KulturSPIEGELのアバド | geezenstacの森

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KulturSPIEGELのアバド

 

曲目/

CD1

1.ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」/ベルリン・フィル[2000.5]

2.チャイコフスキー:幻想的序曲「ロメオとジュリエット」/シカゴ響[1988.4]

3.ロッシーニ:歌劇「エリザベッタ」序曲/ロンドン響[1978]

4.ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲/ロンドン響[1978

 

P:クリストファー・アルダー

E:クラウス・ヘイマン

 

CD2

1.ドヴォルザーク:交響曲第8番/ベルリン・フィル[1993.11.16-19]

2.メンデルスゾーン:序曲「真夏の夜の夢」/ベルリン・フィル[1995]

3.R.シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」[1992.12.31]

 

ソニー 88697375782

 

 

 久しぶりにCDを取り上げます。このCDは整理をしてして発掘したものです。この一枚はドイツSONYとドイツの月刊誌「KULTUR-SPIEGEL (クルトゥーア・シュピーゲル)」とのタイアップ企画の40枚セットの中の一枚です。のちにこのセットはバラ売りでも販売されましたので手元にあるのはそのうちの1セットです。ちなみに、出版元の「KULTUR-SPIEGEL」誌は2015年に廃刊になっています。

 

 まあ、日本で言えば大手出版社から出している何とか全集みたいなもんでしょう。ですが、価格がとんでもなく安いのには驚かされます。面白いのは日本ですと講談社ならキングレコード、集英社はEMIなどと大手レコードメーカー一社と組んだ企画しか出来ないのですが、このセットは一応ソニーが表に立っていますが、ラトル何かはEMIの音源が、アーノンクールはテルデックの音源をそして、このアバドのセットではなんとDGGの音源を使用するなどメーカーサイドの企画ではなく消費者サイドに立った企画で制作されています。こういうところは日本の出版社も筋の通った企画を通すなら見習ってほしいところです。そんなことでセットには大指揮者20人の代表的名演をCD2枚ずつに収め、40枚のBOXにしたものです。

 

 ここで取り上げるのはCD1の方ですが、ここでのベートーヴェンの「田園」はベルリン・フィルとの旧録音の200/05のものです。小生は別途ウィーンフィルと、最後の2001/02のものは所有していますが、この200年の録音だけは抜けていました。そんなことで手に入れたものです。

 

 アバド/ウィーン・フィルの「田園」は、まだベルリン・フィルのシェフに決まる前の1986年の録音で、それこそ旧態依然のフルオーケストラのカラヤン流によるヴィヴラートタップのサウンドを引っさげての全集でした。で、こちらのベルリン・フィルとは手兵ということもあったのでしょうアバドの原点手法というものがここでも顔をもたげ、ピリオド奏法のイデオムを取り込み、ノンヴィヴラートでの演奏となっています。しかし、サウンド的には従来のベルリン・フィルの重心の低い音作りです。ちなみに、手持ちのウィーンフィルとの演奏タイムは、

13:24  12:25  5:32  3:35  9:20

ですが、ベルリン・フィルは、

11:38  11:05  4:58  3:25  8:38

とすべての楽章が速いテンポで演奏されています。一般的にノンビブラートの演奏ははやいいテンポで演奏されますから、まさにそのとおりの演奏になっています。アバドはシューベルトの交響曲でもそうでしたが、原典版志向が強く一般の指揮者とは違うアプローチをしがちで、ちょっとやりすぎ感があったのですが、ことベートーヴェンの交響曲については、この録音がなされた2000年頃までには広くピリオドアプローチの演奏が世に溢れていましたから、小生にはそれほど奇異な演奏には感じませんでした。ただ、アバド自身はこの演奏には満足しなかったようで、この1年後に再録音をしています。ですから、ボックスで発売されたシンフォニーエディションにはこの演奏は収録されていません。 参考までに2001年の録音では、

11:32  10:41  5:09  3:26  8:34

と更に速くなっています。

 

 

 第1楽章の冒頭のみはゆっくりしたテンポで始まりますが、その後はテンポを上げて、いきます。でもベートーヴェンの指示は「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」はですから要はこれぐらいなんでしょう。アバドはここでは楽器編成は従来どおりのフル・オーケストラ規模で演奏していますから、響きは重厚なままです。そういうちぐはぐな部分はありますが、室内楽での演奏では物足りなさを感じている人にとってはこの響きの充実は得難いものでしょう。ただ、この第1楽章のテンポは相対的には遅いもので、カラヤンやワルター、ブロムシュテットなんかは9分台で演奏しています。

 

 

 この演奏でちょっと不満に感じるのはこの第2楽章でしょうか。指示は「アンダンテ・モルト・モッソ」ですから歩く速さよりは遅いテンポを示しています。それからするともう少し遅くても、良いのかなぁと感じてしまいます。アバドは弦楽器のノンビブラート以外は管楽器に古楽器を使っているわけではないので、そういう部分では響きの齟齬を少し感じてしまいます。

 

 

 この3から5楽章の一連の音作りは成功しているように思います。まあ、標準的な演奏と言っていいでしょう。ただ各楽器可の音のバランスは2001年の録音のほうが良いと感じられます。第5楽章あたりはちょっとゴリ押しのような部分が感じられます。