マゼールのサンサーンス | geezenstacの森

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マゼールのサンサーンス


曲目/サン=サーンス 
交響曲 No.3 ハ短調 Op.78 「オルガン付き」*
1.1a. Adagio 9:52
2.1b. Poco adagio 11:11
3.2a. Allegro moderato 7:29
4.2b. Maestoso 8:20
5.交響詩 「ファエトン」 Op.39(1873) 8:23
6.交響詩「死の舞踏」 Op.40 (1874) 6:28
7.歌劇「サムソンとデリラ」 Op.47 (1874) Act3 - バッカナール 7:16

 

オルガン/アンソニー・ニューマン*
指揮/ロリン・マゼール
演奏/ピッツバーグ交響楽団

 

E:チャールズ・ハルサット
AE:ロバート・F・ウォルフ
録音/1993/05/18-22 ハインツ・ホール ピッツバーグ
   1996/07/20 聖イグナチオ・ロハラ教会、ニュー・ヨーク

 

SONY 88697932382-14

 

   

 最近集中してマゼールを聴いています。マゼールは録音歴が長いので、てっきり以前にもこの曲を録音していただろうと思っていたのですが、意外にも初録音なんですなぁ。小曲では交響詩「死の舞踏」は同じCBSににフランス国立管弦楽団と録音しています。そこでは何とヴァイオリン独奏をマゼール自身が務めているという極めつけの演奏になっています。しかし、ここではおとなしくコンサートマスターにその席を譲っています。何でも、ウィーンフィルと決別し、ニューイヤーコンサートに登場するのを止めてしまってからはまったくヴァイオリンを練習しなかったそうな。これではヴァイオリンソロはちょっと無理ですわな。

 

 さて、他の「ファエトン」、歌劇《サムソンとデリラ》の「バッカナール」はこれも唯一の録音です。同コンビのレスピーギ/ローマ三部作などと同様、ワンポイント・マイクで収録し、20ビット・レコーダーにダイレクトに録音したものです。小生の所有するCDは30枚組のボックスセットに収録されているものですが、詳しいデータは乗っていません。日本盤は1997年に発売されていますが、その時のデータで、録音エンジニアなどがようやく確認出来ますが、不思議なことにプロデューサーは明記されていません。実質的にチャールズ・ハルサットがプロデューサーを兼ねていたのでしょう。なにしろソニーとしてはワンポイントマイクを仕様という録音方法をとっているので普段とは違うマイクセッティングになっています。どちら化というとテラークに近いサウンドです。ただし、低域の厚みはそれほどでもありません。こうして見ると何かテラークの音は低域をブーストしているようにも思われます。

 

 ところで、データを見ると曲としての収録は1996年ですが、別録りのオルガンはその3年後という実に不思議な仕上がりになっています。邪推すればマゼールの解釈に当初予定していたオルガン奏者は辞退してしまい同調するオルガニストがいなくて、ようやく見つけたのがアンソニー・ニューマンということだったのでしょうか。ニューマンのデビューも当時のCBSからでしたが、奇才な鍵盤楽器奏者として華々しくチェンバロやオルガン作品、ブランデンブルク協奏曲などをリリースしていました。そう考えると、なるほどぴったりの組み合わせなのかもしれないと思ってしまいます。そんなことで、マゼールの演奏に、まさにジャストミートのオルガンを弾いています。オーケストラとオルガンのバランスは申し分ありません。上には記載していませんが、テクニカルスーパーバイザーとして、エド・ヴィスノヴスケ、ビリー・ロスチャイルドの名前がクレジットされています。

 

 調べると、マゼールはピッツバーグとは少なからず因縁があります。彼が学生時代を過ごしたのはピッツバーグ大学でしたし、その当時ピッツバーグ響の団員として活躍もしていたのです。まあ、ベルリンフィルと決別して傷心の日々を送っていた時ピッツバーグ響が彼を支えていたという所でしょうか。このピッツバーク響の音楽監督時代はこのサンサーンスと、レスピーギ三部作、そしてシベリウス交響曲全集ぐらいしか残していませんが、前任のプレヴィンはあまり録音を残していませんから、ピッツバーグ響の再浮上の下地を作ったといっても過言ではないでしょう。何しろ後任はヤンソンスで勢いがつきましたからね。

 

 

 さて、このサンサーンス。シベリウスでも感じましたが全体にゆっくりとしたアプローチです。最近のサンサーンスの交響曲第3番はゆっくり演奏するものが主流を占めてるようです。小生なんかミュンシュの指揮で慣れ親しんでいるので第1楽章の冒頭のスローテンポはあまり好きではありません。マゼールは曲により早いものと遅いものが極端に別れます。ラヴェルのボレロなんか超特急ですし、そういう意味ではやはり奇才なんでしょう。でも、調べてみるとこの第1楽章の冒頭はアダージョで♪=76の指定なんですな。真厚、順当なアプローチというべきかもしれません。

 


 

 そのオーソドックスなアプローチを採る第1楽章前半部に対し、後半部ではかなり細かい強弱のニュアンスが付けられていて、弦楽セクションの合奏力が大きなウェイトを占めています。そして、金管に関してはワンポイントの録音にしては強烈な響きをかき立てます。ただ、全体としてはバランスが取れていて、シカゴ響みたいに金管バリバリの咆哮ではありません。そこら辺はマゼールのコントロールが利いているのでしょう。サンサーンスの「オルガン交響曲」は第2楽章の方が人気があるのでしょうが、小生は最近第1楽章の後半に現われるオルガンの響きの方が好みです。弦のピチカートに乗って地の底から湧くようなオルガンの響きが重なって来ます。これが素晴らしい録音で聴くと本当にスピーカーが震えるのが分ります。このマゼールの録音はそこまではいきません。これが、最もよく聴き取れるのが手持ちではオーマンディ/フィラデルフィアのCBSの旧録音です。