アダム・フィッシャーのハイドン交響曲第92番「オックスフォード」 | geezenstacの森

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フィッシャーのハイドン交響曲第92番「オックスフォード」
 
曲目/ハイドン
交響曲第91番変ホ長調 
1. Largo, Allegro Assai 8:49
2. Andante 7:03
3. Menuet: Un Poco Allegretto 4:20
4. Finale: Vivace 5:40
交響曲第92番ト長調(オックスフォード) 
1. Adagio, Allegro Spiritoso 7:45
2. Adagio 7:39
3. Menuet: Allegretto 5:57
4. Presto 5:50
交響的協奏曲変ロ長調(バイオリン、チェロ、オーボエ、ファゴット) 
1. Allegro 9:34
2. Andante 5:38
3. Allegro Con Spirito 6:26
 
指揮/アダム・フィッシャー
演奏/オーストリア・ハンガリー・ハイドン管弦楽団
 
ブリリアント   BRL99925
 
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 時々聞きたくなるのがハイドンの交響曲です。106曲もあるので、選択には事欠きませんが、ニックネームの付いた交響曲だけでも29曲もあります。そんな中でこの92番は、「オックスフォード」という名前がついています。ところで、ハイドンはイギリスのザロモンに依頼されて12曲の交響曲を書いていますが、それは交響曲第93番から始まります。つまりは、この曲はオックスフォードというネーミングですが、実際はイギリスとは関係の無い交響曲ということが出来ます。
 
 そういうせいがあるのかもしれませんが、演奏会ではあまり取り上げられない作品では無いでしょうか。小生もその口で、ザロモンセットの93番からはしばしば聴いているのですが、92番は殆どパスしていました。たまたま、この曲を聴くキッカケとなったのはルネ・ヤーコプスの演奏するCDを聴いたからです。以前にこちらで取り上げているのですが、この時は併録の「ジュピター」をメインで取り上げていたので、こちらは軽く流していたのですが、このCDをiPodに入れて何度も聴いているうちに、最近ではすっかりこちらのハイドンの方が気に入ってしまい、もっぱらオックスフォードばかりを聴いています。
 
 さて、そんなオックス・フォードですが、最初にCDで入手したのはなんとこのブリリアントのアダム・フィッシャーのものでした。1987年、指揮者アダム・フィッシャー先導のもと、ウィーン・フィル他、ハンガリーの主要オーケストラのメンバーによってに設立されたオーストリア・ハンガリー・ハイドン管弦楽団の演奏は、全集を目指して録音された最初のデジタル録音ものでした。いや、正確にはホグウッドの録音が先頭を切って進んでいたのですが、遂には途中で中断されたのでした。このアダム・フィッシャーの全集もニンバスが途中で経営破綻したことで全集としての形では発売されませんでした。ところが、突然ブリリアントが全集の形で発売したのには驚きました。
 
 この録音がスタートしたのは1087年です。設立当時は、まだ「鉄のカーテン」が崩壊する以前で、フィッシャーの考えは、"オーストリア、ハンガリー両国の選りすぐりの音楽家を集め、ハイドンの作品を共に演奏することで音楽的に国境を克服しよう"というものであったといいます。
 
 本拠地は当然、アイゼンシュタット、エステルハージー城内のハイドン・ザールにおいていました。ここはハイドンが多くの曲を生み出した場所であり、ハイドンの時代から変わらぬ姿をとどめています。 オーケストラの編成は、ハイドンがエステルハージー城の宮廷音楽監督を務めていた最盛期より少し多い45名から50名からなっています。
 
 やはり、当初は有名曲から録音を始めたようでロンドンセット辺りが最初にリリースされていました。このオックスフォードも1991年には録音されています。
 
 既に古楽器による演奏が台頭していましたが、フィッシャーはあえてビリオド奏法には拘りませんでした。このブリリアントの全集では簡単な英文の解説がついていますが、そのライナーの中で、「なぜモダン楽器でハイドンを演奏するのか」という一節を設けていろいろ述べています。
 
 要するに、楽器がどうのこうのということより、奏者の技量と、ハイドンの伝統を身につけているかどうかが重要だという考えに基づいているということのようです。な西路設立のメンバーがウィーンやブダペストの著名なオーケストラのメンバーによって構成されていることとウィンナホルンやオーボエが使われているといった様式の伝統を尊重しているからであり、もうひとつは、オーストリア・ハンガリー音楽の、ちょっとしたルバートとか、アクセントの付け方とか、言わば時代性の特色の表現に軸足を置いていると述べています。実際このCDに含まれている協奏交響曲のソリストには、ヴァイオリンのライナー・キュッヘルやチェロのウォルフガング・ヘルツァー等が名を連ねています。
 
 まあ、確かに80年代後半の時代ではそういうポジショニングもあったのかもしれません。それがこんな演奏です。

 

 

 ニンバスの録音は、録音会場がエステルハージー城内のハイドン・ザールということもあり、ホールトーンをたっぷり収録しており、どちらかというと残響が多いのが特徴です。
 
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 ハイドンがこのホールを意識して曲を書いていたことは知られていますが、後期の曲はこれはちょっと厳しいでしょうね。フィッシャーの演奏は、それを意識したテンポで開始されています。序奏のこのテンポは第1主題との対比では生きています。ただ、全体の音のバランスは現代の演奏と比べるとややおっとりしたものでゆはり、時代を感じてしまいます。
 
 色々比較で取り上げてみますと、マリナーの演奏がこれに近いものといえるでしょう。

 

 
もう一つ、ヘンゲル・ブロックの演奏です。
 
 
 古楽器による演奏ではアーノンクールに一日の長があります。
 
ノーリントンも忘れてはいけませんね。