ヨッフムの「ロマンティック」 | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

ヨッフムの「ロマンティック」

 

曲目/ブルックナー

交響曲第4番変ホ長調WAB104「ロマンティック」(1886 version, ed. L. Nowak)

I. Bewegt, nicht zu schnell

II. Andante quasi allegretto

III. Scherzo: Bewegt

IV. Finale: Bewegt, doch nicht zu schnell

 

指揮/オイゲン・ヨッフム

演奏/ドレスデン・シュターツカペレ

録音:1975/12/01−07 聖ルカ教会、ドレスデン

P:ダヴィッド・モットレー

E:クラウス・ストルーベン

 

 

 1970年代は重厚長大な曲が好まれた時代でした。その筆頭がブルックナーであり、マーラーでした。この時代にベストセラーになったのはベーム/ウィーンフィルの「ロマンティック」でした。もちろん小生もそれにはまりましたが、それ以前にハイティンクのブルックナーを追っかけていました。そして、最後にはこの全集を手に入れました。これがブルックナーの交響曲全集の最初のものです。その後、ヨッフムが全集を録音したということでEMIの全集を購入しています。CD時代になってからはスクロヴァチェフスキー、ロベルト・パーテルノストロ、ダニエル・バレンボイムと揃えることになりました。しかし、プームのもう一つの雄マーラーに関してはさっぱり興味がわかず、現在でも全集で所有しているのはバーンスタイン/ニューヨークフィルの旧録音とクラウス・テンシュテットぐらいで、あとはブリリアントの複数指揮者の全集ぐらいです。

 

 ここで取り上げるのはCD化されたものです。というのもレコード時代のEMIの音は我が家のオーディオシステムとあまり相性が良くなかったのか平板な音であまりいい印象が残っていませんでした。それがCD時代になってから改めてこの演奏を聴くと、非常にふくよかな音で、低音も十分伸びていてその違いにびっくりしたものです。

 

 ネットで調べてみるとレコード時代のEMI(小生の所有していたのは英EMI盤です)は、レコードの標準となったRIAAカーブを採用せずに長らくColumbiaカーブを採用していたようなのです。そういえば昔は英EMIとColumbiaは提携していましたからねぇ。ひょっとするとイギリスのデッカもRIAAには最後まで準拠していなかったのかもしれません。なにしろ、アメリカのRCAが決めたカーブですからねぇ。

 

 それはさて置き、ヨッフムの「ロマンティック」です。何回も聴いていると、第1楽章だけ音質がちょっと違うことに気がつきます。高音と低音のバランスが悪いのです。さらに、テープの編集が杜撰なのか全く音質が変わる場面があります。ヘッドフォンで聴くとそれが如実に分かります。この録音、当時は東独のシャルプラッテンとの共同制作というのが謳われていますが、その齟齬という部分がちょっと顔を出した録音ではないでしょうか。

 

 なので、この第1楽章だけはちょっといただけません。これはやはり、カールベム/ウィーンフィルには及ばない部分でしょう。

 

 しかし、第2楽章からは見違えるような怪演が繰り広げられます。決して威張っていたり、肩肘張ったりしている訳ではなく、ヨッフムの温厚な性格が、演奏にゆとりと敬虔さが充満しています。宗教音楽も得意としていたヨッフムですが、ここでは自然体で、ブルックナーのスコアをそのまま音にしています。

 

 スケルツォの第3楽章は、いい意味でオーケストラを手中に収めて束の間の喜びを思う存分表現しています。同じ金管の鳴らせ方なのでしょうが、こちらの方が余裕のある響きになっています。

 

 総集編ともいうべき第4楽章は音楽のシャワーが天井から降り注ぐような豊僥なサウンドが炸裂します。ヨッフムが2回目のブルックナー全集の録音にドレスデン・シュターツカペレを選んだ答えがここにあります。当時のシュターツカペレは燻し銀の響きと言われていましたが、そのサウンドをこの楽章で体験できます。ピアニシモでの静寂の緊張感も秀逸ですが、フルパワーの全奏でも、その片鱗を聴くことができます。

 

 

 オーケストラの自発性に任せながらあくまでも自然体でまとめあげる力量は大したものです。ヨッフムはベートーヴェンの交響曲全集も3回録音していますが、オーケストラとの相性を考えると2回目のコンセルトヘボウとの録音が一番充実していると考えます。