封印作品の謎 テレビアニメ・特撮編 | geezenstacの森

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封印作品の謎

テレビアニメ・特撮編

 

著者:安藤 健二

発行:彩図社

 

 ネット時代に注目を集めているのに語ることがタブーになっている封印作品たち、それを真っ向から取材し、封印されている理由を明らかにする。

「ウルトラセブン 12話」

「怪奇大作戦 24話」

「ノストラダムスの大予言」

「サンダーマスク」

「日テレ版 ドラえもん」

封印作品の謎にジャーナリストが迫る! 

ベストセラー「封印作品の謎」「封印作品の闇」「封印作品の憂鬱」からエピソードを厳選した決定版が遂に文庫化! ---データベース---

 

 この文庫本版はそれまでの著者の作品の内、テレビアニメと特撮作品に絞ったものとなっています。取り上げられている封印作品は、全部で5つとかなり少ない数字になっています。その分、一つの作品あたりのボリュームが多くなっています。緻密な取材で、封印の真相に迫っていく力作です。5作品(ウルトラセブン12話、怪奇大作戦24話、ノストラダムスの大予言、サンダーマスク、日本テレビ版ドラえもん)を取り上げ、3作品は「事なかれ主義」による封印、2作品は権利関係トラブルによる封印でした。特に映像配給会社側の「臭いものに蓋」という経営姿勢により、3作品は封印されていることには腹立たしく思いました。

 

 それぞれの記事では、“こんな作品が今見られない”で終わるのではなく、そこからスタートして、いつごろから、封印された理由や経緯を当時の関係者もしくは関係団体へのインタビュー、当時の新聞などの一次資料を基にまとめていきます。この本の特長であり面白さは、筆者はどちらかといえば封印そのものには反対の気持ちをもっているのに、その気持ちをおさえて、規制をかけようとする側と、規制をかけたがらない側の双方の論理を、いわば「その人の気持ちや理屈」にたって紹介しているてんでしょう。

 

 個人的に驚いたのは冒頭のウルトラセブンで、作品的にはウルトラマンの後輪次いだ作品ですが、時代的にはまだビデオというものの存在が一般的ではない時代の作品です。そして、この作品の再放送はビデオが普及される時代にはもう封印されているということです。それでも、丹念に映像を探していくと、どこからか発掘出来るという作者の執念を感じます。そして、この「ウルトラセブン 12話」についてはなんと、宮崎勉が登場しているのです。事件当時もお宅であったことは覚えていますが、この封印された作品の近ルートでの流通には彼が絡んでいたという事実には驚きました。wikiによると

{{{宮﨑 勤は日本のシリアルキラーであり、誘拐、わいせつ犯である。1988年から1989年まで4人の幼女を誘拐、殺害した。東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の容疑者として逮捕・起訴され、死刑判決が確定し、刑死した人物である。}}}

と紹介されています。

 

宮崎勉の部屋

 

 今では放送禁止の差別用語、著作物の権利関係、版権元の自主規制など様々な側面が浮き彫りにされていきます。どちらの側にも一定の説得力があり、読者はそれぞれの論理にそれなりに説得されます。その結果、自主規制がどのようなメカニズムと合力でつくられていくのかを、実に見事に浮き彫りにされていく様をかいま見ることができます。

 

 ネット上の噂話や、二次資料に頼らず、丁寧に関係者/団体のコメント(取材拒否というのも含めて)を集め、裏づけとなる一次資料を探す姿勢は、扱っているテーマのキワモノさを超えて、プロフェッショナルな仕事とはこのようなことなのかな、と思わせてくれます。作者は極めてマニアックなテーマのため、会社を辞めフリーの立場でジャーナリストとして切り込んでいきますが、その自立に苦悩します。

 

 それにしても、名の通った一流の「円谷プロ」、ガンダムの「創通エージェンシー」、「日本テレビ」までもがこういう泥とろの世界に亜しわ突っ込んでいるというところがショックでした。全く記憶になかったのですが、「ドラえもん」は最初は日本テレビで制作されていたことをこの本で初めて知りました。しかし、そのテレビアニメ作りの陰には大人のどろどろとした事情がからみあい、尚且つ作者の藤子不二雄氏の与り知らないところで番組がスタートし、たったの26話で番組が打ち切られていたことの顛末には驚きました。

 

 内容が内容だけに大手の出版社からは発売出来ない内容を含んでいることもあり、彩図社というあまり聞き慣れない出版社から出ていることもあり殆ど書店で見かけることはない本ですが、一つのテーマに沿って事実を積み上げて結論に至る過程を描いたノンフィクションとしてお勧めできます。