もっとミステリなふたり
誰が疑問符を付けたか?
著者/太田忠司
出版/幻冬舎 幻冬舎文庫
女優以上に美人かつ一瞥で人を竦ませる京堂景子警部補は難事件を数々解決。だが実際は、彼女の夫でイラストレーターの新太郎の名推理によるものだった―。職務中は「鉄の女」、夫の前ではデレデレの可愛い妻と、それを世界でただ一人知る料理上手でクールな夫が8つの怪事件をあざやかに解く傑作ユーモア・ミステリ。---データベース---
この作品、最初は「誰が疑問符を付けたか?」というタイトルで発売されました。つまりは、文庫本から入った人はこれが「ミステリなふたり」の続編とは分からなかったのではないでしょうか。で、文庫化に当たって「もっとミステリなふたり」と改題されています。これらの作品も「ポンツーン」に2004年から2008年にかけて掲載されたものです。
【収録作品】
・ヌイグルミはなぜ吊るされる?
・捌くのは誰か?
・なぜ庭師に頼まなかったか?
・出勤当時の服装は?
・彼女は誰を殺したか?
・汚い部屋はいかに清掃されたか?
・熊犬はなにを見たか?
・京堂警部補に知らせますか?
この第2作からは、「ヌイグルミはなぜ吊るされる?」と「捌くのは誰か?」がメーテレでテレビドラマ化されています。そして、小説としても短編ながら前作よりはページ数が増えていますので、読み応えという点ではこちらの方が断然アップしています。ここでも、様々なパターンの殺人事件が扱われていますが、ユーモアがありながら推理小説としてはきっちりとどんでん返しが用意されています。新太郎の安楽椅子探偵としての名推理っぷりも板についてきたようで、最終話の「京堂警部補に知らせますか?」では景子の部下の生田刑事と間宮警部補しか登場しないにもかかわらず、現場に立ち会ったということで名推理を働かせ、無事事件を解決させています。
さて、「捌くのは誰か?」ではちょっと色っぽい「女体盛り」が登場します。何と被害者が下着の状態で腹の上に刺身を盛られているのです。この話、ドラマでは原作にはない景子の体の上にも刺身が盛られるという演出がなされていました。それが下記の映像です。
とまあ、こういうドラマになっていました。
なを、文庫本では解説を西澤保彦氏が書いていますが、そのストーリー展開において、「出勤当時の服装は?」の展開を褒めています。冒頭は、全く本筋とは関係のない男が殺意を持って家を飛び出していくところから始まります。しかし、この男が殺されている屍体を発見します。それも女装した中年の男が殺人死体で発見されるのですから、その手の変質者が犯人ではと思わせますが、話は全く別の方向に展開していくからです。見事に読者の期待を裏切るこの手法、なかなか捻りが効いています。
ただ、個人的にはこのストーリーの最後で、殺された香流川の護岸を景子と京太郎が歩いているからです。この夫婦は西区に住んでいますし、普段は出歩かない名東区のこの辺りをふたりで歩くというのは考えられません。設定上、最初に登場した男を最後にまた登場させるためのお膳立てに、無理やり登場させたのでしょうが、地元の人間からすればちょっと無理がありますなぁ。