ジーザス・クライスト・スーパースター | geezenstacの森

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ジーザス・クライスト・スーパースター
 
曲目
ディスク: 1
1.序曲
2.彼らの心は天国に
3.何が起こるのですか
4.不思議な出来事
5.はっきりさせよう
6.今宵安らかに
7.イエスは死ぬべし
8.ホザンナ
9.熱心党シモン
10.哀れなエルサレム
11.ピラトの夢
12.イエスの宮
13.私はイエスがわからない
14.裏切/血の報酬
 
ディスク: 2
1.最後の晩餐
2.ゲッセマネの園
3.逮捕
4.ペテロの否認
5.ピラトとキリスト
6.ヘロデ王の歌
7.始めからもう一度
8.ユダの自殺
9.ピラトの裁判
10.スーパースター
11.磔
12.ヨハネ伝19章41節
 
作詞:ティム・ライス
作曲:アンドリュー・ロイド・ウェバー
指揮:アンドレ・プレヴィン
演奏:ロンドン交響楽団
 
録音:1973 EMI アビーロード・スタジオ,ロンドン
 
キャスト(役名)
Ted Neeley テッド・ニーリー (Jesus_Christ)
Carl Anderson カール・アンダーソン (Judas_Iscariot)
Yvonne Elliman イボンヌ・エリマン (Mary_Magdalene)
Barry Dennen バリー・デネン (Rontius_Pilate)
Bob Bingham  (Caiaphas)
Larry T. Marshall  (Simon_Zealotes)
Josh Mostel ジョシュ・モステル (King_Herod)
Kurt Yaghjian カート・ヤハジアン (Annas)
Philip Toubus フィリップ・トウバス (Peter)
 
ユニヴァーサル UICY-75733 (原盤MCA)
 
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 多分、この「ジーザス・クライスト・スーパースター」は何度もこのブログで取り上げていると思いますが、DVDが発売されているとは気が付きませんでした。2014年の3月に発売されていました。このサントラ盤も同年の6月に限定盤で2枚組1500円で発売されています。つまりは映画も、音楽も同一価格で販売されていたんですなぁ。ずっとDVDは発売されなかったので何か劇団四季ともめていたんではと思っていたほどです。
 
 その「ジーザス・クライスト・スーパースター」は今年6月に名古屋の四季劇場で「ノートルダムの鐘」に続いて6月12日(水)~7月7日(日)まで上演されることが決まっています。劇団四季専用劇場での公演としては名古屋では約10年ぶりの再演となります。前回公演は2009年4月~5月で、ジャポネスク・バージョンでしたが、今回はイスラエルバージョンでの上演となります。この日本版演出は浅利慶太氏が手がけ、荒廃したエルサレムを表現した砂地セットの「エルサレム・バージョン」と、様式美に和アレンジされた「ジャポネスク・バージョン」の2バージョン存在し、いわゆるオリジナル・プロダクションの”レプリカ公演”ではなく、演出は日本版独自のものとなっていました。
 
 セリフが一切ないオペラ形式のミュージカルです。もともとはロック・オペラとして1969年に作曲されたのですが、ロイド・ウェバーは若干23歳のときの作品というから驚きです。主だった役には、のきなみ2オクターブを超える音域が要求されています。最初のレコーディングではロック・グループのディープ・パープルのボーカリスト、イアン・ギランやミュージカル「ヘアー」のロンドン公演にも参加していたマレイ・ヘッドとともに映画版でもマリア役のイボンヌ・エリマンなどが参加しています。ここから火が付きプロードウェイの舞台に掛かり1972年のロンドン公演を経てついにノーマン・ジェイソンによって映画化されたのがこの作品です。
 
 この作品を初めて観たのは1973年11月23日の試写会です。その時の感想をノートにこのように記しています。
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「ロックオペラ、このミュージカルをより現代的にした手法は見事に成功している。序曲からヨハネ伝第19章41節に至る26曲が湧き出るように画面から流れ出て聴くものを飽きさせない。画面もストップモーションが効果的に使われ映画をもり立てている。太宰治の短編小説に「駆け込み訴え」という作品がある。これはユダの裏切りをテーマにしたものであるが実にこの映画のユダの心理を的確に描いているが、これを読んでこの映画を見ればよりこの作品を興味深く観ることができるだろう。」
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 そして、一般公開される直前の12月7日にもう一度プレミア試写会で観ています。今は無くなった名古屋駅前の「シネラマ名古屋」の大画面で今野雄二氏の司会でイエス役のテッド・ニーリーとマリア役のイボンヌ・エリマンの二人が舞台挨拶をしました。名古屋でこういう試写会が開催されるのは当時としてはほとんど無かったので異常に興奮したのを覚えています。そして、なんと1977年卒業記念のヨーロッパ旅行の折に本場ロンドンのピカデリー劇場で生の「ジーザス・クライスト・スーパースター」を観てしまいました。こんな思い入れのある作品なのでレコード、レーザーディスク、CD、DVDと一通りのメディアで全部そろえています。
 
 クラシック音楽の家系に育った作曲者らしく、アンドリュー・ロイド・ウェバーはロック・ミュージックの体裁をとっていながら、非常にシンフォニックな部分がありついにこの映画版でその真価が発揮されています。序曲はアンドレ・プレヴィン指揮するロンドン交響楽団が壮大なサウンドを展開していますが、音の抜けが今ひとつなのが残念です。セリフの部分が無く壮大な音楽がまさにオペラの手法で描かれているところは、この作品の聴きどころです。ただ、映画版は舞台版の原作とはかけ離れたものとなってしまったということで、ロイド・ウェバーを憤慨落胆させてしまったということです。
 サウンド・トラック盤ですから本来は映像とともに鑑賞するのが本筋なんでしょうが、「イエスよ、私たちのために死んで」というコーラスをバックにイエスのアップがストップモーションで捉えられるシーンは象徴的に思い出されます。この作品、ラストでバスでやってきた若者たちが帰る時は一人イエスを置き去りにしていきます。そして、イエスは太陽をバックに沈みかけた暗闇の中を孤独なままに歩いていくという演出は意味深いものがありました。
 1970年代という時代背景を考えると、劇中劇とはいえイエスが人間に愛想を尽かせているのではというメッセージを当時感じたものです。無心論者である小生はそういうところに監督の鋭いメッセージ性を感じ、この映画が撮影されたイスラエルの当時の状況を考えると人間の英知と創意工夫でこれからの世界を築いていくべきなのだなぁと感じたものです。
 
 唯一の欠点はこのサントラのサウンドはオーケストラの音のバランスが適切でなく、尚かつ音がやや貧弱な点が挙げられます。70年代ならアナログ録音は完成期に近いはずですが、ロック音楽とともに収録されているサウンドはイマイチです。映画の中で聴いているとそうとも思えないのですが、純粋にサウンドトラックとして聴くとどうしてもその部分が目立ってしまいます。
 「私はイエスが分からない」、「スーパースター」は当時ヒットしたし、「ホザンナ」、「熱心党シモン」など佳曲がちりばめられていてサントラだけ聴いてもすばらしい作品には違いありません。
 
 世の中に三大ミュージカルなるものがあり一般的には、「ウェスト・サイド・ストーリー」、「サウンド・オブ・ミュージック」、「マイ・フゥア・レディ」らしいのですが、小生としては「ジーザス・クライスト・スーパースター」、「ウェスト・サイド・ストーリー」、「サウンド・オブ・ミュージック」の方がふさわしいと思うのですがいかがなものでしょうか。