レスリー・ジョーンズ/ハイドン「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」 | geezenstacの森

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レスリー・ジョーンズ/ハイドン
「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」
 
曲目/ハイドン「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」
1.序奏 6:11
2.第1ソナタ 父よ、彼らを赦したまえ。彼らは自分で何をしているのか自分でも分かっていないのですから 6:30
3.第2ソナタ 真に私はあなたに言う。今日、あなたは私と共に天国にいるであろう 6:44
4.第3ソナタ 女よ、汝の息子を見よ 7:46
5.第4ソナタ 我が神よ、我が神よ、何ゆえ私を見捨て給うたのか? 6:56
6.第5ソナタ 私は渇く 7:44
7.第6ソナタ これで終わった  7:17
8.第7ソナタ 父よ、御手に魂を委ねます 7:48
9.地震 

 

指揮/レスリー・ジョーンズ
演奏/リトル・オーケストラ・オブ・ロンドン

 

録音/1968  the I. B. C. Sound Recording Studios, London 
P:Teresa Sterne

 

米NONSUCH H-71154

 

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 今回も取り上げるのはレコードです。このレコードは国内では発売されなかったものです。NONSUCHは米ワーナー/エレクトラグループの唯一のクラシックを扱うレーベルでした。しかし、そのソースの多くは海外メーカーからのライセンスを使用してカタログを埋めていました。日本ではコロムビアから発売されてムジディスクやコンサートホール、ドイツのオイロディスク等の原盤が多く利用されていました。その中で、多分このレスリー・ジョーンズ/リトル・オーケストラ・オブ・ロンドンのものは、ジャケットにはライセンスの表記が見受けられませんが、多分イギリス「PYE」との共同制作による録音ではないでしょうか。とはいっても、このレスリー・ジョーンズの指揮するレコードはイギリスではこのパイやGUILDといった所から発売されていました。

 

 多分、レスリー・ジョーンズという指揮者については日本ではまったく紹介されていないのではないでしょうか。小生も、彼の名前を初めて目にしたのはこのレコードが最初でした。しかし、当時NONSUCHには既にハイドンの交響曲をかなり録音していました。NONSUCHからはパリ交響曲セットが3枚組で出ていましたし、ロンドンセットも着々と録音していました。イギリスの指揮者兼オルガニストだという情報以外は詳しいことは分りません。1960年代中頃から1970年代中期にかけて、このオーケストラを組織してロンドンで活躍していました。ハイドンの作品を集中的に録音していたようで、なんでも、チェンバロやコンティヌオを最初にハイドンの演奏に導入したとかいう話です。

 

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 レスリー・ジョーンズと奥さん

 

 大手には録音していなかったということで、まともなCDとしては復活していないようです。ネットで引っ掛かるのはLPからの盤起こしのもののようで、余りいい状態のものはありません。室内オーケスとの演奏ということではすっきりとした見通しの良い演奏で、こういう演奏の走りであった様な気がします。その彼らの演奏から交響曲第101番「時計」の第2楽章です。

 

 

 さて、そんな彼らが交響曲以外のハイドンの曲を録音していたのですから驚きです。それがここで取り上げている「十字架上の七つの言葉」です。この曲については先にアントニオ・ヤニグロ/ザグレブ室内管弦楽団のCDを取り上げています。そこでも書きましたが、このレコードがこのハイドンの作品に出会った最初です。もちろん、当時はハイドンにこんな作品があることなどまったく知りませんでした。未知の演奏者と未知の曲の取り合わせ、そして、マイナーなノンサッチというレーベル、すべてが新鮮でした。そして、小生の手にしたレコードはファクトシールドがされていて、その上に一枚の「RECORDS ARE YOUR BEST ENTERTAIMENT VALU」というシールが貼られていました。日本でいう所の帯広告みたいなもんでしょう。それに惹かれてかったのを覚えています。ジャケットの7人のキリストが磔にされているデザインもインパクトがありました。

 

 ハイドンは余程この曲が気に入っていたのかオリジナルの管弦楽曲版を作曲した後、声楽をともなったオラトリオ版、そして、得意の弦楽四重奏曲版も書いています。用意された7つの楽章は曲の性格上すべて緩徐楽章になっています。7つのことばを瞑想するにふさわしいようにラルゴ(Largo)、レント(Lent)というゆっくりとしたテンポで、しかもレクイエムの定番であるニ短調で書かれています。速度変化に乏しい音楽を延々と続けることは、交響曲の父とまでいわれるハイドンにとっても困難なことではなかったでしょうか。まあ、そういうこともあってか余り演奏されることはありません。ましてや、キリスト教国ではない我が国に於いてはなおさらでしょう。

 

 そう言えば、今年の「ラ・フォル・ジュネル・オ・ジャポン」ではこの曲が取り上げられていました。ケラー弦楽四重奏団が室内楽版、シルヴァン・ブラッセルがハープ版、ジャン=クロード・ペヌティエがピアノ版で聴かせてくれましたので、視聴した人はかなりいるのではないでしょうか。でも、これだけの音楽祭でも、オーケストラ版は演奏されなかったのですなぁ。残念です。しかし、オーケストラ版は序章からハイドンの音楽は聴く人を惹き付けます。

 

 

 アントニ・ロス・マルバ/カタロニア室内管弦楽団

 純粋なオーケストラ版の演奏は中々ありません。そんな中で、このレスリー・ジョーンズ盤とほぼ同時期に録音され立てるのがこのシャルラン盤のアントニ・ロス・マルバ/カタロニア室内管弦楽団の演奏です。
 
 レスリー・ジョーンズの指揮はもう少し淡々としていて、奇をてらった所が無く、朴訥としながら淡々とキリストの受難を描いていきます。しかし、レスリー・ジョーンズ/リトル・オーケストラ・オブ・ロンドンのハイドンの交響曲はCD化されていますが、残念ながらこの「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」はCD化されていません。今でもレコードで聴くしか方法はなさそうです。