ナクソス 最初のシベリウス交響曲全集
エイドリアン・リーパー/スロヴァキア・フィルハーモニー
曲目/シベリウス
Symphony #3 In C, Op. 52
1. Allegro Moderato 10:14
2. Andantino Con Moto, Quasi Allegretto 7:53
3. Moderato, Allegro 8:45
Symphony #4 In A Minor, Op. 63
1. Tempo Molto Moderato, Quasi Adagio 9:46
2. Allegro Molto Vivace 4:50
3. Tempo Largo 11:03
4. Allegro 9:31
指揮/エイドリアン・リーパー
演奏/スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団
P:マーティン・サウアー
録音:1990/09/21,23 スロヴァキアフィル・コンサートホール
NAXOS 8.550199
個人的にシベリウスの交響曲全集CDで最初に購入したのはナクソスから発売されていたこのエイドリアン・リーパー/スロヴァキア・フィルハーモニーのものでした。初期のナクソスはカタログの充実のために積極的に通俗作品を録音していました。そして、全曲が揃うと単売CDをそのままボックスに纏めてさらに価格を下げて販売していました。
この頃は1番、2番が気に入っていて、そちらの方をよく聴いていたのですが、その辺りは名盤が多いのでこのリーパーの演奏は可もなし不可もなしといった印象でした。
最近ナクソスの記事を取り上げた時、CDラックを眺めていて改めてこの全集が架蔵してあることに気がつきました。で、最近一番聴いている第3番を取り出して聴いてみることににしました。
今まで、手持ちの中ではマゼール/デトロイト響の演奏が一番好きだったのですが、その印象に一番近く感じたのがこのリーパー盤でした。
第1楽章は、ややゆったり目なテンポで始まります。スコアを確認すると3拍目から開始されるんですなぁ。元々この楽章の冒頭低弦により提示される第1主題は、リズミカルな主題で、かつてイギリスを訪問した時に沿岸から見た霧に煙るイギリスの様子にインスパイアされたともいわれています。何となれば、自身の指揮するイギリスのロイヤルフィルとの演奏会で披露するために構想された物でした。それまでのロマン派的拡大傾向から一転、「50人以上で演奏される必要はない」(作曲者)という古典的な編成のもと、透明な空気感と豊穣な響きが見事に実現されています。そのため、1番、2番のような重厚さを求めていない点がこのスロヴァキアフィルの本来の編成なのでしょう。バランスのとれたサウンドで展開されています。
そのため、室内楽的な響きでありながらけっこうダイナミックにテンポをゆらしていてロマンティックな表現になっています。
こちらも、しっとりとした落ち着きのある室内楽的な響きで、第1楽章との連続性を感じることができます。
シベリウスの交響曲第3番は変則的な3楽章構成で、それまでの作品との違いがはっきりしています。第3楽章は前半の舞曲風スケルツォの部分を経てから後半はそれにコラール主題が重なり合って高揚していきます。ところがこの曲には第4楽章は無く、これで終わってしまいます。まあ、金管の奏でるコラールの部分が第4楽章といえなくもないのですが、壮大な1、2番に比べるとこじんまりとした室内楽的な作品です。ただ、個人的にはコーダがちょっとあっさりしていると感じなくもありません。このコーダだけはもう少しためを作って演奏してほしかったところです。
ただ、このリーパー、初期はナクソス、その後はアルテ・ノヴァとスロヴゥキア・フィル、アイルランド国立交響楽団自身が音楽監督を務めたグラン・カナリア・フィルハーモニーとも大量の録音を残しています。2016年には来日して、兵庫芸術文化センター .管弦楽団を指揮しています..