名フィル第474回演奏会「舞踏の傑作」 | geezenstacの森

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名フィル第474回演奏会
「舞踏の傑作」
 
 12月6日にシルヴァン・カンブルランが名フィルを振るということだったので出かけてきました。この回のテーマは「舞踏の傑作」ということで、踊りの音楽です。踊りといえばバレエですが、名フィルのプログラムは少々凝っています。
 
 通常はチャイコフスキーとかハチャトゥリアン、プロコフィエフあたりが選ばれるのでしょうが、今回はフランスから一人、ロシアからひとれ選ばれています。それもちょいと一捻りある選曲です。
 
 
 コンサートに先立ち恒例のウェルカムコンサートです。今回は舞踏の音楽ということでウィーンの大作曲家ヨハン・シュトラウスの「ウィーンの森の物語」の弦楽五重奏版が演奏されました。
 
 
 コンサートの最初はデュカスの「ラ・ペリ」です。デュカスといえば、「魔法使いの弟子」でしょうが、意外とこの曲も聴いていると思います。曲の最初のバレエに先立つファンファーレは金管楽器だけで演奏することから、金管アンサンブルの演奏会をはじめ、交響楽団の演奏会のプログラムに取り上げられることもあり、各種式典において単独で演奏されることがしばしばです。

 

 

 全曲は結構長く20分以上の作品です。カンブルランは初めて実演を聞く指揮者ですが、さすが読響を引っ張り上げてきた指揮者です。そして、今回は同じフランス人のデュカスの作品です。現代物を得意とすることもあって、実に明快な音楽作りで、魔法使いだけではないデュカスの魅力を存分に堪能させてくれました。

 

 同じフランス人指揮者のデュトワの演奏で聴いてみましょう。

 

 

 そういえば最近デュトワはどうしちゃったんでしょう。セクハラ騒ぎで、どこのオケも常任を解いたようで、たまに客演で演奏するぐらいになっているようです。

 

 2曲目は、今回も世界初演の作品を聴くことができました。名フィルの「コンポーザー・イン・レジデンス」となっている酒井健治氏への委嘱新作で「「ヴィジョンーガブリエーレ・ダンヌンツィオに基づいて」というカウンター・テナーをソリストとした3楽章のオーケストラ作品でした。

 

第1楽章 暁は光と闇を分かつ

第2楽章 松林の雨

第3楽章 風が描く

 

という構成になっていました。通常第1楽章がメインになるように書かれるのが普通ですが、この作品は第2楽章が全体の8割を占めるパートとして作曲されています。取り上げられている詩は、ドビュッシーとも親交のあったイタリア人のダンヌンツィオで他にはレスピーギやトスティなどが彼の詩に曲をつけています。

 

 初演とあって名フィルも緊張していたのかソロの金管や木簡の出がやや揃わないというミスがありましたがカンブルランの指揮はそういうことにも動ぜず、的確なタクト処理できっちりと曲をまとめていました。カウンターテナーのソロは藤木大地氏で、2017年の4月にウィーン国立歌劇場にデビューして話題になりました。

 

 ただ、個人的にはこの作品、カウンターテナーよりもソプラノの独唱の方が作品の本質にあっているのではという感想を持ちました。

 

 後半はストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」の1947年版した。この1947年版はバレエの舞台構成と同じように「ペトルーシュカの亡霊」で静かに終わるものと、オーケストラ単独での演奏ように華やかに終わるものが選択できるようになっているのですが、今回の演奏は静かに終わるものが選択されていました。ペトルーシュカはストラヴィンスキーの3大バレエ作品の中ではどちらかというと地味で、ハルサイや火の鳥に比べると一番演奏機会が少ないのではないでしょうか。それというのもピアノパートが重要で、ストラヴィンスキー自身「ペトルーシュカからの3楽章」というピアノ作品書いているぐらい技巧的に難しい部分を含んでいます。この演奏でもピアノは指揮者の前にデンと据えられ、全体のオーケストラサウンドを支えていました。

 

 ペトルーシュカの1911年版のオリジナルは4管編成ですが、1947年版は3管編成となっています。ただ、オーケストレーションは1947年版の方が円熟した響きになっています。

 

 カンブルランは巧みなバトン捌きで、歯切れのいい音楽を作り、オーケストラもそれに確実に応えていきます。名フィルのソロも上手くなったものです。パーカッションも大活躍で、ティンパニをはじめ、ハープ、ピアノ、チェレスタ、バスドラム、シンバル、スネアドラム、タンブリン、トライアングル、木琴、タムタムといった楽器が大活躍でした。近・現代音楽はこういう楽器が大活躍するので好きです。カンブルランの指揮はネルソン図のような明快なものでした。

 

 

 

 

終演後、パーカッションメンバーを讃えるカンブルラン

 
 プロオーケストラの実力をまざまざと見せつけられたコンサートでした。