サヴァリッシュの「軍隊」 | geezenstacの森

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サヴァリッシュの「軍隊」

 

曲目/ハイドン

交響曲第100番ト長調Hob.I:100「軍隊」

1.Adagio - Allegro   8:11

2.Allegretto 5:08

3.Menuet (Moderato)  5:24

4.Finale (Presto) 5:18

 

指揮/ウォルフガング・サヴァリツシュ

演奏/ウィーン交響楽団

 

録音/1961、ウィーン

フィリップス SFL-3563

 

 

 

 このレコードが発売された当時は、多分カラヤンよりもサヴアリッシユを聴いていたと思います。何しろNHK交響楽団に頻繁に客演し、NHKでそのコンサートの模様をすべからく放送していましたからねぇ。

 

 また、当時はサヴァリッシュの人気にカラヤンがやっかみ、ベルリンフィルやウィーンフィルからサヴァリッシュを締め出していたということが真しやかに噂されていました。まあ、実歳にも80年代中旬の雪解けに多少なりのコンサートが持たれたという事実はありますが、70年代までは事実でした。このころはバーンスタインも部゛ルリンフィルには呼ばれていませんでしたからねぇ。当時はカラヤンの了見の狭さにヘキヘキしてよりアンチカラヤンになったいた気がします。

 

 

 さて、このサヴァリッシュのハイドン。当時唯一所有していたハイドンの交響曲でした。当時のサヴァリッシュの評価はN響アワーで解説をしていた大木正興氏の「謹厳実直」という評価が全てを表していたような気がします。サヴァリッシュはここではウィーンフィルのライバルとでもいうべきウィーン響を指揮しています。個人的にも、ウィーン響は唯一生で聴いたウィーンのオーケストラです。それもあり、サヴァリッシュがウィーン響を指揮しているということでもとても興味のあった演奏です。

 

 サヴァリッシュの演奏は、一言で言えば生真面目で端正ということでしょうか。遊びはありません。まあ、そういう点ではハイドン的なユーモアは感じられませんが、曲を知るということではハイドンの書式をきっちりと音にしていますので過不足はありません。

 

 古典的な作風の曲ですから序奏つきの第1楽章の冒頭は地味です。が、第1主題が始まると、急に雰囲気が変わりインテンポで華麗にオーケストラを鳴らしていきます。古楽器による演奏のような華やかさはありませんが、主部は流麗なオケに一段とエネルギーが宿っていくのがわかります。今となっては録音の鮮明さはほどほどながら柔らかく響き合うオケに力が入っていきます。メロディーラインをくっきりと浮き上がらせ、アクセントをはっきりつけていて、が非常にわかりやすく響きます。そういう意味では、カラヤンの演奏よりある意味スタイリッシュで若々しい演奏です。

 

 ニックネームの「軍隊」由来となった行進の場面の2楽章。このころの巨匠と呼ばれたベームやクレンペラーなどはかなり遅いテンポで演奏していましたが、サヴァリッシュはきっちりとallegrettoで快活なテンポでグイグイと前進していきます。このさらりとしながらも彫りの深い、ダイナミックな響きを聴かせるのはサヴァリッシュならではでしょう。確かにトランペットが活躍する楽章ですが、金管軍も見事にコントロールされていて、隠し味的に支えているホルンもいい仕事をしています。タブこのころはホルン主席はフランツ・バウアー・トイスルが吹いていると思いますが、いい仕事をしています。


 続くメヌエットもじわりと重なるドイツ的な音の塊がテンポ良く流れてくる音楽に圧倒されます。続くフィナーレも快活なテンポで力強く開始されます。派手な鳴りものは控えめにしてティンパニが主体に活躍、響きの骨格はドイツ的重厚さにあるんですが、軽やかなメロディーラインに乗っているせいかやはりスタイリッシュな印象が加わり、軍隊のクライマックスに相応しい歌い回しで、見事にオーケストラをコントロールしています。

 

 こんな素晴らしいハイドンをサヴァリッシュは披露しているにも関わらず、フィリップスはこの後ハイドンのセッションを組んでいないのが残念です。