王のための交響曲 | geezenstacの森

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王のための交響曲

 

曲目/

ヨーゼフ・マルティン・クラウス

Symphony In C Minor (For Gustavus III Of Sweden) 22:58

A1 Larghetto: Allegro 10:22

A2 Andante 6:07

A3 Allegro Assai 6:20

 

Gaetano Brunetti

Symphony No. 23 In F Major (For Charles IV Of Spain) 21:37

B1 Allegro 7:46

B2 Larghetto Amoroso 6:15

B3 Quintetto: Allegro 3:12

B4 Finale: Allegro 4:09

 

指揮:ニウェル・ジェンキンス

演奏:ミラノ・アンジェリクム管弦楽団

P:テレサ・スターン

録音:1966、ミラノ・アンジェリクム

初出/1967

 

ノンサッチ H-71156

 

 

 最近散財で入手したノンサッチのアルバムの一枚です。A面はヨーゼフ・マルティン・クラウス、今ではナクソスから交響曲全集が発売されていますが、CD時代になるまではほぼ忘れられた作曲家と言っていいでしょう。wikiによると現在12曲ほどが知られているといいます。このレコードに収録されているのは1783年に作曲された交響曲 ハ短調(1783年)VB142のことです。実はこの作品、VB140からメヌエットを削除して移調・改作されたもので、同年にハイドンに献呈されています。ということはハイドン、モーツァルト時代の作品ということができます。実際、スウェーデンのモーツァルト」と呼ばれているということがwikiに書かれています。ノンサッチはクラシックレコードの廉価版の先駆けで、マイナーレーベルの一本街の形でカタログを充実させていましたが、この一枚はノンサッチのオリジナル録音です。そういうこともあり、調べるとこのアルバム、ワーナーパイオニアの時代に国内版として発売されていたことがわかりました。タイトルは「国王のための交響曲集」で、G-5061というカタログ番号でした。多分1970年代中頃の発売だと思います。

 

  • 交響曲 ハ長調 「バイオリン・オブリガート」(1780年)VB138
  • 交響曲 ハ長調(1781年)VB139
  • 交響曲 嬰ハ短調(1782年)VB140
  • 交響曲 ホ短調(1783年)VB141
  • 交響曲 ハ短調(1783年)VB142
  • 交響曲 ニ長調(?)VB143
  • 交響曲 変ホ長調(1783年)VB144
  • 交響曲 ヘ長調(1786年)VB145
  • 交響曲 ニ長調 「教会のための交響曲」(1789年)VB146
  • 教会交響曲 ニ短調 VB147
  • 交響曲 ハ短調 「葬送交響曲」(1792年)VB148

 

 曲は3楽章形式です。ちなみにほとんどの作品が3楽章形式で作曲されています。メヌエットの必要性をクラウスは感じなかったのでしょうなぁ。

 

 

 曲は弦楽合奏の静かなストリングスで開始されます。まさに短調の曲というイメージです。その序奏が終わるとアレグロの主部に入りますが、響き的には室内管弦楽団の規模で演奏されるレベルで、モーツァルトの中期の交響曲の響きです。曲はハイドンに献呈されていますが、レコードのジャケットにはこの曲はスウェーデンのグスタフ三世のために書かれた作品ということが書かれています。そんなことで、このアルバムに収められたのでしょう。ちなみにVB148のハ短調の交響曲はそのグスタフ三世の葬送のための曲となっています。

 

 

 B面のガエターノ・ブルネッティはスペインブルボン朝のカルロス3世ならびに4世治下で活躍したイタリア人作曲家です。この曲はそのカルロス四世に献呈されています。宮廷楽団のヴァイオリン奏者として活躍し450曲以上の作品を残しています。交響曲も37曲作曲していて、この作品が第23番というわけです。彼の曲でもう一曲知られたものをあげるとしたら第33番で、当時のボッケリーニと対立したことから作曲されたこの曲は「変人」というタイトルが付けられています。長調ですから、明るい旋律で第1楽章冒頭からリズムが弾けます。初期古典派音楽の形式や慣習を踏襲し、優美な旋律と周期的なフレーズが特徴となっています。強弱の鋭い対比、突然の転調といった要素が曲の変化を彩、飽きさせません。個人的にはこちらのブルネッティの作品の方が楽しめました。

 

 

 どちらの曲もオリジナルソースとしてはYouTubeにはありませんでしたが、曲としてはアップされていますので両曲とも貼り付けてあります。

 

 ここで指揮をしているニウェル・ジェンキンスはアメリカの指揮者でバロック期から古典派までを得意とした指揮者です。ジェンキンスはここで取り上げているイタリア音楽で、特にジョバンニ・バッティスタ・サンマルティーニ、ガエターノ・ブルネッティ、シモーネ・マイヤーが専門でした。特に彼はブルネッティの交響曲のいくつかの版と、サンマルティーニの音楽の校訂譜を出版しています。1996年、ニューヨークで没。

 

 演奏団体のミラノ・アンジェリクム管弦楽団は懐かしい名前です。シャルランレコードでアルド・チェッカートの指揮したヴイヴァルディの「四季」を所有しています。アバドもデビュー当時はこのオーケストラを指揮して、ローマ合奏団でも活躍したフランコ・グッリを独奏としたタルティーニのヴァイオリン協奏曲のレコードなども出していました。この楽団現在でも活躍しているのでしょうかねぇ。