フィードラーの「大峡谷」 | geezenstacの森

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フィードラーの「大峡谷」

 

曲目/

1.グローフェ/組曲「大峡谷」(グランド・キャニオン)

 日の出/ 赤い砂漠/ 山道を行く/ 日没/ 豪雨

2.バーンスタイン/歌劇「キャンディード」〜序曲

3.ジャック・メイソン/オダリスク

4.ジャック・プレス/ジャズによるプレリュードとフーガ

 

指揮/アーサー・フィードラー

演奏/ボストン・ポップス管弦楽団

録音/1955

 

ビクター SRA-2160

 

 

 このレコードをゲットして久しぶりにグローフェの組曲「大峡谷」を聴きました。豪華な見開きジャケットです。このアーサー・フィードラー盤はこのレコードで初めて耳にしました。けだし名演です。この曲は昔から好きで、いろいろ集めてきました。下は全てではありませんが、この曲の主だった演奏です。

 

 

 

 

1945年  アルトゥーロ・トスカニーニ NBC交響楽団 

1954年  ファーディ・グローフェ/キャピトル交響楽団 

1955年  アーサー・フィードラー/ボストン・ポップス管弦楽団    

1956年  フェリックス・スラットキン/ハリウッド・ボウル交響楽団    

1957年  ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

1958年  ハワード・ハンソン/イーストマン・ロチぅスター管弦楽団

1959年  ファーディ・グローフェ/ロチェスター・フィルハーモニー管弦楽団

1960年  モートン・グールド/ヒズ・オーケストラ

1963年    バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック    

1963年  スタンリー・ブラック/ロンドン・フェスティバル管弦楽団

1977年  モーリス・アブラヴァネル/ユタ交響楽団

1982年    ドラティ/デトロイト交響楽団    

1982年  冨田勲/プラズマ・シンフォニー・オーケストラ

1985年    カンゼル/シンシナティ・ポップス管弦楽団    

1988年    ストロンバーグ/ボーンマス交響楽団

1991年  ロリン・マゼール/ピッツバーク交響楽団

2004年  スティーブン・リッチマン/ニューヨーク・ハーモニー・アンサンブル-ジャズ盤

 

 世の中の評価ではドラティ/デトロイト交響楽団の演奏の評価が高いようですが、世にこれだけの録音があるのですなぁ。小生はこの中で8枚ほど所有していますが、面白く聴けたのはほんの数種類です。

 

作曲者自身の指揮による演奏

 

 もともとこの曲はジャズのポール・ホワイトマン楽団を念頭に置いて作曲されたものだけに、ジャズイディオムが頻繁に登場します。演奏としてはそういった部分の原曲の持ち味を活かしたものと、純粋なクラシック作品としてのアプローチした演奏に分かれると思います。そういった意味ではこのフィードラー盤は、後者に位置するものでしょう。ステレオ効果のあるダイナミックな曲ですから、LPがモノラルからステレオに切り替わった時期にこの曲の録音は集中しています。面白いことに、アメリカのレコードメーカーはそれぞれに録音の音源がありますが、ヨーロッパ系のメーカーは全く見向きもしていません。英デッカはポップス系のスタンリー・ブラックの録音でなんとかカタログを埋めましたが、これもアメリカデッカ主導のフェイズ4の録音でしたから、ドラティが大評判となって力を入れたのも頷けます。

 

 

 面白いことに、作曲者自身の録音は前者に分類される演奏でそれほど面白いものではありません。先のドラティはこれも、どちらかというと前者に属します。しかし、音楽の作りは大きくトレーナーとしても立派で、面目躍如という意味ではバーンスタインよりも演奏は充実しています。ただ、コロムビアの録音では小生はオーマンディを買います。まあ、これはカップリング曲にもよるのでしょうが、手元にあるオーマンディの演奏はイギリス盤ということもあり、アルヴィーンの「スゥエーデン狂詩曲」が収録されているのです。こういう組み合わせは珍しいのですが、小生はこてこてにアメリカナイズされていないこの組み合わせが一番気に入っています。とくに終曲ではシンバルがド派手に鳴って嵐の雷をこれでもかという感じで演奏しています。これなんかは当時のジャズ的感覚での演奏でしょう。そういう意味では本当の雷の音をSEとして取り入れたカンゼルの演奏は実演ではありえない演奏なのでしょうが録音として楽しむには最高の演奏でしょう。

 

 

 前置きが長くなりましたが、このオリジナルのフィードラー盤は選曲が凝っています。バーンスタインの「キャンディード」序曲は当時としては全くの新作で、ブロードウェイで初演されたのは1956年の12月1日ということで、全くのできたてホヤホヤの録音ということができます。バーンスタインがこの曲を録音したのは1960年になってからですから、多分一番最初の録音ではないでしょうか。この曲、実際は作曲されてから何度も改定されています。バーンスタインはその最終稿で録音していると思いますから、ここで聴けるフィードラーの録音は改定前の初版による演奏でしょう。

 

 

 さらに、このアルバムにはジャック・メイソン/オダリスクとジャック・プレス/ジャズによるプレリュードとフーガが収録されています。フィードラーはリアルタイムで現代音楽まで取り上げる離れ業をやって退けています。このレコード、解説は故志鳥栄八郎氏が書いていますが、ジャック・プレスについては知らないと正直に書いています。ジャック・メイソンの方はボストン・ポップスのアレンジャー人の一人で、リチャード・ヘイマンやルロイ・アンダーソンらとともに活躍していました。ただ、どちらの人物もwikiで検索しても引っかかりません。もはや忘れられた存在なんでしょうかねぇ。