海野義雄のメンチャイ | geezenstacの森

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海野義雄のメンチャイ

曲目/
チャイコフスキー
1.ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35
メンデルスゾーン
2.ヴァイオリン協奏曲ホ短調作品64

ヴァイオリン/海野義雄
指揮/ハンス・シュミット=イッセルシュテット
演奏/北ドイツ放送交響楽団
P:ウィルヘルム・ヴィル
D:HH.ブライトクロイツ
E:M.アベック

録音/1967/12/13,14 北ドイツ放送第10スタジオ、ハンブルク

DGG MGW5124

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 これも、「全日本レコード・CD サマー・カーニバル2018 名古屋」で手に入れた一枚です。懐かしいレコードです。国内盤の再発ものですが、帯が無いというだけで激安で購入する事が出来ました。小生は帯に拘らないのでこういう時は得します。

 オリジナルは1968年に発売されました。記憶する限り、日本人ヴァイオリニストで初めてメジャーレーベルのグラモフォンからメンチャイの協奏曲を録音した日本人ヴァイオリニストです。この1970年代前後は、この海野義雄と江藤俊哉が双璧のヴァイオリニストでした。江藤はRCAから1971年にメンチャイを発売しましたが、こちらは指揮者が今ではすっかり忘れられているエドワード・ダウンズということで、あまり注目はしませんでした。その点こちらは、ウィーンフィルとのベートーヴェン交響曲全集やバックハウスとのピアノ協奏曲での実績があるハンス・シュミット=イッセルシュテットです。そして、オーケストラも当時の手兵であった北ドイツ放送交響楽団という事で注目したものです。日本のヴァイオリニストがドイツの一流のオーケストラと、メジャー・レーベルに録音することが出来たということで、大変な快挙といわれたものだ。また、個人的にも海野義雄は名フィルの演奏会に登場し、生でその演奏を耳にしたヴァイオリニストでもあります。

 しかし、その海野義雄は、1981年に受託収賄罪で逮捕され、東京藝術大学の教授職を解かれたことで、世の人たちに好ましからざる印象を与えてしまいました。俗にいう「芸大事件」です。最終的には贈収賄の罪で有罪判決を受けています。しかし、日本を代表するヴァイオリニスト、少なくともその一人に数えられていたのは確かなことです。海外に居を移し日本での第一線の場からは距離を置いてしまいます。帰国後、海野は東京音楽大学の学長まで務めて日本のクラシック音楽界の重鎮としての存在感を世に示していますが、このドイツ・グラモフォンへの録音は未だにCD化されないのは、上記のキャリア上の汚点が関係しているのでしょうか。

 しかし、タワレコからはこの事件の前年にソニーに録音したメンチャイがCDで発売されています。こちらはバックがスヴェトラーノフ/ロンドン交響楽団によるものです。1981年の4月にリリースされていますが、その年の12月に逮捕されていますから全く記憶に残っていない録音です。

 話が横にそれていますがこのグラモフォン盤、実に堂々とした鳴りっぷりで、あわせ上手のイッセルシュテットを向こうに回して、しっかりと主役を演じています。この録音当時はまだ30代の若さのはずで、当時の立場から言えば完全に胸を借りる状態だったはずですが、そんな気配はなく、テンポを前のめりにしてオーケストラを逆に引っ張っていくようなわが道を行く演奏です。イッセルシュテットは手兵の北ドイツ放送交響楽団を渋めの弦楽器主体のサウンドで支えています。

 この録音は上記の事件が影響しているのか、YouTubeにもアップされていません。復活するならこちらの演奏をCD化して欲しいですね。