ビートルズ・ゴー・バロック | geezenstacの森

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時空を超えたビートルズ
ビートルズ・ゴー・バロック


曲目/
Beatles Concerto Grosso #1 (In The Style Of Handel)
1.She Loves You, A Tempo Giusto 2:19
2.Lady Madonna, Allegro 2:19
3. Fool On The Hill, Adagio 2:46
4. H1Y Pie, Allegro 2:10
5. Penny Lane, Allegro 3:38
Beatles Concerto Grosso #2 (In The Style Of Vivaldi) 
6.A Hard Day's Night 2:36
7.Girl 2:31
8.& I Love Her 3:06
9.Paperback Writer 3:34
10.Help 2:19
Beatles Concerto Grosso #3 (In The Style Of J.S. Bach) 
11.The Long & Winding Road, Overture 4:57
12.Eight Days A Week, Rondeau 2:34
13. She's Leaving Home, Sarabande 3:45
14.We Can Work It Out, Bourr??e 2:02
15. Hey Jude, Polonaise 4:22
16.Yellow Submarine 1:50
Beatles Concerto Grosso #4 (In The Style Of Corelli)
17.Here Comes The Sun 1:37
18.Michelle 3:28
19.Goodnight 3:12
20.Carry That Weight 1:40

 

指揮/ペーテル・ブレイナー
演奏/ペーテル・ブレイナー室内管弦楽団
チェロ/ユーレイ・アレクザンデル
ヴァイオリン/ユーレイ・チズマロヴィッチ
フルート/ウラディスラフ・ブルンナー

 

録音/1992/02/28-03/01 スロヴァキアフィルハーモニー・モイゼス・ホール、ブラスティラヴァ
 
NAXOS 8.555010

 

 

 小生はビートルズといわれても狂喜するような取り立ててのファンではありません。ま、同世代の人間の一人ですから時代とともにそれなりに曲は聴いていましたし、レコードも少なからず所有しています。でも、詰まるところ映画からビートルズに入ったという経緯から所有しているのは映画がらみの作品ということになります。

 

 ビートルズのLPで最初に買ったのは「レット・イット・ビー」でした。これはれっきとしたサントラ盤なんですよね。後、手元にあるのは「ビートルズがやってくるヤァ!ヤァ!ヤァ!」、そして「イエロー・サブマリン」です。オリジナルはこれだけしか持ってないんですね。すべて映画がらみです。その割には、ほとんどのヒット曲は持っていました。いわゆる海賊盤と称するものです。「ビートルズαω(アルファ・オメガ)」というボックスセットで2巻組各4枚組というとてつもない海賊版でした。しかし、音はいいし、何せビートルズのヒット曲がほぼ網羅されていたのでかなり巷では話題になったものです。正規盤に比べて安かったですしね。これが世に出たためにビートルズはあわてて赤盤、青盤というアルバムを出さざるをえなかったという曰く付きのものです。下がその第1集のボックスセットなんですけどね・・・

 

イメージ 2

 

 ビートルズ・フリークではなかった小生はレコード時代はこれで充分でした。CD時代になってもビートルズのCDを揃えるということはありませんでした。しかし、ビートルズ・メロディは好きなのでカバー名曲集やイージーリスニングのアルバムなんかはコレクションに溢れています。そういう流れの中で手に入れたのがこのCDです。何とナクソスからこんなCDが発売されたんですね。それも、いつもは帯だけが日本語化されているというものが多い中でジャケットからライナーまですべて日本語仕様という大サービスのCDです。中身は単なるカバーでは無く、バロックスタイルで演奏しているというのも売りでした。まあ、幸逸た試みはLP時代から結構ありました。フランソワ・グロリューの弾く有名作曲家のスタイルに似せてのビートルズ・メロディ集とか、弦楽四重奏によるビートルズ・ソングブックとか枚挙にいとまがありません。それだけ、ビートルズのメロディは万人の心を惹き付ける魅力を持っているということでしょう。

 

 それをバロックの合奏協奏曲のスタイルで仕上げたというのがこのアルバムの面白いところです。リストを見てもお分かりの通り最初の3曲はそれぞれヘンデル、ヴィヴァルディ、バッハ、それにコレッリの作品を模してビートルズのメロディが演奏されています。ヘンデルというと一般には「水上の音楽」とか「王宮の花火の音楽」が有名ですが、その次ぎに来るのが合奏協奏曲です。ここでは作品6の合奏協奏曲に模して5曲がチョイスされています。チェンバロを配した優雅なサウンドで聴くビートルズも粋なものです。3曲目の「フール・オン・ザ・ヒル」ではチェロの独奏がクローズアップされしみじみとしたラールゴのテンポでなかなか良いアレンジです。ソロの部分ではヴァイオリンのクィード&アンナ・ヘルブリンクはクレジットされていませんが、このヘンデルの合奏協奏曲は基本的に二つのヴァイオリンがメインにになって通奏低音と組み合わされるというのが基本形ですから彼らが演奏しているものと思われます。

 

 

 2曲目のヴィヴァルディは有名な「四季」を模したパロディです。随所にビートルズ・メロディとヴィヴァルディの四季のフレーズが絡み合っています。四季はヴァイオリン協奏曲の形式ですからここでは独奏ヴァイオリンが華やかにビートルズメロディを歌い上げます。さしずめ「ハード・デイズ・ナイト」が春の第1楽章といった風情のアレンジでしょうか。ちゃんとトリルも聴かせてくれています。「アンド・アイ・ラブ・ハー」は夏のイメージでの編曲です。これがまたぴったりのイメージで思わずにんまりです。「ペーパー・バック・ライター」は秋のイメージ、「ヘルプ」は冬のイメージでの編曲だというのが分かって聴いていて楽しいですね。

 

 

 3曲目はもろバッハの管弦楽組曲第2番です。独奏にフルートが使用されていることからもそれが伺い知れますが、「ロング・アンド・ワインディング・ロード」は壮大な序曲です。バッハの組曲第2番は都合7曲で、ここでは6曲がチョイスされています。どの曲がバッハの作品に対峙しているのかということを考えながら聴くのも一考です。最後の「イエロー・ザブマリン」ではオーケストラのかけ声も入るという楽しいパロディになっています。指揮者のブレイナーはスロヴァキア放送の音楽監督をしていてピアニストやプロデューサーとしての活動をしていることから羽田健太郎のような存在なのでしょう。なかなか洒落たアレンジをしてくれています。

 

 

 最後の曲はコレッリのスタイルです。クリスマス協奏曲をイメージしているのでしょうか。バロック時代で一番名が知られていたというのがこのコレッリでしたから彼を外すわけにはいかなかったのでしょう。ここでは一番少ない収録曲数です。この中では渋い「グッド・ナイト」がチェロの独奏を伴って切々とスローバラードで歌い上げています。もともとが子守唄ですからこういうアレンジは最適です。そして、最後はにぎやかに「Carry That Weight」で締めくくられます。「ゴールデン・スランバーズ」とのメドレーで歌われるこの曲、ビートルズのお別れの歌ということでラストにふさわしい選曲ですな。