グリーグとリストのピアノ協奏曲
イェンナーとチェルカスキー
曲目/
1.グリーグ/ピアノ協奏曲イ短調Op.16
13:30 6:32 10:16
ピアノ/アレクサンダー・イエンナー
指揮/オットー・グルーナー・ヘッゲ
演奏バイエルン放送管弦楽団
2.リスト/ピアノ協奏曲第1番変ホ長調 19:40
ピアノ/シューラ・チェルカスキー
指揮/ハインツ・ワルベルク
演奏/バンベルク交響楽団
3.リスト/愛の夢 3:45
ピアノ/ユリアン・フォン・カーロイ
録音/1960年頃 1
1964/06/04-06 2
キング GT1015(原盤オイディスク)
キングレコードがコロムビアに対抗して発売した「世界の名曲1000シリーズ」の一枚です。1970年の11月の発売です。10月に15枚、そしてこの11月に15枚発売されています。ただ、レコード番号順に15枚づつ発売されたわけではなく、原盤ごとに分かれていたようで、10月はヴァンガード、11月はオイロディスク原盤が投入されています。
で、こちらはオイロディスクです。Eurodiscは1958年に設立された当時の西ドイツのAriolaグループのレコードメーカーで、自主制作もしていましたが、どちらかというと旧ソ連のメロディアや東ドイツのエテルナの音源を西側で発売していたクラシック部門のレーベルです。この時代DGG、EMI系のエレクトローラ、そしでデッカ系のテレフンケンと並んで4代レーベルの一翼を担っていました。余談ですが、親会社のアリオラはその後、RCAと提携しBMGグループを形成し、さらに2000年代にソニーと合併し、ソニーBMGとなっていきました。
ただ、このオイロディスク、現在でもクラシックの発売券は日本コロムビアが所有しています。何やら複雑な権利関係がるようですなぁ。
ということで、このレコードはオイロディスクの自主制作物です。グリーグでピアノを弾いているアレクサンダー・イエンナーは現在でも健在です。
イエンナーは1950年代からソリスト、室内楽奏者として活躍していています。コンクール歴もかなりあるのですが、優勝ということはないようです。それでもウィーン国立音楽大学で長く教授を務め、ウィーンベートーベン協会の会長および国際ショパン協会の副会長を長く努めていました。そんなことで、アレクサンダー・イエンナーはパウル・パドゥラ=スコダ、イェルク・デムスと共ににオーストリア・ピアノ界の3大巨匠の一人に数えられていました(ドイツ版ウィキに依る)。ことほど、ベートーヴェンやショパンの演奏には定評があります。蛇足ですが、以前はウィーンの三羽烏というば、パウル・パドゥラ=スコダ、イェルク・デムスとフレードリッヒ・グルダでした。まあ、この名前は当時彼らを売り出すためにレコード会社のウェストミンスターがつけたキャッチフレーズだったようなところもあります。まあ、この時代は他にもブレンデルやワルター・クリーンなんかもいてピアニストのレベルが高かったことが伺えます。
ここでのグリーグはそれほど特徴のある演奏とはいえませんが、堅実で、オイロディスクの初期のレパートリーを埋めるのに貢献しています。
B面のシューラ・チェルカスキーはこれまた懐かしい名前です。晩年には毎年のように日本へ来日して演奏会を開いていました。1909年ウクライナ生まれ、ロシア革命でアメリカに亡命しています。天才少年として5歳の時にオペラを10歳でオーケストラを指揮したというエピソードの持ち主です。ドイツへは1949年にデビューしています。
ヨーロッパでは超人的な技巧と深い詩情を併せ持つピアニストと評価されていたようです(現代名演奏家事典-渡邉護)。このリストも得意としていたようで、モノラル時代の1952年にはフィストラーリ/フィルハーモニア管弦楽団とも録音しています。その評判もあり、オイロディスクはステレオ時代にこの曲をチェルカスキーで録音したのでしょう。ちなみにもともとの初出では同じリストの「死の舞踏」とカップリングされていました。
この録音1964年とステレオ録音もかなり布教してきていた時期のものですが、どうもこのキング盤で聴く音質は冴えません。ピアノがやけに目立ちオーケストラの音が奥に引っ込んでいます。ただ、トライアングル協奏曲問名を取るこの曲の第3楽章のトライアングルは少なくともリヒテル盤よりははっきりクリアーに再生されます。すでにリヒテル盤が大評判の時期でしたからあまり評価されなかったところが残念です。ネットで検索してみましたがこの録音はCD化もされていないようです。
そんなことで、モノラルで録音された演奏を貼り付けておきます。
このレコードおまけみたいに「愛の夢」が収録されています。演奏しているユリアン・フォン・カーロイは全く知らないピアニストです。調べるとショパンやラフマニノフを得意としていたハンガリーのピアニストのようです。ここでの「愛の夢」はそれほど特徴のある演奏をしていませんが、この人もまた、リストのピアノ協奏曲をEMIに録音しています。伴奏がイシュトバン・ケルテス/フィルハーモニア・ケルテスフンガリカというお国物演奏者で固めた録音になっています。戦前のピアニストという意味ではかなりロマンティックなリストを表現しています。ちょいとYouTubeで見つけたので貼り付けておきます。