2台のピアノで奏でるホルストの「惑星」
ホルスト/組曲「惑星」
1.Mars 6:14
2.Venus 6:59
3.Mercury 3:34
4.Jupiter 6:59
5.Saturn 7:16
6.Uranus 6:11
7.Neptune 5:75
ピアノ/ダヴィッド・ネッテル、リチャード・マーカム
録音:1984/11/6-8 聖ジュード教会、ハムステッド・ガーデン郊外、イギリス
E: Colin Beer
P: Nicholas Dicker
Saga Classics – EC 3346-2
SAGAというのはオランダのレーベルで、レコード時代は自社録音とライセンス物で廉価盤を発売していたレーベルです。この録音も同じオランダの「Emergo Classics」のライセンス物です。
この演奏、最初はレコードで所有していましたが今ではとっくにオークションで処分してしまいました。もともと、小生はレコード派だったのですが、どうも器楽曲はレコードで聞くことを好みませんでした。レコードの特性としてパチパチノイズやワウフラッターの発生が器楽曲の特にピアノでは目立ち、それが耳障りでした。ところが、CD時代になってピアノの演奏をCDプレーヤーて聴いた時、ノイズは聴こえないし音の揺れも発生しませんでした。その音に感動して、レコードからCDにシフトした訳です。ですから、CDを買い出した初期はクラシックは器楽曲を中心に集めました。ここで聴くこの演奏も、そういう流れの中でCDで買い直したものです。
さて、ホルストの「惑星」は当初はピアノ作品として作曲されました。そのあたりのことはwikiに詳しいので転載します。
{{{まず「海王星」以外の6曲はピアノ・デュオのために、「海王星」はオルガンのために作曲された。 1914年に「火星」(8月以前)、「金星」(秋)、「木星」(年末)が作曲され、 1915年には「土星」(夏)、「天王星」(8月頃)、「海王星」(秋)が、そして1916年初頭に「水星」が作曲された。}}}
「水星」が一番最後に作曲されたとは知りませんでした。その曲が組曲では3番目に配置されているのも面白いところです。この「火星」と「水星」の位置が入れ替わっているのは、最初の4曲を交響曲の「急、緩、舞、急」のような配列にするためだと言われています。
このダヴィッド・ネッテル、リチャード・マーカムのデュオによる演奏は、ホルストの構想通りの演奏で期待に応えてくれています。最初の「火星」は重厚な響きを求めてややゆっくり目に演奏しているものが多いのですが、彼らはやや早めのテンポで疾駆していきます。それが戦争のシンボルであることを強調しているようにも見えます。
第2楽章の「金星」はそれとは対照的にゆったりとしたテンポで第1楽章との対比が生きています。中間部はまた、キラキラと輝くようなピアニズムで「ヴィーナス」の存在を際立たせています。うまい演出です。
第3楽章の「彗星」はスケルツォの扱いなんでしょうなぁ。一番短い曲ですが、交響曲のコーダへのつなぎの構成という意味では曲をビシッと締めています。
一番有名な「木星」はそれこそ交響曲の第1部を締めるのにふさわしい曲です。ホルストのオーケストレーションされた作品としては、この組曲「惑星」は最高の作品なんでしょうが、この曲のオリジナルがピアノデュオ・バージョンであることはもっと良く知られてもいいのではないでしょうかねぇ。
ダヴィッド・ネッテル、リチャード・マーカムはともにイギリスのピアニストということでは最もよくホルストを理解している演奏と言ってもいいのではないでしょうか。
ただ、このCD日本での発売窓口がないせいかほとんど知られていないのが残念です。タワーレコードあたりが再発してくれると嬉しいんですけどねぇ。