プレヴィンの大人のための管弦楽入門
曲目
1.プロコフィエフ/「ピーターと狼」
2.ブリテン/「青少年のための管弦楽入門」Op.34
3.ブリテン/6つの田園舞曲
指揮と語り/アンドレ・プレヴィン
演奏/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
録音 1985/11/20-21 ワトフォード・タウン・ホール、ロンドン
P:ジエームス・マリンソン
E:ジャック・レナー
TELARC 25CD-8003

「ピーターと狼」「青少年のための管弦楽入門」はプレヴィンにとってはともに実に2回目の録音となるものです。以前はロンドン交響楽団とナレーションを当時の奥さんであったミィア・ファローとともに録音していました(W WPCS23273)。
まあ、こちらはおまけにブリテンの歌劇「グロリアーナ」より6つの田園曲が収録されている分お得なんでしょうかね。そして、録音はテラークだけあって聴きごたえがあります。ちなみに当方の購入したディスクのジャケットカバーには「斉藤宏嗣先生STEREO誌推薦最優秀録音CD」のステッカーが貼ってあります。
「ピーターと狼」はブレヴィンの解説付きです。わかりやすい語り口で物語が語られますが所詮英語ですので100%の楽しみ方は出来ないのが残念です。まあ、演奏はそれなりに面白いのですが細切れですから音楽を楽しむには向いていないですね。語り入りなら徹底的に楽しむという意味で、明石家さんまがナレーションを務めていた演奏がお気に入りです。こてこての関西弁ですがこういうピーターと狼もありなのかと変に納得してしまいます。

プリテンの「青少年のための管弦楽入門」はナレーション入りの演奏とそうでない純粋の演奏盤が入り乱れていますが、プレヴィン盤は後者のナレーション無し盤です。ロンドン交響楽団とはナレーション入りで演奏していました。もともと、ナレーション無しの時は「パーセルの主題による変奏曲とフーガ」と呼ばれていましたが、最近はあまり区別していないようです。この曲は、当初から名盤の作曲者の自作自演盤で聴いていましたからついついその演奏と比較してしまいますが、きびきびとしたブリテンの演奏とはひと味違うゆとりのようなものを感じます。

オーケストラ全体による主題の演奏は恰幅の良さを感じますし。弦の響きが非常に柔らかく録られているので非常に聴きやすい演奏になっています。オーケストラの各奏者も腕達者で安心して聴いていられます。ロンドン交響楽団とのディスクはどちらかと言うと教育者としての側面を前面に出した演奏で、今回は同じ作曲家としての視点からこの曲を捉えているように感じます。ですから今回はあえてナレーションを入れなかったのではないでしょうか。ですから決してお子様好みの演奏にはなっていなくて純粋音楽としての鑑賞に耐えられる仕上がりです。余談ですがナレーション入りの演奏では若きロリン・マゼールがフランス国立放送管弦楽団と録音し小山田宗徳がナレーションを担当した演奏が一番好きです。変に迎合した安っぽいナレーションじゃなく演奏共々ぴしっと筋が通っていて爽快です。
このCDでの聴き物はブリテンの歌劇「グロリアーナ」より6つの田園曲でしょう。歌劇自体の国内盤が存在しない中その中の6曲をピックアップしたこの演奏は、プリテンの作品を楽しむ上でも貴重な演奏です。1953年のエリザベス二世の戴冠式を記念して作曲されたという歌劇です。曲は行進曲、クーラント、ハヴァーヌ、モリス・ダンス、ガリアルド、ラヴォルタからなりこちらもバロック調の響きを現代的にアレンジした楽しい作品になっています。この曲一つとって見てもお子様迎合のアルバムにはなっていないことが分かると思います。