木乃伊(みいら)の気-口入屋用心棒35
著者 鈴木英二
出版 双葉書店 双葉文庫

雨上がり、家族とともに和やかなときを過ごしていた湯瀬直之進が突如黒覆面の男に襲われた。さらに同じ日、秀士館の敷地内にある古びた祠のそばから、戦国の世に埋葬されたと思しき木乃伊が発見され、日暮里界隈が騒然となる。野次馬を巻き込んでの騒ぎが一段落したと思われたその矢先、今度は新たな白骨死体が見つかり...。人気書き下ろしシリーズ第三十五弾。---データベース
珍しくこの巻は続き物ではありません。ただ、タイトルと中身はほとんど関係ありません。何しろ木乃伊が400年も前のものですから考古学者ならいざ知らず用心棒がかかわり合うことではありません。ただ、たんに木乃伊の発見された祠が、事件の発端となる程度です。
2つの事件が同時進行するという形で進んでいくのは久しぶりの展開です。そして、その二つの事件が最後に収斂するところはなかなかの筋立てといえるでしょう。もっとも、中盤の展開で同心の富士太郎たちが全くの勘違いで白骨死体の人物は生きているのではと推理する下りで、人相書きまで書きながらポシャってしまうのは無駄な展開と思われます。もっとも、本来はこの件を生かした別のストリー立てがあったのではと思わせる展開がない訳ではないので、途中で構想が変わったのでしょうか。