レスリー・ジョーンズのハイドン | geezenstacの森

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レスリー・ジョーンズのハイドン

 

ハイドン/

1.交響曲第31番 ニ長調 "ホルン信号" Hob.I-31

A1 Allegro 3:41

A2 Adagio 5:39

A3 Minuet 3:27

A4 Finale 6:25

2.交響曲第19番 ニ長調 Hob.I-19

A5 Allegro Molto 2:34

A6 Andante-Presto 4:36

交響曲第45番 嬰ヘ短調 "告別" Hob.I-45

B1 Allegro Assai 5:24

B2 Adagio 7:53

B3 Minuet 4:25

B4 Finale 8:50

 

指揮/レスリー・ジョーンズ

演奏/ロンドン・リトル・オーケストラ

 

録音:1964

 

NONEDSUCH H-71031

 

 

 このレコードも最近捕獲した一枚です。レスリー・ジョーンズは懐かしい名前です。このレスリー・ジョーンズのハイドンは2015年に一度このブログで一度取り上げています。日本ではこの指揮者については殆ど知られていません。それもそのはず、この指揮者のレコードは日本ではほとんど発売されていません。小生の知る限りでは廉価盤がブームになっていた時代にテイチクがイギリス「パイ」レーベルをライセンス販売していた時代にバルビローリの演奏と抱き合わせの1枚と、ワーナーパイオニアがノンサッチを直輸入して発売していたJ.C.バッハの交響曲集の1枚が発売されています。だ、こちらのシリーズは価格が1枚1,700円と中途半端だったのであまり売れなかったと記憶しています。

 

 今回取り上げる演奏も、アメリカ「NONESUCH」レーベルで発売されたものですが、このレーベルのハイドンのレコードは多くがこのレスリー・ジョーンズ/ロンドン・リトル・オーケストラの演奏が多数を占めています。そして、この一枚ははっきりと「PYE」レーベルのライセンス販売ということが表記されています。

 

 

 いろいろ調べると、最初はPYEが録音を開始して、最後はノンサッチがそれを引き継いだようです。当のレスリー・ジョーンズは最初は弁護として活躍していて、片手間でアマチュア音楽家としてオルガンを演奏していました。その後、引退すると1957年にロンドンでこのオーケストラを設立しています。ロンドンには優秀な演奏家が多く、このオーケストラにはフルートのジェームス・ゴルウエイやヴァイオリンのアラン・ラヴディなども参加していました。もともと録音用に結成されたオーケストラですが、時折コンサートも開催していたようです。

 

 

 最初に収録されているのは交響曲第31番 ニ長調 "ホルン信号"です。冒頭からいきなり4本のホルンが登場する賑やかな曲ですが、この部分を聞いただけでも腕利きのホルン奏者が集められているのがわかります。ハイドンの使えていたエステルハージ公

のオーケストラにホルン奏者が4名いたという時期に書かれた作品ということですが、室内オーケストラにホルン4本というのは贅沢な編成です。しかし、ハイドンはそういう特性をうまく生かした作品に仕上げていてホルン好きにはたまらない作品です。

 

 1960年代の演奏ということでは、取り立てて個性的という演奏ではありませんが、ジョーンズは手堅くまとめています。ホルンは中央に定位し、4つのホルンがうまく溶け合っています。第2楽章のアダージョでは、ヴァイオリン・ソロがいいから身を披露しています。初期の頃はロイヤ・フィルでもコンマスを務めていたレイモンド・コーエンがここでもコンマスを務めていたと言いますから多分彼ではないでしょうか。そういう名手たちの共演をここでは楽しむことができます。残念ながら、レスリー・ジョーンズのソースはYouTubeにはアップされていないようなので珍しい大町陽一郎氏がバンベルク交響楽団を指揮した映像が見つかりましたので貼り付けておきます。今は室内管弦楽団がこういうハイドンやモーツァルトの初期の交響曲を演奏しようとすると、ピリオド奏法がネックになって取り上げるのを躊躇してしまうようなところがありますが、小生などはカール・ミュンヒンガーやパイヤールの演奏でそれこそバロックから古典までの作品を親しんできていますから、むしろこういう演奏の方が懐かしさがあります。

 

 

 続いてレコードのA面に収められている第19番はメヌエットが省略されている3楽章で書かれた作品です。ただ、このレコードでは第2楽章と第3楽章は同じトラックに収録されています。こちらも冒頭からホルンが活躍するということで選曲されているのでしょうか。ただし、編成上はこの曲は2本のホルンです。レコードで聴いていると続けて演奏されているし調性がニ長調と同じなので、まるでこの2曲がセレナードの第5楽章のような感覚です。いい選曲と言えるのではないでしょうか。

 

 B面はおなじみの「告別」です。1960-70年代の演奏というとこういう演奏がほとんどでした。

 

 

 レスリー・ジョーンズのスタイルは小規模の編成で、ジョーンズ自身はキーボードを弾きながら指揮をしていたということですから、古楽器こそ使っていませんでしたが、後のホグウッドやピノックのスタイルの先鞭をつけていたということが言えるでしょう。

上は、有名なフィルハーモニア・フンガリカの演奏とは違うドラティの「告別」です。この旧録音のほうがレスリー・ジョーンズの演奏にスタイルが似ていますので貼り付けました。

 

 ジョーンズはハイドンの交響曲を約50曲録音を残しているといいます。「PYE」はEMIに吸収され、現在は「ワーナー」が原盤を所有していると思いますが、いつの日かこのレスリー・ジョーンズの遺産がボックスで発売されるといいんですがねぇ。