邪馬台国の謎と逆転日本列島
著者 飛鳥 昭雄/三神 たける
出版 学研 Mu super mystery books

幻の日本最古のクニ、邪馬台国。唯一の史料「魏志倭人伝」の記述をめぐって、これまで幾多の論争が繰り返されてきた。はたして、間違っているのは方位か距離か、それとも読み方か?最新の構造地質学データは語る。混乱の原因は、ずばり3世紀の日本列島が現在と同じ姿をしていたという暗黙の了解にあった!!なんと、当時の日本列島は九州を北に、90度回転していたのだ。---データベース---
サブタイトルは長くて「邪馬台国の謎と逆転日本列島―最新の構造地質学が「魏志倭人伝」を実証!!女王国の方位と距離は全て正しかった!!」というものです。
邪馬台国についてはこのブログでも時々取り上げていますが、今年になって正月のNHKの「英雄たちの選択 新春2時間スペシャル~日本のあけぼの~」いらい、俄然古代史に興味を持ち関連書籍を読んできましたが、この本はこれらの考古学者の視点とは少し違う視点で邪馬台国というものを捉えているということで斬新でした。この本の内容です。
目次
プロローグ 謎の古文献『宮下文書』が語る富士五湖と伊豆半島形成の謎
第1章 「魏志倭人伝」に記された幻のクニ「邪馬台国」をめぐる所在地論争
第2章 邪馬台国は「魏志倭人伝」の記述通り沖縄地方の海上に存在した!!
第3章 失われた「ムー大陸」が鍵を握る南海から消えた邪馬台国の行方
第4章 年代測定法の崩壊で浮かび上がった古代におけるプレートの高速移動
第5章 神話伝説が語る急激な大陸移動は地球膨張によって引き起こされた!!
第6章 太陽系第12番惑星ヤハウェとアメリカ軍が描く激変地球論の全貌
第7章 最新の構造地質学で明らかになった日本列島形成シナリオの衝撃
第8章 「魏志倭人伝」が語る邪馬台国は逆転日本列島上に存在した!!
エピローグ 邪馬台国の女王「卑弥呼」は大和の巨大古墳「箸墓」に眠る!!
古代日本の女王卑弥呼が統治する邪馬台国といえば教科書にも登場するので誰もが知っているでしょう。しかし、今の時代になってもこの邪馬台国のあった場所がはっきりしないというのも事実です。それは九州説と畿内説ですが、これだという決定的な証拠がありません。もとになる資料が古代中国の資料にその存在が位置関係とともに示されているのに、なぜ分からないのでしょう。
[「魏書」東夷伝倭人の条(以下魏志倭人伝)]に記載してある邪馬台国の方角と距離をそのままたどると九州のはるか南の海に出てしまい、日本国内から遠く離れてしまうというのが本来の解釈です。なにせ大昔の資料で長い歴史の中で、写本を繰り返していくうちに文字を間違ってしまったのではないか、そもそも古代中国人には海外の正確な位置を知るすべなどなかったのではないか、などと記載そのものに誤りがあると考えられているということで、色々な解釈がなされています。
しかし、ここでは筆者は方位と距離は全て正しいという視点に立って改めてこの魏志倭人伝と向き合っています。そこには考古学者、歴史学者の盲点を突いた発想がありました。なんと古代日本列島は南北に逆転していたというのです。文字通り逆転の発想です。
つまり私たちは、見慣れている現在の日本地図は不変だと当たり前のように受け入れています。しかし、最近でも小笠原諸島の無人島、西之島が噴火によって面積が9倍に拡大しています。昭和になっても、北海道では昭和新山が出来ていルトいうことでは地形がいつの時代にも変化しているということに留意しなくてはいけません。
ここで、この本の視点は日本列島は動いているという地質学的な見地からの検証倭加え、大陸や島が高速で動いたという証拠を積み上げていきます。まさに第3章から第7章に懸けては世界的規模の大陸の移動、プレートの移動をとりあげ、古文書に残る「ノアの方舟」やモーゼの海渡り、そして、学会からは抹殺されている「宮下文書」等の事柄を地球の諸現象の痕跡から検証しています。冒頭の「宮下文書」なんかは、最初なんじゃこりゃ、といぶかったものですが、読んでみれば納得の展開です。
いや、むしろ日本という国の成り立ちから考えて、「く」の字に曲がっている構造はフォッサマグナに代表される地殻構造そのものが証拠という導き方には納得させるものがあります。そして、これらの諸変化が卑弥呼の時代に於いても続いていたということで、まさに魏志倭人伝に書かれていた邪馬台国は当時の日本列島の形成過程の位置にあったことを検証しています。

卑弥呼の時代にはまだ瀬戸内海など存在せず、それが水行陸行という形で表現され、ヤマトにたどり着くとは考えもしませんでした。今の常識では考えられないプレートの高速移動という発想がベースではありますが、たどり着く先は奈良の纒向(まきむく)遺跡というのですから、この考え方は奇想天外というものではありません。物理学、天文学、地質学、考古学、そういう全ての要素を勘案することでたどり着く結論ですから信憑性があります。
ひとつの懸念は、この本が学研の発行する雑誌「ムー」のムックということではやや眉唾的なのはしようがないにしても、邪馬台国論争にそれなりの一石を投じるものであることは評価していいと思います。この本では言及まではされていませんが、富士信仰で栄えた国はある意味邪馬台国と対峙していた南の国と言えないこともありません。