バロック名曲1000シリーズ
アントニオ・ヤニグロのヴィヴァルディ
曲目/
ヴィヴァルディ:フルート協奏曲ニ長調「ごしきひわ」p155*
ヴィヴァルディ:ピッコロ協奏曲ハ長調p79*
ヴィヴァルディ:ファゴット協奏曲ホ短調p277**
テレマン:オーボエ協奏曲ニ短調
フルート、ピッコロ/ジュリアス・ベーカー*
ファゴット/カール・ホフマン**
オーボエ/アンドレ・ラルド
指揮/アントニオ・ヤニグロ指揮
演奏/ザグレブ室内合奏団
録音/1962、1954**
キング GT1083(ヴァンガード原盤)
1972年にキングから発売された「バロック名曲1000」シリーズの一枚です。これ以前に、コロムビアからエラート原盤を使用した「バロックの大作曲家たち」シリーズが大成功してバロック音楽ブームに先鞭をつけていたので、その2番煎じとして発売されました。キングも同じく20枚のシリーズで発売したのですが、コロムビアのように作曲家別ではなく、やたら詰め込みのオムニバス形式での発売でした。この一枚もそうで、一応ヤニグロ/ザグレブ合奏団でまとめていますが、第2面の最初のファゴット協奏曲はモノラルのものをさりげなくカップリングしています。聴いていて、やけに音質が悪いのでジャケットを確認すると裏面の左下にこっそりと「EAS」マークがありました。要するに擬似ステレオのことで、ステレオ初期にはよく使われた手です。
まあ、そんなインチキレコードですが、キングは名曲と言われるものだけをピックアップしていますので、内容的には満足していました。冒頭のフルート協奏曲「ごしきひわ」はこのレコードでその曲の魅力を初めて知ったものです。そして、ジュリアス・ベーカーの名前もこのレコードで初めて知りました。レコードには演奏者の説明は全くありませんが、フルートの響きとしてはエラートのピエール・ランパルよりしっとりとしていて好きでした。
ジュリアス・ベーカーはカーティス音楽院の出身で、ロジンスキー指揮のクリーヴランド管、ライナーのピッツバーグ管弦楽団首席を経て1951年からはシカゴ響の主席として活躍していました。音色は透明清澄で聴いての通りです。
フルート奏者はピッコロも兼ねるのでこのアルバムではピッコロ協奏曲もベーカーの演奏で聴くことができます。この曲も当時話題になった曲で、フランソワ・トリュフォーの「野生の少年」に第2楽章が使われていて強く印象に残っていた曲です。こういう曲をちゃっかりアルバムに入れるのがキングのセンスでしょうなぁ。小生もこの曲が聴きたくてこのレコードを購入したものです。まさに 名曲だけをピックアップしたシリーズでした。
この当時の録音は素朴そのもので、装飾音はなく曲自体のシンプルな響きを楽しむことができます。
ヴィヴァルディの作品はこの頃と今では曲の表記が大きく変わっています。このレコードでは当時の主流であったP(パンシェルル番号)で表記されています。しかし、今ではRV(リオム)番号て゜表記されています。ややこしい時代になったものです。で、バスーン協奏曲はRV番号では484で表記されます。
この曲も親しみやすい曲で、メロディは多分一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。そんなことでキングの担当者はモノラルでもこの曲をアルバムにぶち込んできたんでしょうなぁ。ファゴットの演奏者のカール・ホフマンは手持ちの「現代演奏家事典(渡邉護)」には記載がありませんでした。
ヴィヴァルディの作品に混じって最後にテレマンの作品が紛れ込んでいます。オーボエのアンドレ・ラルドロも懐かしい名前です。1956年のジュネーヴ国際音楽コンクールで1位に入賞しています。フランスのオーボエ奏者で、1959年結成のクラウディオ・シモーネ率いる「イ・ソリスティ・ヴェネティ」のメンバーとしても活躍していました。
この当時のフランスの管楽器奏者は優れた人材が多かったので安心して聴いて入られました。ただ、ヴァンガードの音源はきちんと管理されていないようでこの演奏もネットで拾うのに苦労しました。