ワルターのリンツ交響曲の誕生 | geezenstacの森

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ワルターのリンツ交響曲の誕生
 
曲目/モーツァルト交響曲第36番
レコード1
1.第1楽章/リハーサル
2.第2楽章/リハーサル
レコード2
3.第3楽章/リハーサル
4.第4楽章/リハーサル
5.第1楽章Adagio - Allegro spiritoso ハ長調 3/4 ソナタ形式
6.第2楽章Poco Adagio ヘ長調 6/8 ソナタ形式
7.第3楽章Menuetto ハ長調 3/4 三部形式
8.第4楽章Presto ハ長調 4/4 ソナタ形式
 
指揮/ブルーノ・ワルター
演奏コロムビア交響楽団
 
録音/1955/4/26.28
P:ジョン・マックルーア
E:デヴィッド・オッペンハイム
 
英DIAMOND CUT  DC40182
 
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 先日の「全日本レコード・CD サマー・カーニバル2018 名古屋」でゲットしたレコードです。こういうレーベルがあることも、こんなレコードが発売されていたことも知りませんでした。発売は1985年ということで、マスターはデジタル・リマスターしたものが使われています。そして、そのリマスターはプロデューサーのジョン・マックルーア自らが行なったことが明記されています。
 
 いま、この時代にこういったリマスター版がLPで発売されるならかなり話題になるのではないでしょうか。そんなことで、この2枚組レコードをゲットした次第です。こういう掘り出し物があるのでレコードのトラ箱漁りは辞められません。
 
 このレコードはイギリス盤ですが、プレスはオランダで行なわれています。LP末期はデッカもオランダプレスがありましたからフィリップスが日本のソニーのような役割を果たしていたのでしょう。さすがヨーロッパ最大の家電メーカーです。
 
 このワルターの録音は日本でも何度かレコードで再発されている有名なリハーサル録音のようですが、ワルター自身にそんなに思い入れがなかったせいかもしれませんが、小生はCDで入手するまで全く知りませんでした。CDは韓国CBSが発売したワルター全集の中に含まれていました。
 
 このレコードに手が止まったのは最近オーケストラの生リハーサルに出掛けて、その音楽作り、指揮者の指示で音楽がみるみる変化していくのを目の当たりに見聴きしているからです。そんなことで昔からモーツァルトの音楽作りには定評があるので、改めてワルターの音楽作りに接してみようと思った次第です。もちろんCDでも聴いてはいたのですが、どうもCDだと流し聴きになってしまいじっくりと聴いた記憶がありません。その点レコードだと、1楽章づつ盤面の入替えをしなくてはならないので、いきおい30分弱を集中して聴くことになります。なにしろリハーサルは同じヶ所を何度も繰り返しやり直すので同じフレーズが耳に残りますし、その変化の様が逐一聴き取れます。
 
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 このリハーサルが録音されたのは1955年。ワルターは1876年の生まれですから、このときはすでに79歳だったはずです。でも、とてもそんな年齢は感じさせない、きびきびとしたリハーサルで、オーケストラを引っ張っていきます。ワルターとコロムビア響のステレオ録音は1957年にスタートしていますから、この時期は本当に臨時編成のオーケストラのはずです。ですから、ワルターは事細かく指示を出しています。最近の生での音楽作りからの体験ではそんなに難しい言葉は使っていません。

 

 

 指示としては開放弦を使わせない細かなボウイングを要求し、テヌートとスタッカートの対照を際立たせていますし、かと思えば、まるでカラヤンのようにフレーズを繋げるレガートを要求したりしています。そして、リハーサルのいたる所、“Sing!”、“Singout!”、“espressivo!”という言葉を多用しています。そして、リハーサルで聴くどの指揮者にも共通するように自らが歌いオーケストラをリードしていきます。
 
そんなリハーサルから何よりもひしひしと伝わってくるのは、ワルターがいかにモーツァルトの音楽を愛しているかということです。レコードで聴く「演奏の誕生」はそういうことに改めて気づかせてくれます。
 
 モーツァルトの交響曲第36番「リンツ」は従来あまり聴き込んだ記憶がありません。しかし、ワルターのこのリハーサルを聴いた後ではこの曲に対するイメージが変わり、頭の中に各楽章のフレーズが駆け巡るようになっていました。小生のように、この曲に親しみを抱いていなかった人は、是非ともこのワルターのリハーサルを聴くことをお勧めします。
 
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 さて、この「DIAMOND CUT」なるレーベルはデジタルリマスタリングしたシリーズで上記のようなクラシックのレコードが発売されています。で、ポピュラーは同じような「BLUE DIAMOND」というレーベルでアルバムが発売されました。イギリスはかなり保守的な国でステレオレコードが発売されても1970年代までモノラルレコードが発売されていたお国柄です。
 
 日本では既にCDがかなり普及し出していた頃ですが、そのつなぎとしてこのようなLPが発売されたのでしょうかね。