町奉行が動くはずですが、その形跡はありません。不思議な展開です。
2回目の出航の準備は着々と進行し、大黒屋の一統の規模はますます拡大します。登場人物が増えすぎて少々収拾がついていないような所も伺えます。作者のライフワークという位置づけの作品ですから、ここらへんはうまく差配していって欲しい物です。
前巻の八州周りは落ち着くところに落ち着きましたが、この巻では全く事件らしい事件にはなりません。消化不良は、次巻で解決するのでしょうかねぇ。