4月の散財 2
フルトヴェングラーの戦時下のブラームス/交響曲第4番
曲目/
ブラームス/交響曲第4番ホ短調Op.98
1.第1楽章 Allegro non troppo 12:19
2.第2楽章 Andante moderato 12:34
3.第3楽章 Allegro giocoso 6:20
4.第4楽章 Allegro energico e passionato 9:28
指揮/ウィルヘルム・フルトヴェングラー
演奏/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1943/12/12-15 フィルハーモニー・ザール
フォンタナ FCM−54(M)
このレコードは発売当時全く興味がありませんでした。もともとフルトヴェングラー自体にそれほど魅力を感じていなかったこともありますが、何より、ステレオ時代に今更モノラルのレコードを聴くということに抵抗感があったことも確かです。時代的には1970年代当初は4channelブームでしたからねぇ。我が家も長岡鉄男氏の提案したスピーカーマトリックス4channelを構築していました。
そうはいっても、毎月レコ芸を読んでいましたからフルトヴェングラーを無視していたわけではありません。米ターナバウトから発売された俗に言うウラニアの「エロイカ」も持っていました。当時は音源が見つからなかったベートーヴェンの交響曲第8番も英ユニコーン盤も所有していました。ただ、全く感動しなかったことも事実です。
今回入手した音源は、1973年に発売された「フルトヴェングラー・ライブ・レコーディング・シリーズ」の一枚です。んなものが発売されていたことも記憶にありませんでした。ただ、最近FMでこの音源が放送されたのを聴いていて、ながら聴きでしたが、甚く引き込まれた自分がいました。そんなことで頭の片隅に残っていたのがこの演奏でした。それが、期せずして目の前にあるではありませんか。迷わず抱え込みです。
調べると、この録音1942年よりフルトヴェングラー指揮の演奏会が全欧に向け放送されるようになり、ドイツ帝国放送局がコンサートのライヴ録音や聴衆不在の通し録音を行いました。これはその“戦中のマグネットフォン録音” として有名なものです。音質自体は、76cm/秒速のテープにメインマイク1本によるワンポイント録音と、アナログ・テープ録音方式としては理想的といってよいかもしれません。これらの録音テープは終戦後ソ連に持ち帰られ、露メロディアからLPが発売されました。一時はこれらは幻の録音と言われたものです。
さて、小生の手元には今フルトヴェングラーに関しては、「フルトヴェングラー・レガシー」という107枚組のものがありますが、そこに収録されているのは1950年のウィーンフィルとのものです。ということで、この演奏は手持ちではありませんでした。この入手もラッキーだったと言っていいでしょう。巷の評価では、フルトヴェングラー最良の第4という評価です。
まず、音質がいいのにびっくりしました。先にも書いてあるように“戦中のマグネットフォン録音”ということで、1950年代のモノラル録音となんら遜色がないということです。ライブということで聴衆のノイズはありますが、聴き進むにつれてそんなことは全く気にならなくなってきます。
ブラームスの交響曲は第1番以外は好んで聴くことはあまりないのですが、この演奏はレコードの上に針を落とすと一気に聴き進めてしまいました。ライブということもあるのでしょうが、このフォンタナ盤はトラックの切れ目があまりはっきりカッティングされていません。
聴けばわかるのですが、この演奏の第一楽章は手持ちのウィーンフィルと比べても30秒ほど早くなっています。それだけ一気呵成にこの演奏は突き進んでいきます。アレグロですが何か悲壮感を感じます。CDしか聴かない人には分からないかもしれませんが、レコードで聴く音はワンポイントで収録された音を温かみのある音色とともに余すところなくスピーカーから放出して、我が家のリスニングルームを包んでくれます。
よく聴くと、前半2楽章と後半の楽章と微妙に音質が違います。このコンサートは複数日行われていますから編集されている可能性がありますが、ベストテイクでまとめられているとすればベスト中のベストと言えます。