雪晴れ―切り絵図屋清七 5 | geezenstacの森

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雪晴れ―切り絵図屋清七 5

著者/藤原緋沙子
発行/文芸春秋 文春文庫

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 絵双紙本屋「紀の字屋」が軌道に乗り、町人として充実した日々を過ごしていた清七。
勘定組頭の父・長谷半左衛門が勘定奉行・谷田部貞勝の不正を暴くため、秘密裏に旅に出ていたが、2カ月が過ぎても戻らず、その身を案じている。そんなあるとき、父が半月前に飛騨で何者かに襲われ、消息を断ったという報せが入る――。父の無事を確かめられるのは自分しかいない。清七の行動力が冴えわたる、待望の第5弾!---データベース---

 このシリーズは第5巻ですが、切り絵図がテーマでは話が続かなくなったのでしょうか、ここでは冒頭こそ次の切り絵図の算段の場面が描かれますが、その後は勘定組頭の父・長谷半左衛門の捜索に話が移ります。清七は絵双紙本屋「紀の字屋」の店主ですが、もともとは旗本の次男坊、それも妾の子ということで屋敷を出ている身分です。そこに、飛騨に旅立った父が行方不明で、生死も分からないという事で、勘定吟味役佐治長門守の屋敷へ向かいます。

 跡継ぎの長男を差し置いての探索の旅は飛騨の勝蔵、坂巻真次郎とともに出立します。これで、完全に紀の字屋の話とはかかわりがなくなるのですが、清七に譲った元の店主の藤兵衛は以前は徒目付頭だった男です。

 展開としては途中で敵の無頼に教われるのですが、そこに謎の薬売が登場して三人を助けたり、木曽の川下りでも仲間を助けてくれた住人たちが登場して話は全て良い方向に進んでいきます。飛騨は下呂から伊豆にまで話が飛び、後半は伊豆での活躍になりますが、ちょっとご都合過ぎて、途中で襲っているのですから殺されていてもおかしくないのに、長谷半左衛門とその家臣が勘定奉行・谷田部貞勝の妾の別荘に捉えられているのかが理解出来ません。

 まあ、最終的には清七たちが無事救い出して、勘定奉行の悪行を暴くからめでたしめでたしなのですが、切り絵図の新着を楽しみにしているこちらとしては、やや消化不良の作品としか思えません。残念です。こんな流れでは次巻がシリーズ最終になってもおかしくありません。