マリナーの「惑星」 | geezenstacの森

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マリナーの「惑星」

 

曲目/

ホルスト組曲「惑星」Op. 32, H 125

1. Mars, The Bringer Of War    7:42

2. Venus, The Bringer Of Peace    7:39

3. Mercury, The Winged Messenger    4:01

4. Jupiter, The Bringer Of Jollity    8:12

5. Saturn, The Bringer Of Old Age    7:48

6. Uranus, The Magician    5:27

7. Neptune, The Mystic    6:37

エルガー/威風堂々

8.第1番 In D, Op. 39/1    6:29

9.第4番 In G, Op. 39/4    5:26

 

指揮/ネヴィル・マリナー

演奏/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

   アンブロジアン・シンガーズ

P:ヴィクトリア・ネグリ

 

録音/1977/06/24-26 コンセルトヘボウ

 

BELART 450053-2 

 

 

 最初この「BELART」というレーベルは輸入盤で発売されていました。言って見れば当時のポリグラム系(今のユニヴァーサル)の廉価レーベルでした。翼下のグラモフォン、デッカ、フィリップスもそれぞれ廉価版シリーズを持っていましたが、このBELARTはその全てのレーベルの音源を包括的に発売していました。この一枚もそんなもので、思うに、アナログ時代の録音を専門に発売していたと記憶しています。このCDは通常のフルプライスのCDと同じ、ポリグラムのハノーファーの工場で製作されたもので、CD全体がアルミ蒸着で製造されています。入手したのは1990年代の前半でしたが、その頃国内盤ではホルストの「惑星」だけの単体でフルプライスで発売されていました。ここでは併録としてエルガーの「威風堂々」の1番と4番が収録されていますが、のちに再発された国内盤にはさらに第2番も収録されています。ということではちょっと中途半端なディスクと言えないこともありません。

 

 この録音多分、マリナーがコンセルトヘボウと録音した唯一のアルバムではないかと、ちょいと調べてみました。当時のPHILIPSレーベルではハイティンクが1970年にもう一つの主席のポストを務めていたロンドン・フィルと「惑星」録音をしたため、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団ではこの盤が現在のところ唯一の録音となっています。コリン・デイヴィスもPHILIPS主力として活躍していてハイドンの交響曲を録音していましたが、デイヴィスはなぜかベルリンフィルと録音しています。シャイーも常任時代には録音しませんでしたし、その後のヤンソンスも、解任されてしまったダニエル・ガッティも録音を残していませんから、現在でもこのマリナーの録音はコンセルトヘボウにとっても唯一の「惑星」のセッション録音となっています。

 

 当時マリナーはこの「惑星」の他に、エルガーのエニグマと威風堂々を3曲、同時に収録を行いました、恐らくマリナー指揮のイギリス・シリーズとしてアルバム2枚分が制作されたと思われますが、彼らの共演盤はこの時のみで終了しますので、今となってはこの組み合わせは貴重な録音となっています。ただ、この時までにマリナーは室内オーケストラとしか録音をしていませんから、多分フルオーケストラとの最初の録音だったのではないでしょうか。ちなみにミネソタ管の常任になったのは1989年からです。

 

 振り返れば、マリナーはこの録音に先立つ'76年5月に来日し、日本でそれまで馴染みの薄かった「惑星」を東京フィルを振っていたのもこの録音を念頭においてのものだったのでしょうかねぇ。

 

 ここでのマリナーはイギリス伝統の指揮者然としたスタイルをとっています。火星はゆったりとしたテンポでティンパニの打ち込みをきっちりと際立たせ、悠然と進めていきます。多分ここまで遅いテンポは珍しい部類でしょう。このテンポを受け入れるかどうかでこの演奏の評価は変わってしまうのではないでしょうか。まあ、ロック世代のE.L.Pのファンならこのテンポの方がしっくりとくるのではないでしょうかねぇ。そんなことで小生は受け入れ派です。ちなみにELPの演奏はこんなものです。

 

 

 オケの特筆を引き出すことを生業としているかの如く終始一貫しており、隅々までコンセルヘボウ・サウンドが堪能できる素晴らしいアルバムとなっています。格調の高さがあるのもこの組み合わせならではで、「水星」での木管のやり取りや「木星」での説得力、「土星」でのハーモニーの美しさは絶品。この盤はまさに"調和"を主体とした最高の演奏と言えるでしょう。このマリナーの「惑星」はアナログ末期の録音ということもあって素晴らしくいい音がします。オケはアンサンブルも緻密ですし、ホールトーンを生かした録音は左右いっぱいに広がって包み込むようなサウンドが空間に広がります。

 

 

 先にも書きましたが、併録されているエルガーの「威風堂々」はもう一枚のアルバムに収録されていたものです。マリナーがイギリス人であることで、こういうアルバムが製作されたのでしょうなぁ。まあ、イギリス人にとってはプロムスの定番曲というだけあっておはこみたいなものです。悪かろうはずがありませんわな。

 

 このBELARTレーベルでは以下のようなCDも発売されていました。