モーツァルト:
歌劇「ドン・ジョヴァンニ」~序曲、「ドンナ・アンナのアリア」
交響曲第29番イ長調K.201
アリア「心配しなくともいいのです、愛する人よ」K.505
交響曲第35番ニ長調「ハフナー」K.385
【特典映像】インタビュー(字幕:英独仏伊 原語:伊)
クラウディオ・アバド(指揮) ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
シェリル・ステューダー(ソプラノ)ブルーノ・カニーノ(ピアノ)
収録:1991年5月1日スメタナ・ホール、プラハ(ライヴ)
(映像特典)
・練習風景/ベルリン・フィルの歴史/モーツァルトとプラハ
収録時間:97分
画面:カラー、4:3
音声:リニアPCMステレオ
字幕:英語、韓国語
NTSC
Region 2
アバドを音楽監督に迎えた1991年から、ベルリン・フィルの創立記念日である5月1日を記念して、ヨーロッパ各地の歴史的な建築物やホールで開かれているヨーロッパコンサートの記念すべき第1回目の映像がです。この年はモーツァルト没後200年を記念して、プラハのスメタナ・ホールで行われ、オール・モーツァルト・プログラム、そして2014年1月惜しくも亡くなった巨匠クライディオ・アバドが指揮を振りました。
冒頭を飾るのは歌劇「ドン・ジョヴァンニ」~序曲です。この「ドン・ジョヴァンニ」は、1787年にモーツァルト自身がプラハで初演し、聴衆の喝采を浴びた作品です。そのため、プラハの聴衆にとってゆかりの深い作品と言えるものです。個人的にも、つい最近オペラ自体を見たばかりですので感慨を持って聞きました。編成は小さいのですが、ベルリンフィルを降っての演奏は重心の低いもので、「ドン・ジョヴァンニ」にはふさわしい演奏であるように思われました。ところが実際のCDではヨーロッパ室内管弦楽団を演奏しての演奏で、やや軽さが目立ってしまったのが残念な気がしていましたので、どうしてベルリンフィルで録音しなかったのかと思ってしまいました。
このころアバドはモーツァルトイヤーということもあって盛んにモーツァルトを取り上げていましたが、時代的にはピリオド楽器による演奏が台頭してきた時期だったので迷っていたのではないでしょうか。
アリアのソロには、アメリカ出身の名ソプラノ歌手チェリル・ステューダーが登場しています。「ドン・ジョヴァンニ」からの「ドンナ・アンナのアリア」もいい選曲です。ピアノ付きのコンサート・アリア〈あなたを私が忘れるですって〉における美声は、特に聴きどころと言えるでしょう。またイタリアのピアニスト、ブルーノ・カニーノも、息の合った共演ぶりを見せていて、こちらの方が聴き映えがします。
一方、交響曲第29番は、モーツァルトが10代の時に作曲した若書きの作品です。まあ、25番と双璧をなす10代の代表作でしょう。優雅で完成度の高いメロディには、モーツァルトの天才ぶりが早くも顔を覗かせています。弦五部とオーボエ、ホルンが加わった編成ですが、ベルリンフィルの演奏ならこれにファゴットが加わった25番の方が良かったのではと思われなくもあります。ただアバドは晩年にもこの交響曲第29番を録音していますから、こちらの方がお気に入りだったのでしょう。
最後に演奏されたのはやはり、ゆかりのある交響曲第36番「プラハ」でした。粋な選曲といってもいいでしょう。ベルリン・フィルの豊かな響きを生かした、高度な機能性を十分に発揮した魅力的なモーツァルトに仕上がっています。ただ、欲を言えばロンドン響と録音した初期の演奏が良かっただけに、今聴くとオーケストラに忖度しているような部分も感じられます。
このDVD最後に特典映像が含まれていて、そこで今回のヨーロッパコンサートについての心意気が語られているのでしょうが、如何せん原語はドイツ語、字幕は韓国語とさっぱり理解出来ません。肝心のアバドも聞き役に回っている部分が多く、まだオーケストラと馴染んでいないのかと思われてしまう映像でした。