京都のこころA to Z
―舞妓さんから喫茶店まで
著者 木村 衣有子
ポプラ社(2009/10発売)
京都通の著者が紹介する、いつ訪れても心地よい場所、気が利いていて、誰かにあげたくなるお土産。常連さんも一見さんも御用達、京都ガイドの決定版。
普通の旅行案内書で飽き足らない人にとってはこういうエッセイ的な紹介の本の方が価値があるというものでしょう。初めて京都に訪れる人には勧められません。「恵文社一乗寺店」の本棚、「梨木神社」のお守り、「南禅寺」、「お香」、「一澤帆布」の鞄、「鳥獣戯画」に描かれたうさぎ、上ル・下ル・西入ル・東入ル、「スマート珈琲店」のお土産などなど、ちょっとディープでそれでいていかにも京都らしいスポットの案内書になっています。タイトル通り、AからZまでのテーマに基づいた見どころが紹介されています。一応以下のような章立てになっています。
目次
ART『京都芸術センター』
BOOK『恵文社一乗寺店』の本棚
CUP『スマート珈琲店』のお土産
DOMOTO INSHO 堂本印象
E-HAGAKI 絵葉書
FUMI NO KO『嵩山堂はし本』の文乃香
GREEN 緑青色
HAGI『梨木神社』のお守り
ICHIZAWA HANPU『一沢帆布』の鞄
JYO-RAKU上洛
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と「Z」まで続くわけです。
筆者は8年間京都に住んでいたようで、はじめての一人暮らし・アルバイトそして恋愛をその間に体験したらしい。で、その後一度京都を離れ、東京へと移り住んでいるようです。この最も多感な時期を京都で過ごし、その後客観的視点から京都を見たというスタンスが絶妙にこの本の中で効いているように感じられます。小生も居住地から京都までは新幹線で最速で1時間ちょいですから、毎年のように訪れています。まあ、今年はこんな状況ですから行けていませんがね。このような、生まれてからずっとの京都でもなく、取材に訪れての京都でもないというその視座がすばらしく生きている本です。まあ、そこに女性としての感性もスパイスとして効いています。
ただ、男性が読んでもそれなりに感性がくすぐられます。最近は京都訪問も観光地巡りではなくねホテルを選んでその近辺の街中を歩くという方法で旅行ー楽しんでいます。バスはいつも満員ですし、地下鉄は限られたところしか行けません。そういう旅を楽しむにはこの本は最適です。項目としてはAーZの26しかありません。しかし、その一つ一つが深いんですなぁ。最後の「Z」では禅が取り上げられています。そこは東福寺の庭園です。まぁ。普通のガイドブックなら龍安寺の石庭が定番でしょう。しかし、京都は奥が深い、ここ東福寺の庭園は方丈を取り囲むように4つ、東西南北にあるんですなぁ。小生も行きましたよ、この本を読む前に。そして、この作者が京都で一番美しい庭が東福寺だと言っていることに納得です。小生は実際には紅葉の季節に行ったのですが、有名な紅葉よりもこちらの庭のほうが印象に残っています。歴史としては作庭は古くありません。昭和14年ですから。作庭家は重森三玲。
東/北斗七星
西/井田市松
南/八海、四仙島
北/小市松
この4つの庭をめぐりながら豊穣の時を過ごすことができました。
この本は2004年に発行され、現在は文庫本になっています。内容に改定があるかもしれませんか、この本からテーマを2つ3つ絞ってのディープな京都旅行をおすすめします。コロナが落ち着き、緊急事態宣言が解除されたら、またぜひ出掛けたいものです。