ビ ブ リ オ 漫 画 文 庫
編集 山田 英生
発行 ちくま書房 ちくま文庫

古書店、図書館など、本をテーマにした傑作漫画集。主な収録作家―水木しげる、辰巳ヨシヒロ、つげ義春、楳図かずお、諸星大二郎ら。---データベース---
ちくま文庫は一風変わった文庫です。町の書店では扱っていないところが多いのが難点ですが、ツボにはまればめちゃ面白いです。これまでこのブログでも以下のものを取り上げています。
本をテーマにした、ちくま文庫オリジナルのマンガ・アンソロジーです。本をテーマにしたアンソロジーは、かなりの数出版されていますが、マンガのアンソロジーは珍しいのではないでしょうか?以下の作品がテーマごとに分類されて収録されています。
Ⅰ 古書吟遊
古本道主人 山川直人
古本屋古本堂 松本零士
Ⅱ 古本奇譚
古道具屋の怪 水木しげる
古本海岸 おんちみどり
古本地獄屋敷 「栞と紙魚子」より 諸星大二郎
古書月の屋買取行 豊田徹也
Ⅲ 本をめぐる奇人たち
本 楳図かずお
粗骨の果 湊谷夢吉
古本詠歌 つげ忠男
Ⅳ 本の掌篇
古本屋台 Q.B.B.(作・久住昌之、画・久住卓也)
文豪春秋 いしいひさいち
Ⅴ 貸本屋とその周辺
キンタロウ文庫 「三丁目の夕日」より 西岸良平
中之島の図書館で うらたじゅん
古本・とんま堂主人 辰巳ヨシヒロ
Ⅴ 恋と古本
古本と少女 つげ義春
舞子 南日れん
夢 近藤ようこ
コートと青空 山川直人
※
ある道化師の一日 永島慎二
こういう漫画もあったんだなぁ、というのが最初の感想です。まあ、ガロ時代を知っている世代なら懐かしいと思う人も多いのではないでしょうか。ここではいわゆるマンガ誌に掲載されたものだけでなく、多様な雑誌に単発で収録されていたようなものまで集められています。さらに時代も、1960年代に発表された作品も収録されています。
これらの作品の中では、諸星大二郎氏の「古本地獄屋敷」が秀逸で、以前ブログでも取り上げている「金魚屋古書店」のホラー版という位置付けで楽しめました。古本の迷宮というアイデアは古書ツー好きにはたまらない魅力です。
収録された顔ぶれを見ると、松本零士、水木しげる、楳図かずお、つげ義春、西岸良平のような巨匠、大家から、あまり知られていない、うらたじゅん、南日れん、湊谷夢吉まで多彩な作品が集められています。
とくに湊谷夢吉氏の作品は初見ですが、これは魅了されました。時代は昭和初めの京都が舞台ですが、解説によると野坂昭如の「好色の塊」のモデルともなった出版人・梅原北明を思わせる異色のエロ出版興亡史となっています。同人誌「銀河画報」に発表した作品らしいので一般には知られていないのもうなづけます。しかし、38歳の若さで亡くなっているそうです。
ただ、この本の視点が男性漫画家だけに焦点が当てられているというのは、ちよっとマイナスポイントでしょうか。女性マンガ誌、漫画家の作品も取り上げられれば文庫としての深みも増すのではと、思うのは小生だけでしょうかねぇ。是非とも続刊でそこらへんに焦点を当てた続編を出してもらいたいものです。